ステージⅠの乳がんの概要
乳がんは、腫瘍(しこり)の大きさ、リンパ節転移の有無、他の臓器への転移の有無によって、ステージ(病期)が決定されます。
ステージやサブタイプによって治療法や予後が決まってくるため、その判別は非常に重要です。
ステージⅠの乳がんは、腫瘍の大きさが2cm以下かつ他の組織(リンパ節や臓器)への転移が無い場合の乳がんとなります。
浸潤がんの中では最も初期段階であり、早期治療によって90%異常が治っています。
ステージⅠ乳がんの症状
症状 | 症状の詳細な解説 |
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1. しこり | 乳がんステージⅠの主な症状として挙げられるのが、乳腺内でのがん細胞の形成による小さなしこりです。乳がんのしこりは、硬く動きにくいという特徴があるため、自己検診によって発見する人も多いです。 |
2. 乳頭の腫れ | 乳がんのサインとして、乳頭に赤い腫れがやただれが生じることがあります。 |
3. 分泌物の異常 | 乳がんステージⅠの症状には、乳頭からの分泌物の異常も挙げられます。血液や褐色の分泌物や粘り気のあるものが分泌された場合には、乳がんの疑いがあります。 |
4. 痛み | ステージⅠの乳がんでは、基本的に痛みの症状は出ません。しかし、稀に初期段階でも痛みを感じる患者様もおられます。 |
5. 乳房の変形 | 乳がんによって乳房内の組織が変化することがあり、これが乳房の形状や外観に変化をもたらす可能性があります。乳房の左右の大きさが変わっていないかを自己検診で調べることも重要です。 |
6. 皮膚の変化 | 乳がんの進行と共に、乳房の皮膚に引きつれやしわが現れることがあります。 |
乳がんの診断
診断の詳細な解説 | 説明 |
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1. 視診・触診 | 乳房や脇の下を触り、乳房のしこりやリンパ節の腫れなどを確認します。乳房の形の変化や左右の大きさ、乳首の陥没や分泌物の異常などを観察します。 ステージⅠの乳がんでは、自覚症状が無い人もいますので、医師の診察によって発見することもあります。 |
2. マンモグラフィー | マンモグラフィーは、乳房のX線撮影を使用してがんの早期発見を目的とした検査です。特に乳がんステージⅠの場合、自分では見つけにくい小さな腫瘍や石灰化を発見するのに有効です。患者は乳房をプレートで圧迫されることになりますが、これは撮影の品質向上に寄与します。 |
3. 超音波検査 | 超音波検査は、音波を使用して乳房の内部構造を詳細に見るための検査です。基本的にマンモグラフィと併せて使用され、しこりや腫れなどが良性か悪性かを評価する際に補完的な情報を提供します。乳がんステージⅠの小さなしこりや乳腺密度の高い女性でも検出できるといった特長があります。 |
4. 乳房MRI | 乳房MRIは、強力な磁場と無線波を使用して乳房の詳細な断層像を作成する検査です。マンモグラフィーや超音波検査と比べて最も高感度であり、特に若い女性や乳がんの家族歴がある場合に有用です。ステージⅠのがんの検出にも効果的です。 |
5. 病理検査 | 病理検査では、腫瘍組織から採取された細胞や組織が顕微鏡で詳細に調査されます。この検査によってがんが悪性であるかどうか、およびがん細胞の特性が確認されます。ステージⅠの場合でも、患部の組織の病理学的な特徴が明らかになり、治療計画の立案に役立ちます。 |
ステージⅠの乳がんステージでは、がんが小さくかつ局所的であるため、これらの画像検査や病理検査によって比較的早い段階で発見できる可能性が高まります。
診断の段階ではこれらの検査が組み合わさり、総合的な情報が提供されることで、患者に適した治療計画が策定されます。
患者と医師の密な協力が重要であり、定期的なスクリーニングも予防として推奨されます。
ステージⅠ乳がんの治療法
治療法 | 説明 |
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手術 |
ステージⅠの乳がんは腫瘍がまだ小さいため、治療の基本は手術となります。手術の目的は腫瘍を取り除くことであり、以下の二つの主要な術式が選択されます。
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放射線療法 |
この治療は、手術後に乳房やリンパ節に残っている可能性があるがん細胞を消失させるために行います。乳房温存術後は必ず行い、再発リスクを低減させます。 乳がんが進行して腫瘍が大きい場合、手術前に放射線療法を行うことで腫瘍を小さくすることもあります。 |
化学療法 | 化学療法は、抗がん剤の投与によってがん細胞を攻撃し、増殖を抑制する治療です。ステージⅠの乳がんにおいても、がんの再発リスクを低減するために行うことがあります。手術前または手術後に実施され、全身的にがん細胞を標的とします。 |
ホルモン療法 |
ホルモン療法は、エストロゲン(女性ホルモン)に依存するタイプのがん(ホルモン受容体陽性乳がん)に対して効果的な治療法です。 エストロゲンを抑制することで、がんの進行を制御し、再発のリスクを低減します。 |
分子標的療法 | 分子標的療法は、がん細胞に特有の標的分子を与えて効果を出す治療です。HER2が増殖に関わるタイプのがんに対しては、抗HER2薬が有効となります。 |
治療後は定期的なフォローアップが行われ、患者の健康状態や再発や転移の早期発見が重視されます。
ステージⅠの乳がんは、5年後の生存率が100%に近いため、ステージが進行する前に治療することが最も重要となります。
光免疫療法
光免疫療法は、がん細胞に選択的に集積させた後、特定の光を照射する事によって、がん細胞を攻撃します。
がん細胞を選択的に攻撃するため、正常細胞への影響が少なく、副作用が低減できる利点があります。
以下より当院の光免疫療法の詳細をご確認頂けます。
ステージⅠ乳がんの予後
項目 | 説明 |
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早期発見と治療の重要性 |
ステージⅠの乳がんは、がんがまだ乳腺内に限局されており、他の臓器やリンパ節への転移がありません。この段階での早期発見は治療成功の鍵となります。 早期に乳がんを発見し、適切な治療を開始することで、がんが成長する前に完治することができます。 |
治療の種類と個別化 |
ステージⅠの乳がん治療には手術、放射線療法、化学療法、ホルモン療法などが組み合わせて行われます。治療計画はステージやサブタイプ、患者の個別の状態に基づいて立案されます。 |
5年生存率の高さ |
乳がんステージⅠの患者の5年生存率は100%に近く非常に高い数値となります。これは、乳がんは早い段階で治療をすることで、他のがんより完治しやすいということを表しています。 5年生存率とは、治療を開始した時点から5年後に生存している患者の割合を示す指標となります。 |
定期的なフォローアップ検査とスクリーニング |
治療後は定期的なフォローアップ検査が重要です。これにより再発の早期発見が可能となり、必要に応じて追加の治療が提供されます。 乳がんについては、定期的なスクリーニングも予防として特に推奨され、患者の健康状態のモニタリングが続けられます。 |

【当該記事監修者】院長 小林賢次
がん治療をご検討されている、患者様またその近親者の方々へがん情報を掲載しております。ご参考頂けますと幸いです。