子宮体がんステージⅣにおける代替医療について
日本では、子宮体がん(子宮内膜がん)は女性のがんの中では比較的頻度が高い疾患で、年間約19,000人が新たに診断され、約2,800人が亡くなっています。
子宮体がんステージⅣ(末期がん)は、がんが子宮を超えて肺、肝臓、骨、腹膜、リンパ節などの遠隔部位に転移した進行性の状態を指します。
この段階では、異常子宮出血、骨盤痛、腹部膨満、食欲不振、体重減少、倦怠感、呼吸困難などが顕著で、治療はがんの進行抑制、症状の緩和、QOL(生活の質)の向上を目指します。
子宮体がんの主な原因は、ホルモン異常(エストロゲン過多)、肥満、糖尿病、遺伝的要因、化学物質への曝露などです。
当ページでは、子宮体がんステージⅣの特徴、標準治療の概要、そして代替医療、特に光免疫療法を中心とした治療選択肢について詳しく解説します。
代替医療とは
代替医療とは、標準的な西洋医学(手術、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、免疫療法など)に代わる、またはそれらを補完する治療法を指します。
代替医療には、科学的エビデンスが確立されていないものから、臨床試験で効果が検証されつつあるものまで幅広く含まれます。
目的は、がんの進行抑制、症状の緩和、QOLの向上、免疫力の強化などです。
特にステージⅣの子宮体がんでは、標準治療の副作用が強い場合や効果が限定的な場合に、代替医療が注目されます。
代替医療の例には、光免疫療法、漢方、サプリメント、鍼灸、食事療法、心理療法などがありますが、今回は特に光免疫療法に焦点を当てて解説します。
ステージⅣ子宮体がんの特徴と原因
ステージⅣの子宮体がんは、TNM分類でM1(遠隔転移)に分類され、肺、肝臓、骨、腹膜、遠隔リンパ節への転移が一般的です。
子宮体がんは子宮内膜(子宮の内側)に発生し、進行すると子宮壁を越えて骨盤内臓器(膀胱、直腸)や腹膜、遠隔臓器に広がります。
以下のような症状が現れます。
●局所症状:異常子宮出血(不正出血、過多月経)、骨盤痛、腹部膨満、排尿・排便障害。
●全身症状:体重減少、食欲不振、倦怠感、発熱、貧血、栄養不良。
●転移関連症状:肺転移による呼吸困難や咳、肝転移による肝機能障害や黄疸、骨転移による骨痛や病的骨折、腹膜転移による腹水や腸閉塞、脳転移による頭痛や神経症状、リンパ節転移による浮腫。
発症の原因としては以下が挙げられます。
●ホルモン異常:エストロゲン過多(無排卵、ホルモン補充療法、閉経遅延)が子宮内膜を過剰に刺激し、がん化を促進。
●肥満:脂肪組織でのエストロゲン産生がリスクを高める。肥満患者は発症リスクが2-4倍高い。
●糖尿病:インスリン抵抗性がエストロゲン代謝に影響し、がん化を促進。
●遺伝的要因:リンチ症候群(遺伝性非ポリポーシス大腸がん:HNPCC)やPTEN、TP53、PIK3CA遺伝子変異が関与。家族性がんのリスクが高い。
●生活習慣:喫煙、過度な飲酒、高脂肪食が関与する可能性。
●その他の要因:高齢(特に閉経後)、初産なし、子宮内膜増殖症、子宮内膜ポリープ、定期検診の未受診。
標準治療の概要
ステージⅣの子宮体がんに対する標準治療は、がんの進行抑制、症状緩和、QOL維持を目的とします。
以下に主な治療法の概要を説明します。
●手術:ステージⅣでは遠隔転移により根治手術が困難な場合が多い。ただし、症状緩和のための子宮摘出や腫瘍減量手術が検討される場合がある。
●化学療法:カルボプラチン+パクリタキセルが標準治療。ドキソルビシンやシスプラチンも使用されるが、効果は限定的で副作用が強い。
●ホルモン療法:プロゲステロン剤(メドロキシプロゲステロン、メゲストロール)がエストロゲン依存性がんに有効な場合がある。
●分子標的薬:レンバチニブ(VEGFR阻害剤)やエベロリムス(mTOR阻害剤)が一部の症例で使用。MSI-H/dMMR症例では免疫療法との併用も検討。
●免疫チェックポイント阻害剤:ペンブロリズマブ(PD-1阻害剤)がMSI-H(マイクロサテライト不安定性高値)またはdMMR(ミスマッチ修復欠損)の症例に有効。ドスタリマブも一部で使用。
●放射線療法:強度変調放射線療法(IMRT)や定位放射線療法(SBRT)が骨転移や骨盤内症状の緩和に使用されるが、限定的。
●緩和ケア:骨盤痛、腹水、出血、栄養不良、精神的ストレスの管理に重点。鎮痛剤、輸血、栄養サポート、心理的ケアでQOLを向上。
代替医療:光免疫療法
標準治療は効果的である一方、副作用が強く、ステージⅣの子宮体がんでは治療効果が限定的な場合があります。
そこで、代替医療として注目されるのが光免疫療法です。
この治療法は、科学的エビデンスが蓄積されつつあり、特にステージⅣの子宮体がんにおける新たな治療の可能性として期待されています。
光免疫療法とは
光免疫療法は、光感受性物質(薬剤)を投与し、特定の波長のレーザー光をがん細胞に照射することで、がん細胞を選択的に破壊する治療法です。
この治療法は、正常細胞へのダメージを最小限に抑えつつ、がん細胞を効果的に攻撃する点で優れており、ステージⅣの子宮体がんにおける局所再発、肺転移、腹膜転移、リンパ節転移などに適用可能な場合があります。
子宮体がんでは、内視鏡や体表面からのレーザー照射が可能な部位(例:腹膜転移や局所再発)に適応が広がっています。
光免疫療法の仕組み
1.標的薬剤の投与:光感受性を持つ薬剤を点滴で投与。EPR効果(増強された透過性・滞留効果)により、薬剤ががん細胞に集中的に集積。
2.光照射:近赤外線レーザーを体表面などに照射。薬剤が集積したがん細胞で活性酸素が発生し、がん細胞を破壊。
3.免疫活性化:破壊されたがん細胞が免疫系を刺激し、全身的な抗腫瘍免疫応答を誘発する可能性。
光免疫療法の利点
●高い選択性:正常な子宮組織や周辺臓器への影響が少なく、副作用が軽減される。
●適応範囲:局所再発、肺転移、腹膜転移、リンパ節転移などに有効な可能性。
●QOLの向上:化学療法や放射線療法に比べ、全身状態への影響が少なく、高齢者や体力の低下した患者様にも適応可能。
●免疫効果:遠隔転移に対する追加的な抗腫瘍効果が期待される。
●標準治療との併用:免疫チェックポイント阻害剤(ペンブロリズマブなど)や分子標的薬と組み合わせることで、相乗効果が期待できる。
当院の光免疫療法に関する詳細な情報は、以下よりご確認いただけます。
その他の代替医療
光免疫療法以外にも、ステージⅣ子宮体がんに対して以下の代替医療が検討される場合があります。
これらは科学的エビデンスの程度が異なり、標準治療を補完する形で使用されることが多いです。
●漢方療法:当帰芍薬散や桂枝茯苓丸など、倦怠感の軽減やホルモン症状の緩和を目的に使用。科学的エビデンスは限定的だが、QOL向上に寄与する場合がある。
●サプリメント・食事療法:ビタミンD、クルクミン、セレン、オメガ3脂肪酸などが抗炎症や免疫強化を目的に研究されている。ただし、肝機能障害や栄養状態に応じた摂取方法に注意が必要。
●鍼灸:骨盤痛、化学療法による副作用(悪心・嘔吐)の緩和に役立つ可能性。ストレス軽減やQOL向上に寄与するが、がん進行抑制の効果は未確立。
●心理療法・マインドフルネス:がん患者の精神的ストレスや不安を軽減し、QOLを向上させる。骨盤痛や転移による心理的負担を軽減するカウンセリングが有用。
●臨床試験における代替医療:がんワクチン、CAR-T細胞療法、オンコリティックウイルス療法などが臨床試験で検討中。これらは免疫療法の枠組みに近く、将来的に標準治療に組み込まれる可能性がある。
まとめ
子宮体がんステージⅣは、遠隔転移を伴う進行性の疾患であり、ホルモン異常、肥満、糖尿病、遺伝的要因などが発症に関与します。
標準治療(手術、化学療法、ホルモン療法、分子標的薬、免疫療法、放射線療法、緩和ケア)は有効ですが、副作用や効果の限界から代替医療も注目されています。
特に光免疫療法は、選択性の高さと副作用の少なさから、ステージⅣの子宮体がん患者様のQOLを重視する有望な選択肢といえます。
この治療法は、局所再発、肺転移、腹膜転移、リンパ節転移に対して有効であり、標準治療との併用で相乗効果が期待できる可能性があります。
代替医療の選択には、科学的根拠やリスクの評価が重要です。
当院の光免疫療法の適用可否については、お気軽にご相談ください。

【当該記事監修者】院長 小林賢次
がん治療をご検討されている、患者様またその近親者の方々へがん情報を掲載しております。ご参考頂けますと幸いです。