乳がんの罹患率が高い60代
乳がんは乳腺組織に発生するがんであり、日本人女性が罹るがんで最も多く全体の約20%を占めています。
そして、乳がんは年々増加傾向にあり、罹患者数が40年間で約10倍に増加しています。
一般的ながんは、高齢になるほど罹患率も比例して高くなりますが、日本人の乳がんは40代~60代が発症のピークとなります。
この記事では、60代における乳がんの生存率に関する情報や今後の見通しなどを解説します。
生存率に影響を与える主な要因
乳がんの生存率には、がんのステージやサブタイプ(ホルモン受容体やHER2タンパク)、個々の健康状態、年齢といった多くの要因が関係しています。
- がんのステージ: 乳がんが発見された際のステージ(病期)は生存率に大きく影響します。乳がんが早期に発見された場合、生存率は100%に近いです。
- ホルモン受容体の状態: エストロゲン受容体やプロゲステロン受容体の陽性は、ホルモン療法による治療が可能であることを意味し、一般に予後が良好です。
- HER2遺伝子の表現: HER2陽性の乳がんは、攻撃的な性質を持っていますが、標的療法の開発によって治療成績が改善されています。
- 個々の健康状態や年齢: 健康状態や他の持病の有無、年齢による体力なども乳がんの治療結果に影響を及ぼします。
乳がんの診断
近年の医療技術の進歩により、乳がんの診断はより正確に行われるようになっています。
60代の乳がんの診断においては、マンモグラフィー、超音波検査、MRIといった画像診断が一般的となります。
また、個別化医療の進展により、60代の方々に対して効果的な治療法の組み合わせが考えられます。
生存率を左右する治療選択
乳がんの治療は、手術、放射線療法、化学療法、ホルモン療法、および標的療法などを組み合わせます。
60代の方々においては、年齢や依存疾患、治療後の生活の質に配慮した治療法の組み合わせが必要となります。
また、高齢者の乳がんはホルモン受容体陽性の乳がんが多く、進行速度も遅いことが多いです。
これらの特徴を踏まえた上で、慎重に治療方針を決定します。
治療方法 | 説明 |
---|---|
手術 | 乳がんの大きさや位置に応じて、乳房温存手術や乳房切除手術が選択されます。60代では手術に耐え得る健康状態かも判断されます。 |
放射線療法 | 手術後の補助療法として、または手術が困難な場合に用いられます。体への負担を考慮して省略されることがあります。 |
化学療法 | がんの進行を抑え、再発を防ぐために使用されることがあります。副作用があるため、高齢者には低強度の治療や投与する間隔を調整することがあります。 |
ホルモン療法 | 60代はホルモン受容体陽性の乳がんが多いため、多く使用されます。手術や化学療法のリスクを避けた時の選択肢となりやすいです。 |
標的療法 | HER2陽性の乳がんなど、特定の分子標的に対して効果的な治療薬剤を使用します。 |
生存率に関する統計データ
乳がんの年代別における生存率は、今のところ明らかになっていません。
60代で特別に生存率が下がることは無いといわれているため、通常の生存率のデータと大きな違いが無いと考えて良いでしょう。
乳がんの5年相対生存率は、0期であれば100%、Ⅰ期は約95%、Ⅱ期は約90%、Ⅲ期は約77%、Ⅳ期は約38%と下がっていきます。
乳がんは早期に発見すると生存率が高いがんであり、初期段階であるⅠ期までで95%以上となります。
地域による罹患率や死亡率
カナダのカルガリー大学によって、乳がんの罹患率と死亡率について、2018年の世界44の国と地域の患者データを分析し、居住国と年齢によって傾向が異なることが発表されています。
50歳以上を閉経後と分類し、44か国は先進国、高所得国、中所得国、低所得国のいずれか所得カテゴリーに割り当てられ、日本は先進国に割り当てられました。
乳がんの罹患率は、4つの所得カテゴリーのうち先進国で最も高く、閉経前10万人当たり30.6例、閉経後10万人あたり253.6例でした。
死亡率については、閉経前は低所得国(10万人当たり8.5例)が先進国(10万人当たり3.3例)よりも高いとわかりました。閉経後は、低所得国で10万人当たり51.4例、先進国で10万人当たり52.7例でした。
日本を含む先進国で罹患率は高いが、低所得国でも罹患率増加傾向にあります。
治療後のフォローアップ
治療後の定期的なフォローアップは、再発の早期発見と治療に不可欠です。
60代の方々においても、定期的な検査と健康管理が生存率を高める重要な要素です。
生存率向上のための現代のアプローチ
現代医療では、乳がんの生存率を向上させるために、以下のようなアプローチが取られています。
アプローチ | 説明 |
---|---|
個別化医療 | 健康状態や副作用への耐性を個々に判断し、最適な組み合わせの治療法を考えます。 |
治療薬剤の開発 | 副作用が少なく、効果的な薬の開発により治療の選択肢が増えています。 |
生活習慣の改善 | 健康的な食事、適度な運動、禁煙などにより全体的な健康を維持し、生存率を向上させます。 |
今後の見通し
乳がんの研究は日々進展しており、治療法や薬剤の研究・開発がされています。
これらの進歩によって、60代の方々の乳がん生存率をさらに向上させる可能性を秘めています。
また、個別化医療のさらなる進展により、より効果的で副作用の少ない治療が可能になることが期待されます。
60代の乳がん患者様には、副作用や身体への負荷が少ない治療法が望ましいため、光免疫療法が一つの選択肢となる可能性があります。
他の治療法と組み合わせることで、より高い治療効果が期待できます。
以下より当院の光免疫療法の詳細をご確認頂けます。
【当該記事監修者】院長 小林賢次
がん治療をご検討されている、患者様またその近親者の方々へがん情報を掲載しております。ご参考頂けますと幸いです。