血管新生阻害薬の効果が低下した場合の治療選択肢

がん治療において、血管新生阻害薬は、腫瘍の成長に必要な血管の新生を抑えることで抗腫瘍効果を発揮します。
しかし、長期間使用すると耐性が生じ、治療効果が低下することがあります。その場合、新たな治療戦略を検討する必要があります。
本記事では、血管新生阻害薬の効果が低下する原因と、その場合の治療選択肢について詳しく解説します。

1. 血管新生阻害薬の作用と耐性メカニズム

薬剤名 商品名 作用機序
ベバシズマブ アバスチン VEGF(血管内皮成長因子)を阻害
ラムシルマブ サイラムザ VEGFR2を標的とするモノクローナル抗体
アキシチニブ インライタ チロシンキナーゼ阻害薬(VEGFR、PDGFR、FGFRなどを阻害)
レンバチニブ レンビマ チロシンキナーゼ阻害薬(VEGFR、PDGFR、FGFRなどを阻害)
スニチニブ スーテント チロシンキナーゼ阻害薬(VEGFR、PDGFR、FGFRなどを阻害)

2. 血管新生阻害薬が効かなくなる原因

血管新生阻害薬の効果が低下する主な原因は、がん細胞や腫瘍微小環境が変化し、血管新生を別の経路で補うことができるようになるためです。

原因 説明
代替血管新生経路の活性化 VEGFを抑制しても、腫瘍が以下の経路を活性化することで新しい血管を形成可能になる。
・FGF(線維芽細胞増殖因子)の活性化
・PDGF(血小板由来成長因子)の発現増加
・Ang-2(アンギオポエチン2)の増加
低酸素環境への適応 血管新生阻害薬により腫瘍組織が低酸素状態になると、がん細胞が低酸素耐性を獲得し、酸素供給が少なくても生存できるようになる。
腫瘍の悪性化と転移 低酸素に強い細胞が選択的に増殖することで、がん細胞がより浸潤性・転移性を持つようになる。
免疫抑制の強化 低酸素環境が続くことで、T細胞などの免疫細胞の機能が低下し、がん細胞が免疫の攻撃から逃れやすくなる。

3. 血管新生阻害薬が効果を示さなくなった場合の治療選択肢

血管新生阻害薬が効かなくなった場合、以下の治療戦略が考えられます。

治療戦略 説明 代表的な薬剤・併用療法
免疫チェックポイント阻害薬との併用 免疫抑制を解除し、免疫細胞ががん細胞を攻撃できるようにする。 【代表的な免疫チェックポイント阻害薬】
・ペムブロリズマブ(キイトルーダ):PD-1阻害薬
・ニボルマブ(オプジーボ):PD-1阻害薬
・アテゾリズマブ(テセントリク):PD-L1阻害薬
・デュルバルマブ(イミフィンジ):PD-L1阻害薬

【併用療法の例】
・アテゾリズマブ+ベバシズマブ(肝細胞がん)
・ペムブロリズマブ+レンバチニブ(腎細胞がん、子宮内膜がん)

分子標的薬の変更 異なる作用機序を持つ分子標的薬に変更し、耐性克服を図る。 【変更可能な分子標的薬】
・mTOR阻害薬(エベロリムス、テムシロリムス):細胞の成長と増殖を抑制
・MET/AXL/VEGFR阻害薬(カボザンチニブ):VEGF以外の血管新生経路も標的にする
・FGFR阻害薬(エルダフィチニブ):FGFを標的にする
化学療法の再導入 血管新生阻害薬に耐性が生じた場合、従来の化学療法を再導入する。 【代表的な化学療法】
・プラチナ製剤(シスプラチン、カルボプラチン)
・タキサン系(パクリタキセル、ドセタキセル)
・アントラサイクリン系(ドキソルビシン)
放射線治療の併用 腫瘍の局所コントロールを目的に放射線治療を併用する。 特に脳転移や骨転移がある場合に有効。
臨床試験への参加 標準治療が効果を示さなくなった場合、新しい治療法の臨床試験に参加する。 最新の治験情報を医師と相談しながら検討。
光免疫療法 光感受性物質をがん細胞に集積させ、特定の波長の光を照射することで選択的にがん細胞を破壊する光免疫療法を提供しています。副作用が少なく、局所的な治療が可能なため、QOL(生活の質)の向上が期待されます。 ・光感受性物質を用いた治療
・多波長レーザーを活用し、腫瘍の部位に適した照射を実施
・他の治療法と併用可能(例:標準治療m免疫療法、分子標的療法など様々)

【適応例】
・ほぼ全身のがんとステージに対応

4. まとめ

分類 内容
血管新生阻害薬の耐性メカニズム 代替血管新生経路の活性化
低酸素環境への適応
腫瘍の悪性化と転移
免疫抑制の強化
治療選択肢 免疫チェックポイント阻害薬との併用
分子標的薬の変更
化学療法の再導入
放射線治療の併用
臨床試験への参加

血管新生阻害薬が効かなくなっても、適切な代替治療を選択することで、がんの進行を抑えることが可能です。医師と相談し、最適な治療方針を検討しましょう。

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