乳がんのしこりの概要
乳がんは、乳腺組織に発生するがんの一種であり、女性だけでなく男性にも発症する可能性があります。
「しこり」は、乳がんの症状の中で最も一般的で自覚症状のでやすい症状となります。
しこりに気がついて検査を受ける方も多くいますが、乳腺にできるしこりの約90%は良性だといわれています。
乳腺症、乳腺炎、乳腺線維腺腫、皮膚の腫瘍などの病気はしこりができることがあるため、乳がんと勘違いされやすいです。
乳がんの早期発見は治療の成功率を大幅に向上させるため、しこりの発見や変化には常に注意を払うことが重要です。
乳がんのしこりの特徴
乳がんのしこりの特徴の一つとして、痛みの有無が挙げられます。
基本的に初期の乳がんであれば痛みを伴うことは少なく、乳がん以外のしこりであれば痛みが感じるものが多いです。
しかし、乳がんが進行していると痛みを感じるようになるため、「しこりが痛い=乳がんではない」と思い込むのはやめましょう。
また、乳がんのしこりは、がん細胞が周りの組織とくっつき動きにくいです。他の良性のしこりは指で押すと動きます。
それに伴い、周りの組織を引っ張り、乳房に小さなくぼみができたり引きつれが起こることもあります。
他の特徴として、乳がんのしこりの約50%は乳房の外側上部に発生します。
しこりの大きさは、乳がんの進行度や種類によっても異なりますが、1cmほどになると自己発見ができるようになります。
しこりは、乳房だけでなく脇の下のリンパ節にも転移することがありますので、早期発見をすることが重要です。
原因とリスクファクター
乳がんが発生する正確な原因はまだ解明されていませんが、遺伝や女性ホルモンの変動、生活習慣などが関与すると考えられています。
特に、家族に乳がんの既往歴がある場合、乳がんのリスクが高まるとされています。
また、初潮の年齢が早い、閉経年齢が遅い、出産経験が無いなども乳がんのリスクを影響する要因となります。
次に、乳がんのリスクを高める生活習慣としては、喫煙や過度なアルコール摂取、高脂肪食の摂取(肥満)などが挙げられます。
他にも、長期間のホルモン補充療法や放射線の過度な曝露も、乳がんのリスクを高める要因となることが知られています。
乳がんのしこりの診断
乳房のしこりを発見した場合、良性か悪性かを判断する必要があります。乳がんのしこりの診断は、主に画像診断や細胞診、組織診によって行われます。
これらの診断方法は、乳がんの種類や進行度、しこりの性質などを詳しく調べるためのものです。
マンモグラフィー
マンモグラフィーは、乳房のX線写真を撮ることで、乳房内の異常な組織やしこりを検出する方法です。
この検査は、乳がんの早期発見に非常に有効であり、特に40歳以上の女性に推奨されています。
マンモグラフィーは、乳がんの石灰化した病変を見つけるのに優れている特徴があります。
しかし、40歳未満の女性は乳腺が発達しているため、乳腺の異常が分かりにくいというデメリットもあります。
マンモグラフィーによって、しこりが良性か悪性なのかも調べることができます。
超音波検査
超音波検査は、高周波の音波を使用して乳房の内部を画像化する方法です。
マンモグラフィで見つけにくい高濃度乳房のしこりの有無を見つけやすい検査となります。
また、しこりの形状や境界などの詳細な情報から、しこりが良性か悪性を判断できます。
しかし、石灰化した病変を見つけにくいといったデメリットもあります。
細胞診と組織診
細胞診は、しこりから採取した細胞を顕微鏡で観察し、がん細胞の有無を調べる方法です。
組織診は、しこりの一部を採取し、組織の性質やがんの種類を詳しく調べる方法です。
これらの診断方法は、乳がんの確定診断やステージング(がんの進行度の分類)に必要です。
乳がんのしこりの治療と対応
乳がんのしこりの治療法は、がんの種類や進行度、患者様の健康状態などによって異なります。
乳がんの治療の目的は、がんの進行を止め再発のリスクを低減することです。
手術
乳がんの手術は、しこりを取り除くためのもので、乳房温存手術や乳房全切除術、乳房再建手術などがあります。
手術の方法は、がんの大きさや位置、乳房の大きさなどによって選択されます。
手術後の乳房の形や大きさを保つために再建手術も選択することができます。
放射線治療
放射線治療は、がん細胞を破壊するための治療方法で、手術後の再発を防ぐための追加治療や、手術が適応しないステージのがんに対して疼痛の緩和などを目的に選択されます。
放射線は、がん細胞にダメージを与えその増殖を抑制する効果があります。
薬物療法
薬物療法には、ホルモン療法や化学療法、免疫療法などがあります。
目的としては、がんを小さくして手術で摘出しやすくしたり切除範囲を小さくする、手術後のがん細胞の再発を抑える、他の臓器へ転移したがんを治療することが挙げられます。
薬物療法の種類や期間は、がんの種類や進行度、患者様の健康状態などによって異なります。
予後とフォローアップ
乳がんの治療後、定期的なフォローアップが必要です。
再発のリスクを低減するため、医師の指示に従い、定期的な検査や自己検診を行うことが推奨されます。
フォローアップの期間や頻度は、がんの種類や進行度、治療の方法などによって異なります。
【当該記事監修者】院長 小林賢次
がん治療をご検討されている、患者様またその近親者の方々へがん情報を掲載しております。ご参考頂けますと幸いです。