乳がんの化学療法とは
化学療法とは、がん細胞の成長を抑制または破壊するために薬剤(抗がん剤)を使用する治療法です。
抗がん剤は、乳がん細胞を標的としその増殖を阻害することが可能です。
乳がんにおいて化学療法を行う主な目的は、全身に転移したがん細胞を死滅させ、転移がんの進行を抑えることです。
また、症状を緩和する効果もあるため、手術や放射線療法と組み合わせて、集学的治療の一つとしても用いられます。
化学療法の種類とメカニズム
化学療法は、乳がんのタイプによって効果に違いがあり、悪性度の高いがん、ホルモン感受性陰性の乳がん(HER2型、トリプルネガティブ)、ホルモン感受性の少ない乳がん(ルミナルB型)に対して効果的であることが分かっています。
化学療法の種類
抗がん剤には毒性があるため、一種類の抗がん剤だけ多量に使用すると強い副作用が出る可能性があります。
そのため、2~3種類の抗がん剤を組み合わせて、副作用のリスクを減らしながら、効果を高めると考えられる多剤併用療法を採用します。
効果的な抗がん剤の組み合わせは、以下のようなものが代表的です。
①アンスラサイクリン系
細菌やカビに効果のある抗生物質の化学構造を変化させ、DNAやRNAの合成を阻害してがん細胞の増殖を抑えるものです。
②タキサン系
植物由来の抗がん剤であり、細胞の運動や形の保持に関与する細胞骨格の一つである微小管に作用し、がん細胞の増殖を抑えるものです。
③アルキル化薬
遺伝子と結合し、がん細胞が分裂する過程を妨げることで、増殖を抑える働きがあります。
④トポイソメラーゼ阻害薬
DNAの合成に必要な酵素であるトポイソメラーゼⅠの働きを妨げることで、がん細胞がDNAを合成できず、がん細胞の増殖が止まります。
化学療法の適用と効果
化学療法の適用
化学療法は、乳がんの特性や進行度に応じて異なるタイミングや方法で用いられます。
①術前化学療法
患者様の状態によって手術前に化学療法を行うことがあります。
術前化学療法を行うことで腫瘍が小さくなり、乳房温存術やリンパ節転移の切除範囲の縮小が可能になるなど、手術による体への負担を軽減することが期待できます。
また、HER2陽性乳がんやトリプルネガティブ乳がんについて、術前化学療法によってがん細胞の消滅が認められた場合、予後が良好であるといわれています。
②術後化学療法
手術後に化学療法を行うことで、リンパ節転移によって全身に広がっているがん細胞、手術で切除しきれなかったがん細胞を根絶させます。
これにより、治療後の遠隔転移や乳房内での再発を予防します。
③遠隔転移に対する化学療法
遠隔転移によって、がんが全身に広がることで、痛みや倦怠感・疲労感といった症状が悪化していきます。
そのような症状に対して、化学療法を行うことで症状が緩和されます。
化学療法の副作用と管理
化学療法の副作用
化学療法には、脱毛、吐き気、疲労感などの副作用が伴うことがあります。
これらは薬剤が正常細胞にも影響を与えるために起こります。
副作用の程度は、薬剤の種類や投与量、患者様の体質によって異なります。
白血球数の減少、貧血、出血傾向などの血液学的副作用も見られることがあります。
これらの副作用は、感染症のリスクを高めたり、日常生活に影響を与える可能性があります。
副作用の管理
副作用の管理には、対症療法や生活習慣の調整が含まれます。
医療チームは、副作用を軽減し、患者様の生活の質を維持するための支援を提供します。
患者様自身の積極的な健康管理も、副作用対策には重要です。
副作用の予防や軽減のために、抗吐き気薬、骨髄刺激因子、輸血、鉄分薬などが使用されることがあります。
また、副作用の症状が現れた場合には、速やかに医療チームに相談し、適切な対応を受けることが重要です。
化学療法の動向
乳がん治療における化学療法は、継続的に進化しています。
また、手術や放射線療法といった別の治療法と組み合わせる集学的治療についても、より効果的な組み合わせが研究されています。
当院で提供している光免疫療法についても、集学的治療の一つとして適用される可能性があります。
以下より当院の光免疫療法の詳細をご確認頂けます。
【当該記事監修者】院長 小林賢次
がん治療をご検討されている、患者様またその近親者の方々へがん情報を掲載しております。ご参考頂けますと幸いです。