インドシアニングリーン(ICG)の基本的理解
インドシアニングリーン(ICG)は、医療分野における診断および治療手段として広範に使用される薬剤です。
この色素は、その独特な光学的性質により、特に血流動態の評価や手術中の蛍光ガイドとしての役割を果たします。
ICGは、臨床的には無色の粉末として提供され、使用前に溶液として調製されます。
その化学式はC43H47N2NaO6S2であり、分子量は775.96 g/molです。
ICGの分子は、中央のナトリウム原子に結合した二つのイオン性の硫酸基を持つ、対称的な構造をしています。
分子構造と光学特性
ICGの分子構造は、その光学特性を理解する上で重要です。
この分子は、特定の波長の光を吸収し、そのエネルギーを熱として放出する能力を持っています。
この性質は、光熱治療や光動力療法などの医療技術において利用され、患部を特定し治療することを可能にします。
ICGは、光を吸収した後、短い時間で蛍光を発し、これを検出することで、血管やリンパ系のマッピングが可能になります。
この蛍光は、特に近赤外領域で強く、人体の組織を透過しやすいため、非侵襲的なイメージングに適しています。
生体内挙動と代謝
ICGは、血液中のアルブミンやリポプロテインに結合し、これによって安定した状態で体内を循環します。
肝臓に到達すると、ICGは肝細胞に取り込まれ、胆汁とともに体外へ排泄されます。
この過程は、肝臓の機能を評価するための重要な指標となり、ICGクリアランステストとして知られています。
ICGの排泄速度は、肝臓の血流量と直接関連しており、肝機能障害がある場合には排泄が遅れることが知られています。
この特性を利用して、ICGは肝臓の血流量や機能の変化を検出するための有効なツールとなっています。
臨床応用の多様性
ICGの臨床応用は多岐にわたります。
血管撮影では、ICGを静脈内に投与することで、網膜や脈絡膜の血管を詳細に観察することができます。
心機能の評価においては、ICGの血中濃度の変化を追跡することで、心拍出量や心拍数を測定することが可能です。
肝機能テストでは、ICGのクリアランス速度を測定することで、肝臓の健康状態を評価します。
手術中の蛍光ガイドとしては、ICGを用いて腫瘍組織やリンパ節を可視化し、より正確な切除を助けます。
さらに、ICGは血管新生の評価や、炎症性疾患の診断においても有用な情報を提供することができます。
安全性と患者様への配慮
ICGは一般的に安全な薬剤とされていますが、稀にアレルギー反応を引き起こすことがあります。
そのため、投与前には患者様の過去の医療履歴やアレルギーの有無を詳細に確認することが重要です。
ICGの使用に際しては、特に心臓病や肝臓病の既往がある患者様には注意が必要です。
また、妊娠中や授乳中の患者様に対するICGの安全性については、まだ十分なデータが得られていないため、慎重な判断が求められます。
ICG投与後の患者様の観察は、適切な医療機関での監視のもとで行われるべきです。
以下より当院の光免疫療法の詳細をご確認頂けます。
【当該記事監修者】院長 小林賢次
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