直腸がんステージⅣにおける代替医療について
日本では、直腸がんは大腸がんの一部として比較的頻度の高い疾患で、年間約154,000人が大腸がん（結腸がん・直腸がん）と診断され、約53,000人が亡くなっています。
直腸がんステージⅣ（末期がん）は、がんが直腸を超えて肝臓、肺、骨、腹膜、リンパ節などの遠隔部位に転移した進行性の状態を指します。
この段階では、血便、便通異常（便秘・下痢）、腹痛、腹部膨満、食欲不振、体重減少、倦怠感などが顕著で、治療はがんの進行抑制、症状の緩和、QOL（生活の質）の向上を目指します。
直腸がんの主な原因は、遺伝的要因、炎症性腸疾患（潰瘍性大腸炎など）、生活習慣（高脂肪食、喫煙、飲酒）、肥満、糖尿病などです。当ページでは、直腸がんステージⅣの特徴、標準治療の概要、そして代替医療、特に光免疫療法を中心とした治療選択肢について詳しく解説します。
代替医療とは
代替医療とは、標準的な西洋医学（手術、化学療法、放射線療法、分子標的薬、免疫療法など）に代わる、またはそれらを補完する治療法を指します。
代替医療には、科学的エビデンスが確立されていないものから、臨床試験で効果が検証されつつあるものまで幅広く含まれます。
目的は、がんの進行抑制、症状の緩和、QOLの向上、免疫力の強化などが挙げられます。
特にステージⅣの直腸がんでは、標準治療の副作用が強い場合や効果が限定的な場合に、代替医療が注目されます。
代替医療の例には、光免疫療法、漢方、サプリメント、鍼灸、食事療法、心理療法などがありますが、今回は特に光免疫療法に焦点を当てて解説します。
ステージⅣ直腸がんの特徴と原因
ステージⅣの直腸がんは、TNM分類でM1（遠隔転移）に分類され、肝臓、肺、骨、腹膜、遠隔リンパ節への転移が一般的です。直腸がんは、直腸の粘膜から発生し、進行すると直腸壁を越えて骨盤内臓器（膀胱、子宮、前立腺）に浸潤したり、遠隔転移を起こしたりします。
直腸がんとは：大腸がんの一部
直腸がんは、大腸がん（結腸直腸がん）の一種であり、大腸（結腸と直腸）の粘膜に発生する悪性腫瘍の一部を指します。
大腸がんは、結腸がん（上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸に発生）と直腸がん（直腸に発生）に分けられますが、両者は解剖学的・病理学的に連続しており、類似した特徴を持ちます。
直腸は大腸の末端部分（S状結腸から肛門までの約15-20cmの領域）で、骨盤内に位置し、便を一時的に貯留する役割を果たします。
直腸がんは大腸がん全体の約30-40%を占め、結腸がんとは異なり、骨盤内臓器への浸潤や局所再発のリスクが高い傾向があります。
また、直腸がんは肛門に近いため、便通異常や血便、肛門部の不快感などの症状が顕著に現れやすいです。
大腸がん全体としての統計では、直腸がん患者様は結腸がん患者様と比べて外科的治療や放射線療法の適応が異なる場合があり、特にステージⅣでは転移パターン（例：肝転移が結腸がんよりやや少ない傾向）や治療戦略が異なることがあります。
そして、以下のような症状が現れます。
●局所症状：血便、便通異常（便秘・下痢）、腹痛、骨盤痛、肛門部の不快感、排便困難。
●全身症状：体重減少、食欲不振、倦怠感、発熱、貧血、栄養不良。
●転移関連症状：肝転移による肝機能障害や黄疸、肺転移による呼吸困難や咳、骨転移による骨痛や病的骨折、腹膜転移による腹水や腸閉塞、脳転移による頭痛や神経症状、リンパ節転移による浮腫。
発症の原因としては以下が挙げられます。
●遺伝的要因：リンチ症候群（遺伝性非ポリポーシス大腸がん：HNPCC）や家族性大腸ポリポーシス（FAP）、KRAS、APC、TP53遺伝子変異が関与。家族性がんのリスクが高い。
●炎症性腸疾患：潰瘍性大腸炎やクローン病による慢性炎症ががん化を促進。特に潰瘍性大腸炎は直腸から始まる炎症が多く、直腸がんリスクを高める。
●生活習慣：高脂肪食、赤身肉・加工肉の過剰摂取、喫煙、過度な飲酒、運動不足がリスクを高める。
●肥満・糖尿病：インスリン抵抗性や代謝異常ががん化を促進。肥満患者は発症リスクが1.5-2倍高い。
●化学物質・環境因子：アスベストや特定の化学物質への曝露がリスクを高める可能性。
●その他の要因：高齢、大腸ポリープ（特に腺腫性ポリープ）、定期検診の未受診。
標準治療の概要
ステージⅣの直腸がんに対する標準治療は、がんの進行抑制、症状緩和、QOL維持を目的とします。
以下に主な治療法の概要を説明します。
●手術：ステージⅣでは遠隔転移により根治手術が困難な場合が多い。ただし、症状緩和のための腸閉塞解除手術や腫瘍減量手術、人工肛門（ストーマ）造設が検討される。直腸がんでは、肛門温存手術（低位前方切除術）や全直腸切除術（腹会陰切除術）が局所制御のために行われる場合もある。
●化学療法：FOLFOXやFOLFIRIが標準治療。カペシタビンやS-1も使用されるが、副作用（下痢、吐き気、手足症候群）が強い。
●分子標的薬：ベバシズマブ（VEGF阻害剤）やセツキシマブ、パニツムマブ（EGFR阻害剤）がRAS野生型の場合に有効。エンコラフェニブ（BRAF阻害剤）はBRAF変異陽性症例で使用。
●免疫チェックポイント阻害剤：ペンブロリズマブやニボリズマブ（PD-1阻害剤）がMSI-H（マイクロサテライト不安定性高値）またはdMMR（ミスマッチ修復欠損）の症例に有効。
●放射線療法：強度変調放射線療法（IMRT）や定位放射線療法（SBRT）が骨転移や骨盤内症状の緩和に使用される。直腸がんでは、骨盤内再発や局所症状の制御に放射線が補助的に用いられることが多い。
●緩和ケア：腹痛、腸閉塞、血便、栄養不良、精神的ストレスの管理に重点。鎮痛剤、栄養サポート、心理的ケア、ストーマ管理でQOLを向上。
代替医療：光免疫療法
標準治療は効果的である一方、副作用が強く、ステージⅣの直腸がんでは治療効果が限定的な場合があります。
そこで、代替医療として注目されるのが光免疫療法です。
この治療法は、科学的エビデンスが蓄積されつつあり、特にステージⅣの直腸がんにおける新たな治療の可能性として期待されています。
光免疫療法とは
光免疫療法は、光感受性物質（薬剤）を投与し、特定の波長のレーザー光をがん細胞に照射することで、がん細胞を選択的に破壊する治療法です。
この治療法は、正常細胞へのダメージを最小限に抑えつつ、がん細胞を効果的に攻撃する点で優れており、ステージⅣの直腸がんにおける局所再発、肝転移、肺転移、腹膜転移、リンパ節転移などに適用可能な場合があります。
直腸がんでは、内視鏡や体表面からのレーザー照射が可能な部位（例：局所再発や腹膜転移）に適応が広がっています。
光免疫療法の仕組み
１．標的薬剤の投与：光感受性を持つ薬剤を点滴で投与。EPR効果（増強された透過性・滞留効果）により、薬剤ががん細胞に集中的に集積。
２．光照射：近赤外線レーザーを体表面に照射。薬剤が集積したがん細胞で活性酸素が発生し、がん細胞を破壊。
３．免疫活性化：破壊されたがん細胞が免疫系を刺激し、全身的な抗腫瘍免疫応答を誘発する可能性。
光免疫療法の利点
●高い選択性：正常な直腸組織や周辺臓器への影響が少なく、副作用が軽減される。
●適応範囲：局所再発、肝転移、肺転移、腹膜転移、リンパ節転移などに有効な可能性。
●QOLの向上：化学療法や放射線療法に比べ、消化器症状や全身状態への影響が少なく、高齢者や体力の低下した患者様にも適応可能。
●免疫効果：遠隔転移に対する追加的な抗腫瘍効果が期待される。
●標準治療との併用：免疫チェックポイント阻害剤（ペンブロリズマブなど）や分子標的薬と組み合わせることで、相乗効果が期待できる。
当院の光免疫療法に関する詳細な情報は、以下よりご確認いただけます。
その他の代替医療
光免疫療法以外にも、ステージⅣ直腸がんに対して以下の代替医療が検討される場合があります。
これらは科学的エビデンスの程度が異なり、標準治療を補完する形で使用されることが多いです。
●漢方療法：十全大補湯や半夏瀉心湯など、倦怠感の軽減や消化器症状の緩和を目的に使用。科学的エビデンスは限定的だが、食欲不振やQOL向上に寄与する場合がある。
●サプリメント・食事療法：ビタミンD、クルクミン、セレン、オメガ3脂肪酸などが抗炎症や免疫強化を目的に研究されている。ただし、肝機能障害や腸閉塞がある場合、摂取方法に注意が必要。
●鍼灸：腹痛、化学療法による副作用（悪心・嘔吐）の緩和に役立つ可能性。ストレス軽減やQOL向上に寄与するが、がん進行抑制の効果は未確立。
●心理療法・マインドフルネス：がん患者の精神的ストレスや不安を軽減し、QOLを向上させる。腸閉塞やストーマ管理による心理的負担を軽減するカウンセリングが有用。
●臨床試験における代替医療：がんワクチン、CAR-T細胞療法、オンコリティックウイルス療法などが臨床試験で検討中。これらは免疫療法の枠組みに近く、将来的に標準治療に組み込まれる可能性がある。
まとめ
直腸がんステージⅣは、遠隔転移を伴う進行性の疾患であり、遺伝的要因、炎症性腸疾患、生活習慣、肥満などが発症に関与します。
直腸がんは大腸がんの一部であり、結腸がんとは異なる解剖学的特徴や治療アプローチを持ち、特に骨盤内再発や局所症状の管理が重要です。
標準治療（手術、化学療法、分子標的薬、免疫療法、放射線療法、緩和ケア）は有効ですが、副作用や効果の限界から代替医療も注目されています。
特に光免疫療法は、選択性の高さと副作用の少なさから、ステージⅣの直腸がん患者様のQOLを重視する有望な選択肢といえます。
この治療法は、局所再発、肝転移、肺転移、腹膜転移、リンパ節転移に対して有効であり、標準治療との併用で相乗効果が期待できる可能性があります。
代替医療の選択には、科学的根拠やリスクの評価が重要です。
当院の光免疫療法の適用可否については、お気軽にご相談ください。
【当該記事監修者】院長 小林賢次
がん治療をご検討されている、患者様またその近親者の方々へがん情報を掲載しております。ご参考頂けますと幸いです。
