肺がん(ステージⅣ)の特徴
肺がんのステージⅣは、がんが原発巣(肺)から遠隔転移を起こしている状態を指します。
遠隔転移とは、がん細胞が血流やリンパ流を介して、肺以外の臓器や組織に広がることを意味します。
転移先として頻度が高いのは、脳、骨、肝臓、副腎、遠隔リンパ節ですが、稀に腹膜播種も含まれます。
ステージⅣは進行度が最も高く、根治が困難な場合が多いですが、治療によって延命や症状の緩和が期待されます。
この記事では、肺がんステージⅣの腹膜播種の特徴や、光免疫療法を含めた治療法を解説します。
腹膜播種とは
腹膜播種は、がん細胞が腹腔内に散らばり、腹膜(腹腔内の臓器を覆う膜)に付着・増殖する状態です。
腹膜は胃、腸、肝臓などの臓器を包む薄い膜で、がん細胞がここに広がると様々な症状を引き起こします。
腹膜播種は、胃がん、卵巣がん、大腸がんなどでよく見られますが、肺がん(特に腺がんや小細胞肺がん)でも発生することがあります。
肺がんからの腹膜播種は、がん細胞が血流やリンパ流を介して腹膜に到達するか、まれに胸膜転移から腹腔内へ進展することで起こります。
肺がんにおける腹膜播種の頻度は比較的低く、全体の約1~2%と報告されています。
腹膜播種の症状
腹膜播種が進行すると、がん細胞の増殖や腹膜の炎症により、以下のような症状が現れることがあります。
これらの症状は、腹膜播種の程度や転移の範囲によって異なります。
症状 | 説明 |
---|---|
腹水の貯留 | がん細胞が腹膜を刺激し、腹腔内に異常な量の液体(腹水)が溜まる。 腹部膨満感、圧迫感、体重増加がみられることがあります。 |
腹痛 | がん細胞による腹膜の刺激や炎症、腹水による圧迫が原因で、持続的または間欠的な腹痛が生じる。 痛みの程度は進行度によって異なります。 |
食欲不振・消化不良 | 腹膜播種が消化管の動きを妨げ、食欲低下や吐き気、消化不良を引き起こします。 腹水や腸の圧迫が影響する場合もあります。 |
腸閉塞(イレウス) | がん細胞が腸管を圧迫したり、癒着を引き起こしたりすることで、腸の通過障害が生じる。 便秘、嘔吐、腹部膨満感を伴うことが多い。 |
肺がんにおける腹膜播種はまれですが、診断時にはすでに多臓器転移を伴う進行例が多く、予後が厳しい場合があります。
早期発見が難しいため、症状が出現した時点で進行していることが一般的となります。
ステージⅣ肺がんと腹膜播種の標準治療
ステージⅣ肺がんの治療は、根治が難しいため、生命予後の延長と症状の緩和(QOLの向上)を主な目的とします。
腹膜播種を伴う場合、治療効果が限定的になることがありますが、以下のような標準治療が検討されます。
治療法 | 説明 |
---|---|
化学療法(抗がん剤治療) | 非小細胞肺がんの場合、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤が使用されることがあります。 小細胞肺がんでは、プラチナ製剤+エトポシドが標準的です。 腹膜播種では、抗がん剤が腹膜内に十分に到達しにくいため、全身化学療法の効果が限られる場合があります。 腹水管理として、腹腔穿刺や利尿剤の併用も行われます。 |
放射線療法 | 脳転移や骨転移など限局した転移巣に対して、症状緩和(疼痛や神経症状の軽減)を目的に放射線療法が行われることがあります。 腹膜播種そのものに対する放射線治療の効果は限定的で、通常は適応外となります。 |
緩和ケア | ステージⅣ肺がんでは、痛み、呼吸困難、食欲不振、腹水による不快感などの症状を軽減することが重要となります。 緩和ケアは診断早期から導入され、化学療法や放射線治療と並行して行うことで、患者のQOLを向上させます。 腹水管理には、腹腔穿刺やカテーテル留置が考慮されることもあります。 |
治療選択は、患者様の全身状態、遺伝子変異の有無、併存疾患、転移の範囲に基づいて決定されます。
腹膜播種がある場合、治療反応性が低い傾向があるため、緩和ケアの比重が高まることもあります。
標準治療が難しい場合の選択肢
光免疫療法は、がん細胞に選択的に反応する光感受性物質を投与し、特定の波長の光を照射することで、がん細胞を破壊する治療法です。
この治療は副作用が少ないとされ、標準治療が適用できない患者様にとって選択肢の一つとなる可能性があります。
項目 | 説明 |
---|---|
光免疫療法の特徴 |
・標的とするがん細胞を選択的に破壊する ・正常細胞への影響が少ない ・繰り返し治療が可能 |
光免疫療法の適用 |
肺がんに対する光免疫療法は一部の医療機関で提供されており、患者様の病状や適応条件によって治療の可能性が異なります。 特に、他の治療法が困難な場合の補助的な選択肢として考えられています。 |
ステージⅣの肺がんで腹膜播種がある方の中には、標準治療が難しい場合もあります。
しかし、対処法や治療の選択肢は存在します。
当院では、患者様一人ひとりの状態に合わせた治療をご提案致します。
光免疫療法を含め、適した治療法についてお気軽にご相談ください。
以下より当院の光免疫療法に関してご確認頂けます。
まとめ
肺がん(ステージⅣ)で腹膜播種を伴う場合、がんの進行度が高く、標準治療(化学療法、放射線治療)の効果が限られることがあります。
腹水や腸閉塞などの症状管理には緩和ケアが重要な役割を果たし、早期からの導入が推奨されます。
光免疫療法は、標準治療が難しい方にとっての選択肢の一つとなり得ます。
現在、肺がんステージⅣや腹膜播種の治療を行っている方でも、お気軽にご相談ください。
よく見られてる記事一覧 |
---|
肺がん(ステージ4)の「胸水の特徴と治療の選択肢」 |
肺がん(ステージ4)の「腹水の特徴と治療の選択肢」 |
肺がん(ステージ4)の「骨転移の特徴と治療の選択肢」 |
肺がんの原因や症状そして治療法 |

【当該記事監修者】院長 小林賢次
がん治療をご検討されている、患者様またその近親者の方々へがん情報を掲載しております。ご参考頂けますと幸いです。