直腸がんステージⅣの詳細な解説と治療法
直腸がんステージⅣとは
直腸がんステージⅣは、直腸がんが最も進行した段階であり、TNM分類（腫瘍、リンパ節、転移）に基づいて遠隔転移が確認された状態を指します。
具体的には、がん細胞が直腸の壁を超えて隣接する組織や臓器に浸潤し、さらに肝臓、肺、骨、脳、腹膜などの遠隔臓器に転移していることが特徴です。
転移先としては、肝臓が最も一般的（約50～60%）で、次に肺（20～30%）、骨、脳の順番となります。
転移が起こると、各臓器の機能障害を引き起こす可能性があり、肝臓転移では肝機能低下や黄疸、肺転移では呼吸困難や咳、骨転移では骨痛や病的骨折が現れることがあります。
ステージⅣはさらに細分化され、M1a（単一臓器への転移）とM1b（複数臓器への転移または腹膜転移）に分類されます。
この段階まで進行すると、治療による根治が困難となり、延命とQOL（生活の質）維持が主な目的となります。
直腸がんステージⅣの症状と診断
直腸がんステージⅣの症状は、原発巣と転移部位の両方に由来します。
原発巣による症状には、腹痛、便秘、下痢、血便、便の細化、排便時の違和感、体重減少、倦怠感などが挙げられます。
転移に伴う症状としては、肝臓転移による黄疸や腹部膨満、肺転移による息切れや持続的咳、骨転移による持続的骨痛、脳転移による頭痛や神経障害が挙げられます。
これらの症状は、進行度や転移部位によって異なり、全身状態の悪化（悪液質）も進行します。
診断には、まず大腸内視鏡検査で原発巣を確認し、生検で組織型を特定します。
その後、CT、MRI、PET-CTなどの画像診断で転移の範囲や大きさを評価します。
また、血液検査で腫瘍マーカー（CEAやCA19-9）の値を測定し、がんの進行度や治療効果のモニタリングに活用します。
さらに、遺伝子変異の検査を行い、治療方針を決定します。
治療方法
直腸がんステージⅣの治療は、がんの広がりと患者の状態に応じて計画され、根治が難しいため、生存期間の延長とQOL（生活の質）向上を目指します。
化学療法は、がん細胞の増殖を抑え、進行を遅らせることを目的とします。
分子標的治療は、がんの特定の特性を攻撃し、腫瘍の成長を制御することを目指します。
免疫療法は、免疫力を高めてがんを抑え込む長期的な効果を追求します。
放射線療法は、転移による痛みや直腸の閉塞を緩和することを目的とします。
手術は、限定的に適用され、転移巣の除去や症状改善を図ります。
支持療法・緩和ケアは、痛みの軽減や全身状態の維持を目的とし、早期から導入されます。
直腸がんステージⅣにおける課題や限界
直腸がんステージⅣの治療は生存期間の延長とQOL向上を目指しますが、課題や限界も存在します。
化学療法は、がんの進行を遅らせますが、根治が困難であり、副作用による体力低下が患者様を苦しめることがあります。
分子標的治療は、すべての患者様に効果があるわけではなく、時間が経つと耐性ができて効果が薄れる場合があります。
免疫療法は、長期的な効果を期待できますが、適応する患者様が限られ、免疫反応による副作用も懸念されます。
放射線療法は症状を緩和しますが、全身の転移には対応できず、効果が局所に留まります。
手術は、症状改善に役立ちますが、広範な転移では適用が難しく、体への負担も大きいです。
支持療法・緩和ケアは、QOLを維持しますが、がんの進行を止めることはできません。
そのため、全体としてステージⅣでは転移の制御が困難で、治療効果も限定的となることが多く、患者の全身状態に大きく依存する点が課題といえます。
光免疫療法について
光免疫療法は、光感受性薬剤を投与し、がん細胞に集積させた後、近赤外線などの特定波長の光を照射してがん細胞を選択的に破壊する治療法です。
この方法は、薬剤ががん細胞に特異的に結合するため、正常細胞へのダメージが少なく、副作用が軽減されるという特徴があります。
直腸がんステージⅣでは、局所病巣や転移巣への適用が検討されており、化学療法や免疫療法などの標準治療と併用することで相乗効果が期待されます。
また、光免疫療法には、ステージに影響を受け難い、ほぼ全身のがんに適用できるといった利点もあります。
以下より当院の光免疫療法の詳細をご確認頂けます。
まとめ
直腸がんステージⅣは、遠隔転移を伴う進行がんであり、予後が厳しく、5年生存率は約15～20%となります。
しかし、化学療法、分子標的治療、免疫療法の進歩により、生存期間の延長とQOL向上が可能となっています。
そして、光免疫療法という新たな治療法も選択肢を広げており、個別化治療が重要です。
早期発見が予後を大きく左右するため、40歳以上の方や家族歴のある方は、定期的な大腸内視鏡検査を受けることを強くお勧めします。
現在、直腸がんステージⅣの治療を受けられている患者様で、他の治療法も検討されている場合には、当院までお気軽にご相談ください。
【当該記事監修者】院長 小林賢次
がん治療をご検討されている、患者様またその近親者の方々へがん情報を掲載しております。ご参考頂けますと幸いです。
