膵臓がんステージⅣについて
膵臓がんステージⅣは、がんが膵臓を超えて周辺臓器やリンパ節、肝臓、肺、腹膜などの遠隔部位に転移した進行性の状態を指します。
この段階では、症状が顕著になり、治療はがんの進行抑制や症状の緩和、QOL(生活の質)の向上を目指すことが中心となります。
膵臓がんの原因やリスク要因には、遺伝的要素、生活習慣、慢性膵炎などが関与しており、これらが複雑に絡み合って発症に至ります。
以下に、膵臓がんステージⅣの特徴と、標準治療以外の治療選択肢として光免疫療法を主軸に詳しく解説します。
ステージⅣ膵臓がんの特徴と原因
ステージⅣの膵臓がんは、TNM分類でT4(周辺臓器への浸潤)またはN1(リンパ節転移)、M1(遠隔転移)に分類されます。
肝転移や腹膜転移が多く、腹痛、黄疸、体重減少、食欲不振、消化不良などの症状が現れることがあります。
それらの原因としては、以下の要素が関与しています。
●遺伝的要素:BRCA1、BRCA2、PALB2、ATMなどの遺伝子変異が関与し、特に家族歴がある場合、リスクが高まります。遺伝子検査によりリスク評価が可能です。
●生活習慣:喫煙、過度なアルコール摂取、肥満、高脂肪食、糖尿病などがリスクを増大させます。これらは膵臓に慢性的な炎症や酸化ストレスを引き起こし、がんの発生を促進します。
●慢性膵炎:長期間の膵臓の炎症、特にアルコール性や遺伝性の慢性膵炎は、がん発生のリスクを高めます。
標準治療について
ステージⅣの膵臓がんに対する標準治療は、がんの進行を抑え、症状を緩和し、QOLを維持することを目的としています。
主な標準治療は以下の通りです。
●化学療法:FOLFIRINOX:フルオロウラシル、レボホリナート、イリノテカン、オキサリプラチンの併用療法で、良好な全身状態(PS0-1)の患者様に適応。効果が高いが、副作用(倦怠感、吐き気、末梢神経障害など)が強い。
ゲムシタビン+ナブパクリタキセル:FOLFIRINOXに耐えられない患者様に適応。ゲムシタビン単独よりも生存期間の延長が期待される。
ゲムシタビン単剤:高齢者や全身状態が不良な患者様に使用されることが多い。副作用は比較的軽度だが、効果は限定的。
●放射線療法:ステージⅣでは主に緩和目的で使用。骨転移や局所の腫瘍による疼痛管理に役立つが、広範な転移には効果が限定的。
●緩和ケア:黄疸に対する胆管ステント留置、疼痛管理、栄養サポートなどを含む。ステージⅣでは早期から緩和ケアを併用することでQOLの向上が期待される。
標準治療以外の治療選択肢:光免疫療法
標準治療は副作用が強く、進行性の膵臓がんでは効果が限定的な場合があります。
そこで、標準治療以外の選択肢として注目されるのが光免疫療法です。
光免疫療法とは
光免疫療法は、がん細胞に特異的に結合する抗体に光感受性物質を結合させた薬剤を投与し、特定の波長の光を照射することでがん細胞を選択的に破壊する革新的な治療法です。
この治療法は、正常細胞へのダメージを最小限に抑えつつ、がん細胞を効果的に攻撃する点で優れています。
特にステージⅣの膵臓がんでは、転移巣や局所進行がんに対して適用可能な場合があります。
光免疫療法の仕組み
1.標的薬剤の投与:膵臓がん細胞表面の特定の抗原(例:CEAやMesothelin)に結合する抗体-光感受性物質複合体を静脈内投与。
2.光照射:近赤外光を用いて、薬剤が結合したがん細胞を活性化。光が当たることで活性酸素が発生し、がん細胞を破壊。
3.免疫活性化:破壊されたがん細胞が免疫系を刺激し、全身的な抗腫瘍免疫応答を誘発する可能性。
光免疫療法の利点
●高い選択性:正常組織への影響が少なく、副作用が軽減される。
●適応範囲:局所進行がんや一部の転移巣にも適用可能。
●QOLの向上:従来の化学療法や放射線療法に比べ、身体的負担が少ない。
●免疫効果:免疫系を活性化し、遠隔転移に対する追加効果が期待される。
当院の光免疫療法に関する詳細な情報は、以下ページをご覧ください。
その他の標準治療以外の選択肢
光免疫療法以外にも、ステージⅣ膵臓がんに対して以下の治療が検討される場合があります。
これらは膵臓がん特有の分子特性や進行状況に基づいて選択されます。
●免疫チェックポイント阻害剤:PD-1/PD-L1阻害剤(例:ペムブロリズマブ、ニボルマブ)は、マイクロサテライト不安定性(MSI-H)や高腫瘍変異負荷(TMB-H)の患者に有効。ただし、膵臓がんではこれらの遺伝子変異が稀(約1-3%)であり、適応は限定的。
●PARP阻害剤:BRCA1/2やPALB2変異陽性の患者様に対し、オラパニブやルカパニブが使用される。DNA修復を阻害することでがん細胞の増殖を抑える。BRCA変異は膵臓がんの約5-7%に見られる。
●分子標的療法:KRAS変異(膵臓がんの約90%に存在)を標的とした薬剤(例:ソトラシブ、KRAS G12C阻害剤)が臨床試験段階で有望視されている。また、EGFR阻害剤(例:エルロチニブ)は一部の患者様でゲムシタビンと併用されるが、効果は限定的。
●臨床試験:新たな分子標的薬、がんワクチン、遺伝子療法、CAR-T細胞療法などの臨床試験が進行中。ステージⅣの患者様にとって、臨床試験は最新治療へのアクセスを提供する重要な選択肢。
まとめ
膵臓がんステージⅣは、転移を伴う進行性の疾患であり、遺伝的要素、生活習慣、慢性膵炎がその発症に関与します。
標準治療(化学療法、放射線療法、緩和ケア)に加え、光免疫療法は選択性の高さと副作用の少なさから、QOLを重視する患者様にとって有望な選択肢といえます。
特に膵臓がん特異的抗原を標的とした光免疫療法は、ステージⅣの膵臓がんに対する新たな治療の可能性を秘めています。
また、光免疫療法は、標準治療と併用することで相乗効果も期待できる治療法となります。
早期発見と適切な治療選択が重要なため、当院の光免疫療法に関する情報は何でもお気軽にご相談ください。

【当該記事監修者】院長 小林賢次
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