HER2ワクチンとは
がん細胞に多くみられる「HER2」という目印を利用し、患者様ご自身の体内で抗体が作られることを目指す治療です。
HER2ワクチンでは、HER2の一部を小さく再現した成分(ペプチド)を使用します。これを注射することで、免疫にHER2の特徴を覚えてもらいます。
目指すのは、患者様ご自身の免疫がHER2に結びつく抗体を作ることです。完成した抗体を薬として投与する治療とは異なり、体内で抗体が作られるように働きかける点が特徴です。
受けられるかどうかは、がんの種類だけでは決まりません。HER2がどの程度みられるか、現在の病状、これまでの治療、体調などを確認し、医師が患者様ごとに判断します。
HER2を目印にする
がん細胞の増殖に関わるHER2を、治療の目印として利用します。
体内で抗体を作ることを目指す
ご自身の免疫の力で、HER2に結びつく抗体が作られるように働きかけます。
2か所を目印にする設計
HER2にある異なる2か所の特徴を免疫に覚えてもらう設計です。
通院で注射
基本計画では、3週間ごとに筋肉注射を行い、3回で1クールとします。
HER2は、がん細胞の増殖に関わる目印です
一部のがんでは、細胞の表面にHER2が多く現れ、増殖を促すスイッチのように働くことがあります。

細胞の表面にあるタンパク質
HER2は、細胞の表面にあるタンパク質です。細胞に「増えてください」という情報を伝える働きに関わります。
多すぎると増殖の合図が強くなる
一部のがんではHER2の数が多くなり、細胞を増やす合図が強く伝わることがあります。
すでに治療の目印として使われています
HER2は、ハーセプチン(一般名:トラスツズマブ)やパージェタ(一般名:ペルツズマブ)などの治療でも目印とされています。ただし、HER2ワクチンはこれらの承認薬とは異なる治療です。
HER2が多くみられることがある主ながん
- 乳がん
- 胃がん
- 食道がん
- 大腸がん
- 卵巣がん
- 肺がん
- 膀胱がん
- その他の固形がん
※同じ種類のがんでも、HER2の量は患者様によって異なります。治療を受けられるかどうかは、HER2検査の結果や病状を含めて総合的に判断します。
HER2ワクチンが目指す働き
注射したあと、体内で抗体が作られ、HER2に結びつくまでを4つの段階でご説明します。

-
01
ワクチンを注射
HER2の一部を小さく再現した成分を筋肉に注射します。
-
02
免疫がHER2の特徴を覚える
免疫が注射した成分を見つけ、HER2を目印として覚えるように働きかけます。
-
03
HER2に結びつく抗体を作る
免疫によって作られた抗体が、がん細胞の表面にあるHER2へ結びつくことを目指します。
-
04
がんの増殖を抑える働きを期待
増殖の合図を弱めることや、免疫ががん細胞を攻撃しやすくすることが研究されています。
HER2の2か所を目印にする設計
このワクチンには、HER2の異なる2か所を小さく再現した成分が使われています。この2か所は、既存の抗HER2薬が結びつく場所を参考にしています。
1か所だけでなく2か所に結びつく抗体を作ることで、HER2から伝わる増殖の合図に働きかけることを目指します。

HER2の検査結果と現在の病状を確認します
患者様によって病状や治療歴が異なるため、検査資料を確認したうえで治療を受けられるか判断します。

ご相談時に確認する主な内容
- がんの種類・病理診断・進行状況
- HER2がどの程度みられるかを調べた検査(IHC検査など)
- これまでに受けた手術・薬物療法・放射線治療
- 現在使用している薬剤と副作用
- 血液検査・CT・MRIなどの検査結果
- 全身状態と通院の可否
検査資料がすべて揃っていなくてもご相談いただけます。まずは、現在お手元にある資料をご用意ください。
海外の初期臨床試験で確認されたこと
まず安全に使用できるか、どのくらいの量が適切か、体内で抗体が作られるかを確認した小規模な試験です。
1回以上接種した人数
3回すべて接種した人数
注射から次の注射まで
注射した場所に症状が出た割合
何を調べた試験ですか?
転移や再発のある固形がんの患者様を対象に、安全に使用できるか、どのくらいの量が適切か、接種後に抗体が作られるかなどを調べた第I相試験です。
がんの大きさはどう変化しましたか?
評価できた患者様のうち、がんが小さくなった方が2人、大きな変化がなかった方が14人、大きくなった方が19人と報告されています。ただし、一般的な治療と直接比べた試験ではありません。
報告されている主な副反応
海外の初期臨床試験では、注射した場所の赤み・腫れ・痛みなどが最も多く報告されています。
注射した場所の症状
赤み・腫れ・痛みなど、注射した場所に現れる症状です。
だるさ・疲れ
いつもより体が重い、疲れやすいなどの症状です。
発熱
発熱が報告されています。
筋肉痛
筋肉痛が報告されています。
※上記は49人が1回以上接種した海外第I相試験の報告です。症状の現れ方には個人差があり、記載していない症状が起こる可能性もあります。
日本では承認されていない治療です
本ページで紹介するHER2ワクチンは、日本国内で承認された標準治療ではありません。手術、薬物療法、放射線治療などの標準治療に代わるものとして一律におすすめする治療でもありません。治療前に、国内での承認状況、製剤の入手方法、費用、副反応、公的な健康被害救済制度の対象外となる可能性などをご説明します。
ご相談から治療後の確認まで
まず資料を確認し、治療を受けられるか、副反応や費用も含めてご説明したうえで進めます。
- 01
お問い合わせ・治療説明の予約
お電話またはメールフォームからご相談ください。
- 02
病状と検査資料の確認
HER2検査、CT・MRI、血液検査、これまでの治療などを確認します。
- 03
治療を受けられるか医師が判断
期待できること、分かっていないこと、副反応、費用、標準治療との関係をご説明します。
- 04
ご本人の意思確認
十分に検討いただき、同意後に治療日程を決定します。
- 05
3週間ごとに筋肉注射
資料では3回の接種を1クールとする計画が示されています。
- 06
治療後の体調と経過を確認
診察や検査結果をもとに、体調の変化や治療後の経過を確認します。
※実際の検査内容、接種間隔、回数、評価時期は、患者様の状態や治療計画により異なる場合があります。
よくあるご質問
HER2ワクチンについて多く寄せられるご質問をご案内します。
QHER2陽性でなければ受けられませんか?
HER2の検査結果だけでなく、現在の病状、これまでの治療、体調なども確認して医師が判断します。検査を受けたか分からない場合や、結果が手元にない場合もご相談ください。
Qハーセプチンやパージェタと同じ治療ですか?
同じ治療ではありません。ハーセプチンやパージェタは、完成した抗体を薬として投与します。HER2ワクチンは、患者様ご自身の体内でHER2に結びつく抗体が作られるように働きかけます。
Q標準治療中でも相談できますか?
ご相談いただけます。現在の治療を中断することを前提にはしていません。治療内容や今後の予定を確認し、主治医への相談も含めて検討します。
Q何回接種しますか?
基本計画では、3週間ごとに1回、合計3回接種します。ただし、実際の回数や間隔は患者様の状態によって異なる場合があります。
Q効果はどのくらい続きますか?
体内で作られる抗体の量や、抗体が続く期間には個人差があります。長く抗体が確認された例もありますが、どの患者様でも同じ期間続くとは限りません。
Q家族だけでも相談できますか?
はい。患者様ご本人の来院が難しい場合は、ご家族からのご相談にも対応しています。可能な範囲で検査資料をご用意ください。
参考文献
- Bekaii-Saab T, et al. Phase I Immunotherapy Trial with Two Chimeric HER-2 B-Cell Peptide Vaccines. Clin Cancer Res. 2019;25:3495-3507.
- Kaumaya PTP. B-cell epitope peptide cancer vaccines. Future Oncol. 2020;16:1767-1791.
- Graus-Porta D, et al. ErbB-2, the preferred heterodimerization partner of all ErbB receptors. EMBO J. 1997;16:1647-1655.
治療前に知っておきたい大切なこと
副反応、国内での承認状況、費用、標準治療との関係についてご確認ください。
治療前に、起こる可能性がある副反応、製剤の入手方法、費用、公的な救済制度の対象外となる可能性などをご説明します。
| 起こる可能性がある副反応 |
海外の初期臨床試験では、49人が1回以上接種し、治療に関係すると考えられる症状として次の副反応が報告されています。
主な副反応
そのほか、リンパ節の痛み、風邪のような症状、軽い血圧低下や発汗を伴うアレルギー反応、血液検査値の変化、皮膚症状、内出血なども報告されています。 この試験では、治療に関係する重い副反応や、接種量を増やせないほどの強い副反応は確認されなかったと報告されています。ただし、少人数の初期試験であり、安全性が十分に確立しているわけではありません。強い症状や体調の変化がある場合は、速やかに医師へご相談ください。 |
|---|---|
| 日本での承認状況 |
本治療で使用するHER2ワクチンおよび関連製剤は、日本の法律に基づく医薬品としての承認を受けていません。医師が患者様の病状、治療歴、検査結果、体調を確認したうえで、治療を受けられるか判断します。 |
| 製剤の入手方法 |
国内未承認の製剤のため、医師の責任のもと、関係する法律に基づく手続きを経て入手します。製造元、製造国、輸入者、品質管理、保管方法などは治療前にご説明します。 |
| 国内に同じ承認薬があるか |
本治療と同じ成分・使い方・働きを持つ国内承認薬はありません。ハーセプチンやパージェタなど、国内で承認された抗HER2薬はありますが、HER2ワクチンとは薬の種類、働き方、投与方法が異なります。 |
| 海外で報告されている安全性 |
海外では、転移や再発のある固形がんの患者様を対象とした初期臨床試験が報告されています。治療に関係する重い副反応は確認されず、最も多かった副反応は注射した場所の症状(24%)でした。ただし、少人数の初期試験であり、治療効果と長期的な安全性はまだ確立していません。 |
| 副作用が起きた場合の公的な救済制度 |
未承認の医薬品を使用する治療では、副作用による健康被害が起きても、国の「医薬品副作用被害救済制度」の対象外となる可能性があります。健康被害が起きた場合の対応や補償については、治療前にご確認ください。 |
| 費用と健康保険 |
HER2ワクチンには健康保険が適用されず、治療費は全額自己負担です。費用、治療回数、治療内容、中止・解約時の取り扱い、主なリスクと副作用については、治療前に書面でご説明します。 |
| 標準治療との関係 |
本治療は、手術、薬物療法、放射線治療などの標準治療に代わることが確立された治療ではありません。現在の治療を自己判断で中断せず、主治医とも相談しながらご検討ください。 |
出典:Bekaii-Saab T, et al. Clin Cancer Res. 2019;25(12):3495-3507.
HER2ワクチンが受けられるか、
現在の病状から確認します。
患者様ご本人だけでなく、ご家族からのご相談にも対応しています。HER2の検査結果が分からない場合や、資料が揃っていない場合もお問い合わせください。


