潜在性乳がんとは
がんの中でも最初の発生場所である原発部位が分からないがんが存在し、それを原発不明がんと呼びます。
腋窩リンパ節への転移が認められるが、乳房内に異常が認められない原発不明がんのことを潜在性乳がんといいます。
潜在性乳がんは、視診・触診、マンモグラフィー、超音波検査などを行っても乳房内に原発巣を見つけることが出来ないこともあります。
全乳がんの中でも0.1~0.2%ほどの発生率といわれており、非常に稀ながんとなります。
原発巣が不明な理由
潜在性乳がん(原発不明がん)について、なぜ原発巣が見つからないのかは、以下のようなことが考えられています。
①がんが非常に小さな段階で転移をし、その後原発巣が自然に消滅
②原発巣が検査で見つけにくい場所にある
③広範囲にがんが拡がっていて、原発巣の発見が困難
原発巣が不明な場合でも、転移先や原発巣があるであろう部位への治療が必要となります。
診断方法
通常の乳がんの診断と同様に、視診・触診、マンモグラフィー、超音波検査、MRIなどが行われます。
潜在性乳がんは、原発巣の発見が困難な乳がんですが、MRIの精度が向上しているため、最近では微小ながん細胞でも発見しやすくなっています。
確定診断のためには、腋窩リンパ節の生検(組織診)を行います。
潜在性乳がんの治療
腋窩リンパ節転移によって見つかった潜在性乳がんについては、通常の乳がんと同様の治療を行うことが前提となります。
乳房に対しては、手術(乳房温存術または乳房切除術)を行うことが一般的ですが、原発巣が画像診断によって認められない場合などは、放射線療法を行うことも検討されます。
腋窩リンパ節に対しては、転移を確認できるリンパ節を含めた切除を行います。これを腋窩リンパ節郭清と呼びます。
再発リスクや他の臓器への遠隔転移のリスクがある場合には、腋窩リンパ節郭清後に薬物療法(全身療法)を行うこともあります。
潜在性乳がんに対する乳房全切除の有効性
潜在性乳がんが見つかった場合、乳房の手術(全切除)を行うことが一般的ですが、必ず予後が改善される訳ではありません。
アメリカのがん登録データベース(NCD)を用いた研究では、①腋窩リンパ節郭清のみ、②腋窩リンパ節郭清+放射線療法、③腋窩リンパ節郭清+乳房全切除±放射線療法の3パターンにおいて予後を検討しています。
その結果、8年生存率においては、①65%、②85%、③73%となっており、腋窩リンパ節郭清+放射線療法が最も予後を改善するとなっています。
もちろん、全ての潜在性乳がんに対して、乳房非切除の方が予後が改善される訳ではありませんが、乳房の全切除を必ず行う必要はありません。
光免疫療法
光免疫療法は、特定の薬剤と波長の光を使用して、選択的にがん細胞を破壊する方法です。
この方法では、薬剤ががん細胞に集積し、その後に光を照射してがん細胞を破壊します。
以下より当院の光免疫療法の詳細をご確認頂けます。
治療の決定
潜在性乳がんに対する治療の選択は、原発巣が発見されているかなどの病状と、患者様の希望も考慮に入れて検討されます。
患者様と医療チームが協力して、最適な治療計画を立てることが重要です。
また、潜在性乳がんの治療前後でも、定期的なフォローアップや健康状態のモニタリングが必要です。
【当該記事監修者】院長 小林賢次
がん治療をご検討されている、患者様またその近親者の方々へがん情報を掲載しております。ご参考頂けますと幸いです。