咽頭がんステージⅣにおける代替医療について
日本では、咽頭がんは頭頸部がんの一部として比較的頻度の高い疾患で、上咽頭がんは年間約750人、中咽頭がんは年間約2,300人、下咽頭がんは年間約2,000人が新たに咽頭がんと診断されています。。
咽頭がんステージⅣ(末期がん)は、がんが咽頭を超えて肺、肝臓、骨、リンパ節などの遠隔部位に転移した進行性の状態を指します。
この段階では、嚥下困難、喉の痛み、声のかすれ、呼吸困難、首の腫れ、耳痛、体重減少、倦怠感などが顕著で、治療はがんの進行抑制、症状の緩和、QOL(生活の質)の向上を目指します。
咽頭がんの主な原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染、喫煙、飲酒、遺伝的要因、加齢などです。
当ページでは、咽頭がんステージⅣの特徴、標準治療の概要、そして代替医療、特に光免疫療法を中心とした治療選択肢について詳しく解説します。
代替医療とは
代替医療とは、標準的な西洋医学(手術、化学療法、放射線療法、分子標的薬、免疫療法など)に代わる、またはそれらを補完する治療法を指します。
代替医療には、科学的エビデンスが確立されていないものから、臨床試験で効果が検証されつつあるものまで幅広く含まれます。
目的は、がんの進行抑制、症状の緩和、QOLの向上、免疫力の強化などが挙げられます。
特にステージⅣの咽頭がんでは、標準治療の副作用が強い場合や効果が限定的な場合に、代替医療が注目されます。
代替医療の例には、光免疫療法、漢方、サプリメント、鍼灸、食事療法、心理療法などがありますが、今回は特に光免疫療法に焦点を当てて解説します。
ステージⅣ咽頭がんの特徴と原因
ステージⅣの咽頭がんは、TNM分類でM1(遠隔転移)に分類され、肺、肝臓、骨、遠隔リンパ節への転移が一般的です。
咽頭がんは、咽頭(上咽頭、中咽頭、下咽頭)の粘膜から発生し、進行すると咽頭壁を越えて周辺組織(喉頭、食道、頸部リンパ節)に浸潤したり、遠隔転移を起こしたりします。
咽頭がんとは:頭頸部がんの一部
咽頭がんは、頭頸部がんの一種であり、咽頭(鼻腔から食道・喉頭までの領域)の粘膜に発生する悪性腫瘍を指します。
咽頭は上咽頭(鼻咽頭)、中咽頭(口蓋扁桃や舌根)、下咽頭(喉頭の入り口付近)に分けられ、それぞれ異なる特徴を持ちます。
咽頭がんは、上咽頭がん(全体の約10-15%)、中咽頭がん(約50-60%)、下咽頭がん(約30-35%)に分類され、咽頭がんは頭頸部がん全体の約20-25%を占めます。
特に中咽頭がんはHPV関連で増加傾向にあり、発声、嚥下、呼吸の機能障害のリスクが高いです。
咽頭がんは早期に耳痛や嚥下困難などの症状が現れにくい場合があり、発見が遅れることが多いですが、ステージⅣでは転移パターン(例:肺転移や頸部リンパ節転移が頻繁)や治療戦略が異なります。
そして、以下のような症状が現れます。
●局所症状:嚥下困難、喉の痛み、声のかすれ、耳痛、首の腫れ、咳、血痰、鼻閉(上咽頭がん)。
●全身症状:体重減少、食欲不振、倦怠感、発熱、貧血、栄養不良。
●転移関連症状:肺転移による呼吸困難や咳、骨転移による骨痛や病的骨折、肝転移による肝機能障害や黄疸、リンパ節転移による頸部浮腫、脳転移による頭痛や神経症状。
発症の原因としては以下が挙げられます。
●遺伝的要因:p53やEGFR遺伝子変異が関与。家族性がんのリスクが一部で報告。
●感染症:ヒトパピローマウイルス(HPV、特に中咽頭がん)、エプスタイン・バールウイルス(EBV、特に上咽頭がん)ががん化を促進。
●生活習慣:喫煙、過度な飲酒が主要なリスク因子。喫煙者は非喫煙者の15-30倍のリスク。
●加齢・性別:50-70代男性に多く、男性ホルモンや加齢による粘膜変化が関与。
●化学物質・環境因子:アスベスト、木材粉塵、特定の化学物質への曝露がリスクを高める。
●その他の要因:高齢、慢性咽頭炎、定期検診の未受診。
標準治療の概要
ステージⅣの咽頭がんに対する標準治療は、がんの進行抑制、症状緩和、QOL維持を目的とします。
以下に主な治療法の概要を説明します。
●手術:ステージⅣでは遠隔転移により根治手術が困難な場合が多い。ただし、症状緩和のための咽頭部分切除や頸部リンパ節郭清、気道確保のための気管切開が検討される。咽頭がんでは、咽頭温存手術や全摘術(発声・嚥下機能喪失の可能性)が局所制御のために行われる場合もある。
●化学療法:シスプラチン、5-FU、ドセタキセルが標準。TPF療法(ドセタキセル+シスプラチン+5-FU)が使用されるが、副作用(吐き気、脱毛、骨髄抑制)が強い。
●分子標的薬:セツキシマブ(EGFR阻害剤)がRAS野生型の場合に有効。ベバシズマブ(VEGF阻害剤)は転移抑制に使用。
●免疫チェックポイント阻害剤:ニボリズマブやペンブロリズマブ(PD-1阻害剤)がPD-L1陽性またはMSI-H(マイクロサテライト不安定性高値)の症例に有効。
●放射線療法:強度変調放射線療法(IMRT)や定位放射線療法(SBRT)が骨転移や局所症状の緩和に使用される。咽頭がんでは、化学放射線療法が機能温存の第一選択。
●緩和ケア:嚥下困難、呼吸困難、喉の痛み、栄養不良、精神的ストレスの管理に重点。鎮痛剤、栄養サポート(経鼻胃管やPEG)、心理的ケア、発声訓練でQOLを向上。
代替医療:光免疫療法
標準治療は効果的である一方、副作用が強く、ステージⅣの咽頭がんでは治療効果が限定的な場合があります。
そこで、代替医療として注目されるのが光免疫療法です。
この治療法は、科学的エビデンスが蓄積されつつあり、特にステージⅣの咽頭がんにおける新たな治療の可能性として期待されています。
光免疫療法とは
光免疫療法は、光感受性物質(薬剤)を投与し、特定の波長のレーザー光をがん細胞に照射することで、がん細胞を選択的に破壊する治療法です。
この治療法は、正常細胞へのダメージを最小限に抑えつつ、がん細胞を効果的に攻撃する点で優れており、ステージⅣの咽頭がんにおける局所再発、肺転移、骨転移、リンパ節転移などに適用可能な場合があります。
咽頭がんでは、内視鏡や体表面からのレーザー照射が可能な部位(例:中咽頭や下咽頭の局所再発、頸部リンパ節転移)に適応が広がっています。
光免疫療法の仕組み
1.標的薬剤の投与:光感受性を持つ薬を投与。EGFR(上皮成長因子受容体)過剰発現する頭頸部がん細胞に集中的に集積。
2.光照射:近赤外線レーザーを体表面に照射。薬剤が集積したがん細胞で活性酸素が発生し、がん細胞を破壊。
3.免疫活性化:破壊されたがん細胞が免疫系を刺激し、全身的な抗腫瘍免疫応答を誘発する可能性。
光免疫療法の利点
●高い選択性:正常な咽頭組織や周辺臓器(食道、喉頭)への影響が少なく、副作用が軽減される。
●適応範囲:局所再発、肺転移、骨転移、リンパ節転移などに有効な可能性。
●QOLの向上:化学療法や放射線療法に比べ、嚥下障害や発声障害への影響が少なく、高齢者や体力の低下した患者様にも適応可能。
●免疫効果:遠隔転移に対する追加的な抗腫瘍効果が期待される。
●標準治療との併用:免疫チェックポイント阻害剤(ニボリズマブなど)や分子標的薬(セツキシマブ)と組み合わせることで、相乗効果が期待できる。
当院の光免疫療法に関する詳細な情報は、以下よりご確認いただけます。
その他の代替医療
光免疫療法以外にも、ステージⅣ咽頭がんに対して以下の代替医療が検討される場合があります。
これらは科学的エビデンスの程度が異なり、標準治療を補完する形で使用されることが多いです。
●漢方療法:十全大補湯や補中益気湯など、倦怠感の軽減や消化器症状の緩和を目的に使用。科学的エビデンスは限定的だが、食欲不振やQOL向上に寄与する場合がある。
●サプリメント・食事療法:ビタミンD、クルクミン、セレン、オメガ3脂肪酸などが抗炎症や免疫強化を目的に研究されている。ただし、嚥下困難や栄養不良がある場合、経管栄養やサプリメントの形態に注意が必要。
●鍼灸:喉の痛み、耳痛、化学療法による副作用(悪心・嘔吐)の緩和に役立つ可能性。ストレス軽減やQOL向上に寄与するが、がん進行抑制の効果は未確立。
●心理療法・マインドフルネス:がん患者様の精神的ストレスや不安を軽減し、QOLを向上させる。嚥下困難や呼吸困難による心理的負担を軽減するカウンセリングが有用。
●臨床試験における代替医療:がんワクチン、CAR-T細胞療法、オンコリティックウイルス療法などが臨床試験で検討中。これらは免疫療法の枠組みに近く、将来的に標準治療に組み込まれる可能性がある。
まとめ
咽頭がんステージⅣは、遠隔転移を伴う進行性の疾患であり、HPV感染、EBV感染、喫煙、飲酒、加齢などが発症に関与します。
咽頭がんは頭頸部がんの一部であり、中咽頭がんが主流で、嚥下障害や呼吸障害の管理が重要です。
標準治療(手術、化学療法、分子標的薬、免疫療法、放射線療法、緩和ケア)は有効ですが、副作用や効果の限界から代替医療も注目されています。
特に光免疫療法は、選択性の高さと副作用の少なさから、ステージⅣの咽頭がん患者様のQOLを重視する有望な選択肢といえます。
この治療法は、局所再発、肺転移、骨転移、リンパ節転移に対して有効であり、標準治療との併用で相乗効果が期待できる可能性があります。
代替医療の選択には、科学的根拠やリスクの評価が重要です。
当院の光免疫療法の適用可否については、お気軽にご相談ください。

【当該記事監修者】院長 小林賢次
がん治療をご検討されている、患者様またその近親者の方々へがん情報を掲載しております。ご参考頂けますと幸いです。