がんの進行や治療の影響により、肝機能や腎機能が著しく低下することがあります。
この状態では、強い抗がん剤やその他の治療薬の使用が制限され、治療方針の見直しが求められます。
本記事では、がん患者における肝機能・腎機能低下の原因、影響、および適切な治療アプローチについて詳しく解説いたします。
1. がん患者における肝機能・腎機能低下の原因
肝臓や腎臓は、体内の老廃物の処理や薬剤の代謝・排出を担う重要な臓器です。
がんの影響や治療の副作用により、これらの機能が低下すると、全身の状態が悪化し、使用できる薬剤が制限されるため、治療の選択肢が狭まることになります。
| カテゴリ | 影響・副作用 | 説明 |
|---|---|---|
| がんによる直接的な影響 | 肝転移 | 進行がんでは、肝臓への転移が生じることが多く、肝細胞の機能が低下する要因となります。 |
| 腎転移・尿路閉塞 | 腎臓や尿路にがんが転移し、尿の排出が阻害されることで腎機能が悪化することがあります。 | |
| 腫瘍随伴症候群 | がん細胞が産生する物質によって、肝臓や腎臓の働きが障害されることもあります。 | |
| がん治療の副作用 | 抗がん剤の影響 | シスプラチンやメトトレキサートなどの抗がん剤は腎毒性が高く、長期使用により腎不全を引き起こすリスクがあります。 |
| 免疫チェックポイント阻害薬 | 免疫関連の副作用として、肝炎や腎炎を発症することが報告されています。 | |
| 放射線治療 | 肝臓や腎臓を含む部位への照射により、臓器機能が低下することがあります。 | |
| その他の要因 | 低栄養・全身状態の悪化 | がん患者様では食欲不振や代謝異常により、肝臓や腎臓の機能を維持するための栄養が不足しやすくなります。 |
| 感染症 | 免疫力の低下により、肝炎や腎盂腎炎（腎臓の感染症）を発症しやすくなることがあります。 |
2. 肝機能・腎機能低下の影響
肝臓や腎臓の機能が著しく低下すると、以下のような問題が発生します。
| 項目 | 影響 |
|---|---|
| 薬剤の代謝・排出の遅延 |
|
| 強い薬剤の使用制限 |
|
| 浮腫・腹水・意識障害 |
|
3. 肝機能・腎機能低下時の治療方針
肝機能・腎機能の低下が著しい場合、治療の目標を延命ではなく症状緩和にシフトすることが重要となります。以下のような治療が選択されます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 薬剤の調整 |
|
| 肝・腎機能のサポート |
|
| 緩和ケアの導入 |
|
4. まとめ
がんの進行や治療の副作用により、肝機能・腎機能が著しく低下すると、強い薬剤を使用できなくなるため、治療戦略の見直しが必要となります。
治療方針としては、薬剤の調整、肝・腎機能のサポート、症状緩和を中心に行い、患者様のQOL（生活の質）を維持することが重要です。
特に終末期においては、延命ではなく苦痛の軽減を重視した緩和ケアが求められます。
肝機能・腎機能が低下したがん患者様の治療は、慎重な判断が必要であり、医療チームと患者様・家族が十分に話し合いながら最適な選択をすることが大切です。
【当該記事監修者】院長 小林賢次
がん治療をご検討されている、患者様またその近親者の方々へがん情報を掲載しております。ご参考頂けますと幸いです。
