肺がん(ステージⅣ)とは
肺がんステージⅣは、がん細胞が原発巣である肺を超えて遠隔臓器に転移した最も進行した段階を指します。
この段階では、がんが血液やリンパを介して骨(約30~40%)、肝臓、副腎、脳、対側肺、腹膜などに拡散し、根治を目指すのが困難となります。
肺がんには、非小細胞肺がん(約85%)と小細胞肺がん(約15%)があり、非小細胞肺がんは腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんに細分化されます。
ステージⅣでは、がんの分子特性や患者の全身状態に基づき、進行抑制と症状緩和を目指した治療が中心となります。
特に、骨転移は頻度が高く、疼痛や機能障害を通じて生活の質(QOL)に大きな影響を及ぼすため、早期の管理が不可欠です。
この記事では、肺がんの骨転移の特徴や当院の光免疫療法を含めた治療選択肢を解説します。
骨転移の特徴と症状
肺がんが骨に転移すると、骨構造の破壊や異常な骨形成が進行し、重篤な合併症を引き起こします。
骨転移は脊椎、骨盤、肋骨、大腿骨に好発し、以下のような症状が現れます。
症状 | 説明 |
---|---|
骨折のリスク | がん細胞が骨吸収を促進し、骨密度が低下。脊椎や長管骨で病的骨折が発生しやすくなり、歩行困難や寝たきりのリスクを高める。 |
脊髄圧迫 | 脊椎転移が脊髄や神経根を圧迫すると、背部痛、感覚異常、四肢のしびれ・麻痺、膀胱直腸障害(尿失禁、便失禁)が発生する。 |
高カルシウム血症 | 骨破壊により血中カルシウム濃度が上昇することがある。倦怠感、口渇、食欲不振、便秘、悪心、意識障害、心不全などの症状が現れる。 |
疼痛 | 骨転移による炎症や骨膜の刺激、神経圧迫が原因で、安静時や運動時の持続的・間欠的疼痛が発生する。特に夜間や体重負荷時に増悪する傾向にある。 |
標準治療の選択肢
ステージⅣの肺がんは、根治が難しいですが、がんの種類や全身状態に応じた治療によって、生存期間の延長とQOL向上が期待されます。
骨転移の管理も含めた主な治療法は以下の通りです。
治療法 | 説明 |
---|---|
薬物療法 |
分子標的薬: EGFR変異にはオシメルチニブ、ゲフィチニブ、ALK転座にはアレクチニブ、クリゾチニブ、ROS1やBRAF変異には特定薬剤を使用します。高い奏功率と生存期間延長効果があります。 免疫チェックポイント阻害薬:PD-L1発現率が高い場合、ペムブロリズマブ(キイトルーダ)、ニボルマブ(オプジーボ)、アテゾリズマブが有効です。化学療法との併用で奏功率50%程度。 化学療法: カルボプラチン+パクリタキセル、シスプラチン+ペメトレキセド(腺がん向け)などを使用。全身状態が良好な患者に適用されます。 |
放射線療法 |
骨転移による疼痛緩和、病的骨折予防、脊髄圧迫の緊急対応を目的に外部照射をします。 脳転移や局所再発にも適用されます。 |
骨修飾薬(ビスフォスフォネート、デノスマブ) |
ゾレドロン酸(ビスホスフォネート)やデノスマブは骨吸収を抑制し、骨折、疼痛、高カルシウム血症のリスクを低減させます。 デノスマブは腎機能への影響が少なく、定期投与で骨関連事象を予防します。 |
外科的介入 |
病的骨折や脊髄圧迫のリスクが高い場合、骨固定術、脊椎安定化手術(椎体形成術、椎弓形成術)が検討されます。 限局性転移(単発肺・副腎転移)では切除が生存期間を延長する場合もあります。 |
緩和ケアの重要性
ステージⅣの肺がんでは、がん治療と並行して症状管理とQOL維持を目的とした緩和ケアが不可欠です。
骨転移や全身症状に対応し、患者と家族を総合的に支援します。
ケアの種類 | 説明 |
---|---|
痛みの管理 | WHO方式に基づき、オピオイド(モルヒネ、オキシコドン、フェンタニルパッチ)、NSAIDs、補助薬(抗うつ薬、抗痙攣薬)を段階的に使用します。 骨転移疼痛には神経ブロックや放射線も併用し、80~90%で疼痛軽減されます。 |
リハビリテーション | 骨転移による運動機能の低下を防ぐため、リハビリが推奨されることがあります。 |
栄養管理 | がん性悪液質や食欲低下に対し、少量高カロリー食、経口栄養補助食品、経腸栄養(胃瘻、経鼻チューブ)が提案されます。 |
光免疫療法について
当院の光免疫療法は、がん細胞に集まる特殊な薬剤を投与し、特定の波長の光を照射することでがん細胞を破壊する治療法です。
項目 | 説明 |
---|---|
特徴 |
がん細胞を選択的に攻撃: 正常細胞への影響が少ないため、副作用が軽減される可能性があります。 局所的な治療: 肺がんの転移部位に直接アプローチしやすい治療法です。 他の治療との併用が可能: 化学療法や放射線療法と組み合わせることで、より治療効果を高めることが期待されます。 |
対象となる患者様 |
適用はがんの抗原発現、全身状態、転移部位で決定されます。 骨転移による疼痛や機能障害が強い患者様、標準治療の副作用が耐え難い患者様、進行抑制を希望する患者様に検討されます。 |
期待される効果と限界 |
短期間で効果を発揮する可能性: 光照射によって速やかにがん細胞を破壊できると考えられています。 骨転移への適用: 転移部位に直接光を届ける必要があるため、適用範囲は限定的ですが、一部のケースでは利用可能とされています。 |
まとめ
肺がん(ステージⅣ)で骨転移がある場合、疼痛、骨折リスク、脊髄圧迫、高カルシウム血症の管理が治療の鍵となります。
分子標的薬、免疫療法、化学療法、放射線治療、骨修飾薬が標準治療として推奨され、緩和ケアがQOLを支えます。
当院の光免疫療法は、肺がんで骨転移が有る場合の治療選択肢として、症状緩和と腫瘍制御に新たな希望を提供します。
適用や効果は個人差があるため、専門医や緩和ケアチームとの詳細な相談が必要となります。
光免疫療法は標準治療と併用可能なため、肺がん治療を受けられている方でもお気軽に当院までご相談ください。
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【当該記事監修者】院長 小林賢次
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