心臓のがんとは
普段生活している中で、『癌(がん)』という単語はメディアのどこかで触れる単語だと思います。胃がんや肺がんは、比較的聞き慣れていると思いますが、心臓がんという言葉はあまり耳にしないと思います。
実は、心臓にも腫瘍は発生します。
心臓には粘液腫という良性の腫瘍の発生することが特徴的です。
ただし、心臓に腫瘍が発生すること自体が極稀なケース(0.1%未満)であり、しかも約7割は良性腫瘍なので、あまり取り上げられる事がありません。
つまり、悪性になる確率の低さは砂漠から特定の砂つぶをみつけるようなものなのです。
ただし、良性だから安心というわけではありません。
その例として、心臓内粘液腫が挙げられます。心臓内粘液腫は心臓腫瘤の中で最も多く、粘液状やゼリー状の柔らかい腫瘤が心臓の中に発生し次第に大きくなる病気です。
がんのように悪性ではなく良性ですが、心臓の中にあって、心機能を悪化させたり、腫瘤の一部がとび脳梗塞などを引き起こす恐ろしい病気で、手術で切除する必要のある病気です。また心臓がんについて原因は不明とされています。
なぜ心臓がんは少ないのか
前提として他のページで話してきた細胞がんは、エラーをもった細胞が分裂し、増殖する事で力を有していきます。
通常の細胞は、DNAのオーダーに従って増殖をストップするタイミングが記憶されています。
しかし、ガン細胞はその命令を無視して、勝手に増殖を続けます。ただ、心臓だけは、人間が胎児の段階で分裂を終えます。
(頻繁には起こりませんが)言い換えればがんは胎児の体内での発達が起こりうる病気です。
ところが、誕生してからは心臓の細胞は分裂しなくなります。
子宮にいる間に発達しかけたがん細胞も、このタイミングで成長がストップします。
これは、心臓の大部分で筋細胞でできているためです。筋細胞は身体と比例して発達しますが、増殖方法が他の器官と異なります。
ここからいくつか説を紹介させていただきます。
心臓は主に筋細胞でできている
心臓は横紋筋という特殊な筋肉とその間にある結合組織や血管から構成されています。
分化が進んだ横紋筋では細胞分裂は生じません。高度に分化した心筋細胞から形成される心臓では、細胞の異常増殖の病気である肉腫や癌を生じないという説です。
つまり、高度に分化した心筋細胞から形成される心臓は、細胞の異常増殖の病気であるがんや「肉腫」を生じないというものです。
がん細胞は40℃で死滅
マクロファージと言われる白血球の1種胞は体温が38.5℃まで上昇する事で活性化し、1℃上毎に免疫力は数倍化すると言われています。
その反面、がん細胞は35℃前後で最も増加しますが、39℃以上になると増殖しなくなり、多くのがん細胞は42℃を超えると死滅すると言われています。
進行がん療法に、ハイパーサーミアと言われる温熱療法が併用されるのは、高温にがん細胞は脆弱という性質を利用したものです。
がん細胞は乳酸の影響で酸性に傾きpHが低い事により、熱に脆弱と言われています。
つまり、最も体温が高い状態が心臓であり、その温度は約40℃あり、この心臓の熱に負けて、腫瘍細胞は消滅してしまうと考えられます。
心臓ホルモンにがん転移予防効果がある
国立循環器病研究センターペプチド創薬研究室長の野尻崇氏らの研究グループでは、心臓により分泌するホルモンが血管を保護することで、多岐に渡るがん転移に対する抑制・予防効果が認められたと発表しています。
また心房から分泌される心房性ナトリウム尿ペプチドを投与したマウスの肺転移が対照群より有意に低減した他、血管内皮細胞に接着するがん細胞の数を抑制出来るメカニズムが認められたそうです。
同センターは、肺癌手術が対象の多施設共同試験を予定し、癌治療の新たな確立に期待を寄せています。
つまりANPを筆頭とした「臓内分泌因子が心臓自身の腫瘍発生も抑制している」のではという考えです。
がん腫と肉腫のちがいとは
心臓に生成する悪性腫瘍とは厳密には癌ではなく肉腫と呼ばれるものです。
悪性腫瘍一般には、皮膚や粘膜等の体表や器官の内腔の表面を覆っている上皮性組織から発生する癌腫と、血管や筋肉、骨髄等の非上皮性組織に起源を持つ肉腫に分類されます。
心筋はよく聞く横紋筋という横紋を無数に有する筋繊維から構成されているので、悪性であってもがん腫ではなく一般的には横紋筋肉種と呼ばれています。
しかし、一般に「がん」のケースでは、がん腫に加えて肉腫や白血病なども広く含まれています。
癌腫は『○○(臓器名)がん』というように命名されています。偏平上皮がん、組織学的には腺がん等に分類され、肝細胞がんであるヘパトーマ、腎細胞がんであるグラウィッツ腫瘍など特定の名称が付けれるケースもあります。
一方、肉腫にはリンパ肉腫、血管肉腫または骨肉腫等が存在します。
多くの肉腫は早く成長し、中高年層に多く見受けられるがん腫と比較すると若年者に発生するものが多く、また周囲組織の破壊性ではがん腫以上に悪性度の高いものも存在します。
肉腫の転移は大半が血行によって行われ、がん腫のようにリンパを介して行われる事は滅多にありません。
心臓がんの症状
・息苦しさを感じる
腫瘤が心臓の中を占めて心機能を悪化させることで生じる心不全症状によって起こります。
・脳梗塞
ゼリー状の腫瘤が拍動する心臓の中で一部が外れてしまい体内の血管に詰まることで起こります。
・発熱
非常にめずらしいケースですが、腫瘤そのものからでる発熱物質によるケースがあり、腫瘤に菌が接触し、感染する場ことで起こります。
【当該記事監修者】院長 小林賢次
がん治療をご検討されている、患者様またその近親者の方々へがん情報を掲載しております。ご参考頂けますと幸いです。