余命宣告を受けた膀胱がんに対する現代の治療の可能性
膀胱がんは、膀胱の内側で細胞が異常増殖することで発症する悪性腫瘍です。
早期発見では治療の成功率が高く、完治も期待できますが、進行した場合や転移が見られる場合には治療が複雑になり、予後が厳しくなることがあります。
主なリスク因子には、喫煙、化学物質(特に芳香族アミン類)への長期曝露、慢性の膀胱炎や感染症、遺伝的要因などが挙げられます。
初期症状としては、血尿(痛みを伴わない場合が多い)、頻尿、排尿時の痛みや灼熱感が挙げられます。
余命宣告を受けた患者様にとっても、現代の医療技術の進歩により、生存期間の延長や生活の質の向上が期待できる治療法が数多く登場しています。
当ページでは、進行性膀胱がんに対する最新の治療アプローチを詳細に解説します。
膀胱がんの進行度と予後の理解
膀胱がんは、がんの深さや広がりによりステージ0からステージⅣに分類されます。
ステージ0およびⅠ(非浸潤性膀胱がん)では、がんが膀胱の内壁(粘膜または粘膜下層)に留まっており、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)や膀胱内薬物療法(BCG療法など)で高い治療効果が得られます。
ステージⅡでは、がんが膀胱の筋層に浸潤しており、膀胱全摘術や化学療法、放射線療法が選択肢となります。
ステージⅢおよびⅣでは、がんが膀胱外の組織、リンパ節、または遠隔臓器(肺、肝臓、骨など)に転移し、予後が厳しくなる傾向があります。
特にステージⅣの場合、5年生存率は15~20%と報告されていますが、現代の治療法により、余命宣告を受けた患者様でも生存期間の延長や症状の緩和が可能なケースが増えています。
患者様の全身状態やがんの特性に応じた個別化治療が、予後改善の鍵となります。
光免疫療法:新たな希望の治療法
光免疫療法は、特定の光感受性薬剤とレーザー光を組み合わせ、がん細胞を選択的に破壊する先進的な治療法です。
この治療は、進行性膀胱がんや余命宣告を受けた患者様にも、状態次第で適応可能な場合があります。
まず、光感受性薬剤を投与し、がん細胞に選択的に集積させます。
その後、特定の波長の光を照射することで薬剤が活性化し、がん細胞を破壊します。
このプロセスは、正常細胞へのダメージを最小限に抑えるため、副作用が少ないことが特徴です。
例えば、従来の化学療法で問題となる吐き気や脱毛、骨髄抑制などの重篤な副作用が軽減される傾向があります。
光免疫療法は、TURBTや化学療法、免疫療法と併用することで相乗効果が期待でき、局所再発の抑制や症状の緩和に役立つとされています。
以下より当院の光免疫療法の詳細をご確認頂けます。
免疫チェックポイント阻害薬:免疫系を活用した治療
免疫チェックポイント阻害薬も進行性膀胱がんの治療に有効です。
この治療法は、がん細胞が免疫系を回避する仕組み(免疫チェックポイント)をブロックし、患者自身の免疫系ががん細胞を攻撃する力を強化します。
代表的な薬剤には、ペムブロリズマブ(キイトルーダ)やアテゾリズマブ(テセントリク)があります。
これらの薬剤は、プラチナ系化学療法が効果不十分なステージⅣの膀胱がん患者様や、転移性膀胱がんの治療に適応されます。
副作用としては、倦怠感や皮膚炎、まれに免疫関連の肺炎や腸炎などが生じる可能性がありますが、従来の化学療法に比べ全身状態への影響が少ない場合が多いです。
患者様の腫瘍のPD-L1発現レベルや全身状態を評価し、専門医が最適な治療計画を提案します。
標的療法と遺伝子解析に基づく個別化治療
標的療法は、がん細胞の特定の分子や遺伝子変異を標的とし、正常細胞への影響を抑えながらがんの増殖を抑制する治療法です。
膀胱がんでは、FGFR(線維芽細胞増殖因子レセプター)遺伝子変異を持つ患者様に対し、エルダフィチニブなどのFGFR阻害薬が有効とされています。
この薬剤は、FGFR変異を有する転移性膀胱がん患者様の約40%で腫瘍縮小効果を示すと報告されています。
また、次世代シーケンサー(NGS)を用いた遺伝子解析により、患者様のがんに特異的な変異を特定し、それに基づく個別化治療が可能です。
遺伝子解析は、従来の治療が効果不十分な場合や再発を繰り返す症例で特に有用であり、余命宣告を受けた患者様にも新たな治療の可能性を提供します。
化学療法と放射線療法の役割
進行性膀胱がんでは、化学療法が標準治療の一つとして依然重要な役割を果たします。
シスプラチンやゲムシタビンを中心とした併用化学療法は、転移性膀胱がんの腫瘍縮小や症状緩和に効果的です。
しかし、シスプラチンが使用できない患者(腎機能低下や高齢者など)には、カルボプラチンやパクリタキセルを用いた代替レジメンが選択されます。
化学療法は単独では完治が難しい場合が多いですが、免疫療法や光免疫療法と組み合わせることで、治療効果の向上が期待されます。
一方、放射線療法は、膀胱全摘術が適応できない患者様や局所制御を目指す場合に使用されます。
最新の強度変調放射線療法(IMRT)は、がん組織に高精度で放射線を照射し、周辺の正常組織へのダメージを軽減します。
これにより、排尿機能の温存や生活の質の維持が可能になる場合があります。
緩和ケアと生活の質の向上
余命宣告を受けた患者様にとって、積極的な治療だけでなく、緩和ケアも重要な治療の一環となります。
緩和ケアは、痛みや吐き気、倦怠感などの症状を軽減し、精神的なサポートを提供することで、生活の質を向上させます。
例えば、オピオイドや非ステロイド性抗炎症薬を用いた疼痛管理、栄養指導、心理カウンセリングなどが含まれます。
緩和ケアは、治療の初期段階から導入することで、患者様とご家族の負担を軽減し、治療への意欲を維持する効果も期待されます。
また、ホスピスケアや在宅医療との連携により、患者様が望む環境で過ごすことが可能です。
希望をつなぐための総合的なアプローチ
余命宣告を受けた膀胱がん患者様でも、現代の多様な治療法により、生存期間の延長や症状の緩和が期待できます。
光免疫療法、免疫チェックポイント阻害薬、標的療法、遺伝子解析に基づく個別化治療、化学療法、放射線療法、緩和ケアを組み合わせた総合的なアプローチが、患者様一人ひとりに最適な結果をもたらします。
また、定期的な検査や早期発見の取り組みは、がんの進行を抑えるために不可欠です。
膀胱がんの治療は日々進化しており、臨床試験を通じて新たな治療法が開発されています。
治療の選択肢や期待される効果について、十分な情報を得た上で意思決定を進めることをお勧めします。
当院の光免疫療法は、進行した膀胱がんにも適用可能な場合がありますので、お悩みの方は一度ご相談ください。

【当該記事監修者】院長 小林賢次
がん治療をご検討されている、患者様またその近親者の方々へがん情報を掲載しております。ご参考頂けますと幸いです。