卵巣がんと光免疫療法
卵巣に発生する卵巣がん
卵巣は、子宮の両側に位置する親指大の器官で、骨盤の内側にあります。
卵子の生成・排卵やホルモンの分泌を行う器官であり、卵巣がんはこの卵巣に発生した悪性腫瘍のことをいいます。
日本人女性では、卵巣がんの発症は40代から増え始め、50~60代がピークとなります。
卵巣がんの罹患者数は増加傾向にあり、年間1万2千人以上が罹患しています。
死亡率が高い卵巣がん
卵巣がんは、”サイレントキャンサー”と呼ばれ、初期は自覚症状が無いため早期発見が難しく、女性特有のがんの中で最も死亡率が高いがんです。
進行しても症状を見過ごされることがあり、発見された時にはかなり進行していることが多いです。
また、卵巣にできる悪性腫瘍には、主に10代~20代の若年女性に発生する”卵巣胚細胞腫瘍”と、40代以上の中高年女性に発生する”上皮性卵巣癌”があります。
卵巣胚細胞腫瘍の頻度はかなり低く、一般的に卵巣がんといえば”上皮性卵巣癌”を指します。
卵巣がんの原因
卵巣がんの直接的な原因は解明されていませんが、リスク因子として以下のものが挙げられます。
・排卵回数が多い(出産経験がない、初経が早い、閉経が遅い)
・遺伝的な要因
・生活習慣(肥満や食生活)
・婦人科系の病気(子宮内膜症がありチョコレート嚢胞を持っている)
・骨盤内の慢性的な炎症
欧米と比較すると、日本人の卵巣がん発生率はまだ低いですが、食生活の欧米化や出産年齢の高齢化、未婚女性の増加といったライフスタイルの変化によって、年々患者数は増加しています。
卵巣がんの症状
卵巣がんは、初期段階では自覚症状がほとんどありません。
服のウエストがきつくなる、下腹部にしこりがある、腹部に膨張感や不快感がある、食欲がないなどの症状をきっかけに受診し、卵巣がんが発見されることもあります。
また、がんが進行すると、頻尿や便秘、脚の浮腫みといた症状が出ることもあります。
さらに、腹水が溜まりお腹が大きく前に突き出てくることもあります。
卵巣がん・卵管がんは、見つかった時には進行していることが多いため、上記の症状がある場合には早めに婦人科を受診してください。
卵巣がんの治療
卵巣がん治療の基本は、手術によってできる限り病巣を少なくするということです。
主な治療法として、以下のようなものが挙げられます。
①手術
早期がんの場合、片方の卵巣と子宮を残す保存手術も可能ですが、一般的には両方の卵巣、卵管、子宮、骨盤リンパ節と傍大動脈リンパ節などを全て摘出します。
摘出した臓器によって、がんの転移の有無も確認します。
その際に、腹水や腹腔内の組織を採取し、がんの進行状況も診断します。
②化学療法
卵巣がんは、婦人科系のがんの中で最も抗がん剤治療(化学療法)の効果が高く、基本的に手術後に化学療法を行います。
また、がんが広範囲に及ぶ場合には、手術前に化学療法を行いがんを小さくしてから手術を行うこともあります。
進行状況によっては、分子標的療法を併用することもあります。
③維持療法
手術や化学療法後に、再発防止のための治療を維持療法と呼びます。
維持療法には、血管新生阻害薬やPARP(パープ)阻害薬という分子標的薬が用いられます。
④放射線療法
放射線療法は、がん細胞に放射線を当てることで死滅させる治療法です。
初めての卵巣がん治療で放射線療法は行われず、再発した場合には検討されます。
光免疫療法の基本原理
卵巣がんの治療において、光免疫療法は選択肢の一つとなり得る可能性があります。
この治療法は、卵巣がんの細胞に選択的に作用する薬剤と、特定の波長の光を使用することで、がん細胞を破壊することが期待されています。
薬剤は、がん細胞に選択的に集積する性質を持っており、光を照射することで活性化されます。
活性化された薬剤は、がん細胞を攻撃し、細胞死を引き起こします。
この治療法の大きな特徴は、正常な細胞へのダメージが少ないため、副作用が出にくい点が利点の一つです。
光免疫療法の適用には、がんの種類やステージ、患者様の全体的な健康状態などが考慮されます。
以下より当院の光免疫療法の詳細をご確認頂けます。
まとめ
卵巣がんは、自覚症状に乏しく初期段階での発見が難しいがんです。
そのため、発症が増えてくる40代からは年に1回、超音波検査などの定期検診を受けるようにしましょう。
また、卵巣がんの治療は手術と化学療法が基本となりますが、光免疫療法も治療の選択肢となる可能性があります。
標準治療と組み合わせることも可能なため、卵巣がん治療でお悩みの方は一度ご検討ください。

【当該記事監修者】院長 小林賢次
がん治療をご検討されている、患者様またその近親者の方々へがん情報を掲載しております。ご参考頂けますと幸いです。