肺がんステージⅣにおける代替医療について
日本では、肺がんは罹患者数が多く、がんによる死亡原因の第1位を占める重大な疾患です。
年間約124,000人が新たに肺がんと診断され、約76,000人が亡くなっています。
肺がんステージⅣは、がんが肺を超えて肝臓、脳、骨、リンパ節などの遠隔部位に転移した進行性の状態を指します。
この段階では、咳、呼吸困難、胸痛、血痰、体重減少、倦怠感などの症状が顕著で、治療はがんの進行抑制、症状の緩和、QOL(生活の質)の向上を目指すことが中心となります。
肺がんの原因には、喫煙、受動喫煙、大気汚染、遺伝的要素(EGFR、KRAS、ALK変異など)、職業性曝露(アスベストやラドンなど)が関与します。
当ページでは、肺がんステージⅣの特徴、標準治療の概要、そして代替医療、特に光免疫療法を中心とした治療選択肢について詳しく解説します。
代替医療とは
代替医療とは、標準的な西洋医学(手術、化学療法、放射線療法など)に代わる、またはそれらを補完する治療法を指します。
代替医療には、科学的エビデンスが確立されていないものから、臨床試験で効果が検証されつつあるものまで幅広く含まれます。
目的は、がんの進行抑制、症状の緩和、QOLの向上、免疫力の強化などが挙げられます。
特にステージⅣの肺がんでは、標準治療の副作用が強い場合や効果が限定的な場合に、代替医療が注目されます。
代替医療の例には、光免疫療法、漢方、サプリメント、鍼灸、食事療法、心理療法などがありますが、今回は特に光免疫療法に焦点を当てて解説します。
ステージⅣ肺がんの特徴と原因
ステージⅣの肺がんは、TNM分類でT4(周辺臓器への高度な浸潤)、N2/N3(遠隔リンパ節転移)、またはM1(遠隔転移)に分類されます。
肺がんには非小細胞肺がん(NSCLC、約85%)と小細胞肺がん(SCLC、約15%)があり、脳転移、骨転移、肝転移、胸膜播種が一般的です。
そして、以下のような症状が現れます。
●呼吸器症状:持続性の咳、血痰、呼吸困難、胸痛、喘鳴。
●全身症状:体重減少、倦怠感、発熱、食欲不振、貧血。
●転移関連症状:脳転移による頭痛、めまい、意識障害、骨転移による骨痛、肝転移による黄疸や肝機能障害、胸膜播種による胸水や呼吸困難。
発症の原因としては以下が挙げられます。
●遺伝的要素:EGFR、KRAS、ALK、ROS1、MET、TP53変異、家族性肺がんのリスク。
●生活習慣:喫煙(リスクを10~20倍増加)、受動喫煙、過度な飲酒、肥満、高脂肪食がリスクを上昇。
●環境・職業的要因:アスベスト、ラドン、大気汚染(PM2.5など)、化学物質への曝露。
●その他:慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺線維症、腸内細菌叢の乱れ、ビタミンD欠乏なども関与。
標準治療の概要
ステージⅣの肺がんに対する標準治療は、がんの進行抑制、症状緩和、QOL維持を目的とします。
以下に主な治療法の概要を説明します。
●化学療法:NSCLCではカルボプラチン+パクリタキセル、シスプラチン+ペメトレキセド、SCLCではシスプラチン+エトポシドが主に使用され、転移巣の縮小や進行抑制を目指す。
●分子標的薬:オシメルチニブ(EGFR阻害剤)、クリゾチニブ(ALK阻害剤)、PARP阻害剤などが特定の遺伝子変異に対応し、化学療法と併用される。
●免疫チェックポイント阻害剤:ペムブロリズマブやニボルマブはMSI-H(マイクロサテライト不安定性高値)やTMB-H(腫瘍変異負荷高値)の症例に有効。
●手術:ステージⅣでは根治手術は困難だが、胸水や気道閉塞の緩和を目的とした姑息的手術(胸腔ドレナージ、ステント留置)が行われる場合がある。
●放射線療法:骨転移や脳転移による疼痛緩和、局所制御を目的に使用。定位放射線療法(SBRT)が局所進行例で検討されることもある。
●緩和ケア:呼吸困難、疼痛、胸水、栄養不良の管理に重点を置き、酸素療法、鎮痛剤、栄養サポートでQOLを向上。
代替医療:光免疫療法
標準治療は効果的である一方、副作用が強く、ステージⅣの肺がんでは治療効果が限定的な場合があります。
そこで、代替医療として注目されるのが光免疫療法です。
この治療法は、科学的エビデンスが蓄積されつつあり、特にステージⅣの肺がんにおける新たな治療の可能性として期待されています。
光免疫療法とは
光免疫療法は、光感受性物質(薬剤)を点滴で投与し、特定の波長のレーザー光をがん細胞に照射することで、がん細胞を選択的に破壊する治療法です。
この治療法は、正常細胞へのダメージを最小限に抑えつつ、がん細胞を効果的に攻撃する点で優れており、ステージⅣの肺がんにおける気管支内腫瘍や表在性転移巣(胸膜播種など)に適用可能な場合があります。
光免疫療法の仕組み
1.標的薬剤の投与:光感受性を持つ薬剤を点滴で投与。EPR効果(増強された透過性および保持効果)により、薬剤ががん細胞に集中的に集積。
2.光照射:気管支鏡や胸腔鏡を用いて特定の波長のレーザーを照射。薬剤が集積したがん細胞で活性酸素が発生し、がん細胞を破壊。
3.免疫活性化:破壊されたがん細胞が免疫系を刺激し、全身的な抗腫瘍免疫応答を誘発する可能性。
光免疫療法の利点
●高い選択性:正常な肺組織や周辺臓器への影響が少なく、副作用が軽減される。
●適応範囲:気管支内腫瘍や表在性転移巣(胸膜播種など)に有効な可能性。
●QOLの向上:化学療法や放射線療法に比べ、身体的負担が少なく、高齢者や体力の低下した患者様にも適応可能。
●免疫効果:遠隔転移に対する追加的な抗腫瘍効果が期待される。
●標準治療との併用:化学療法や分子標的薬と組み合わせることで、相乗効果が期待できる。
当院の光免疫療法に関する詳細な情報は、以下よりご確認いただけます。
その他の代替医療
光免疫療法以外にも、ステージⅣ肺がんに対して以下の代替医療が検討される場合があります。
これらは科学的エビデンスの程度が異なり、標準治療を補完する形で使用されることが多いです。
●漢方療法:黄芩湯や小柴胡湯など、呼吸器症状の緩和や免疫力向上を目的に使用。科学的エビデンスは限定的だが、QOL向上に寄与する場合がある。
●サプリメント・食事療法:クルクミン、ビタミンD、オメガ3脂肪酸、ケトジェニック食事療法などが炎症抑制や免疫強化を目的に研究されている。ただし、過剰摂取や栄養バランスの乱れに注意が必要。
●鍼灸:疼痛管理、呼吸困難、吐き気の緩和に役立つ可能性。ストレス軽減やQOL向上に寄与するが、がん進行抑制の効果は未確立。
●心理療法・マインドフルネス:がん患者様の精神的ストレスや不安を軽減し、QOLを向上させる。瞑想やカウンセリングが含まれ、緩和ケアの一環として有用。
●臨床試験における代替医療:がんワクチン、CAR-T細胞療法、オンコリティックウイルス療法、バイスペシフィック抗体などが臨床試験で検討中。これらは分子標的療法や免疫療法の枠組みに近く、将来的に標準治療に組み込まれる可能性がある。
まとめ
肺がんステージⅣは、遠隔転移を伴う進行性の疾患であり、遺伝的要素(EGFR、KRAS、ALK変異など)、喫煙、環境曝露、慢性肺疾患が発症に関与します。
標準治療(化学療法、分子標的薬、免疫療法、手術、放射線療法、緩和ケア)は有効ですが、副作用や効果の限界から代替医療も注目されています。
特に光免疫療法は、選択性の高さと副作用の少なさから、ステージⅣの肺がん患者様のQOLを重視する有望な選択肢といえます。
この治療法は、気管支内腫瘍や表在性転移巣に対して有効であり、標準治療との併用で相乗効果が期待できる可能性があります。
代替医療の選択には、科学的根拠やリスクの評価が重要となります。
当院の光免疫療法の適用可否については、お気軽にご相談ください。

【当該記事監修者】院長 小林賢次
がん治療をご検討されている、患者様またその近親者の方々へがん情報を掲載しております。ご参考頂けますと幸いです。