放射線治療が適用できないがんの状態と代替策

放射線治療は、がん細胞を狙い撃ちし、周囲の正常組織への影響を抑えながら治療を行う方法として広く用いられています。しかし、すべてのがん患者に適用できるわけではなく、さまざまな理由で放射線治療が難しい場合があります。そうしたケースでは、他の治療法を検討する必要があります。本記事では、放射線治療が適用できない主なケースとそれに対する代替策について詳しく解説します。

1. 放射線治療が適用できない、または適用が難しいケース

放射線治療が困難または適用が困難の場合は大きくいってしまうと局所治療以外ということになりますが、もう少し具体的にみていきたいと思います。

適用が難しいケース 理由 具体例
① 体の広範囲に転移している場合 放射線治療は局所治療のため、全身に広がるがんには対応しきれない ・多発性の肺転移があり、複数の病変が存在する場合
・骨転移が広範囲に広がっている場合
・リンパ節や他の臓器への複数の転移がある場合
② 重要な臓器の近くにあり、放射線の影響が大きすぎる場合 生命維持に関わる臓器の近くでは、放射線の副作用リスクが高い ・脊髄の近くに腫瘍がある(神経障害のリスク)
・消化管の近くのがん(消化管障害や穿孔のリスク)
・肝臓や腎臓の機能が低下している患者
③ 放射線耐性のがんである場合 一部のがんは放射線に対する感受性が低く、効果が期待しにくい ・腎細胞がん(放射線に対する感受性が低い)
・黒色腫(免疫療法の方が効果的なことが多い)
・一部の肉腫(放射線が効きにくい)
④ 過去に放射線治療を受けていて、追加照射が難しい場合 累積線量の制限により、同じ部位に再度放射線を当てるのが難しい ・乳がんの術後照射後の局所再発
・頭頸部がんの再発
・肺がんで放射線治療後に局所再発した場合
⑤ 患者の全身状態が悪く、放射線治療の副作用に耐えられない場合 体力が低下している患者では、放射線治療の負担が大きい ・高齢者で栄養状態が悪い
・重度の心疾患・肺疾患がある
・がんの進行が進み、積極的な治療が難しい

2. 放射線治療が適用できない場合の代替策

上記のケースを踏まえた上で、放射線治療以外に以下の治療が考えられます。

放射線治療が適用できないケース 代替策
① 全身転移の場合 ・全身療法(抗がん剤・分子標的薬・免疫療法)
┗ がんの種類や遺伝子変異に応じて適切な薬を選択
・骨転移には「骨吸収抑制薬」や「放射性医薬品」
┗ 骨を強化し、転移による痛みを軽減
・疼痛緩和目的でのピンポイント放射線治療(定位放射線治療)
┗ 主要な転移部位の痛みを和らげる目的で限定的に使用
・光免疫療法
┗ 特定の転移病変に対して、がん細胞を選択的に攻撃する治療法として検討されることがある
② 重要な臓器への影響が大きい場合 ・陽子線治療・重粒子線治療(正常組織へのダメージが少ない)
┗ 通常の放射線よりもがん細胞に集中しやすく、周囲の臓器への影響を抑えられる
・外科手術(切除が可能な場合)
┗ 放射線が使えない場合は、手術が選択肢になることもある
・抗がん剤や分子標的療法を活用
┗ がんの特性に応じて、適切な全身療法を選択
・光免疫療法
┗ がん細胞に特異的に作用する光感受性物質を用いることで、周囲の正常組織への影響を抑えながら治療できる可能性がある
③ 放射線耐性のがん ・手術での切除が可能なら外科的治療
・分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬を活用
・定位放射線治療(高線量をピンポイントで当てる)
┗ 耐性があっても、局所制御目的で試みることがある
・光免疫療法
┗ 放射線耐性のがんにも適用できる可能性があり、一部のがんでは有望な治療法として検討されている
④ 再照射が難しい場合 ・手術による再切除(可能な場合は局所治療として選択)
・免疫療法や分子標的薬による治療(がん細胞の特性に応じて選択)
・陽子線や重粒子線治療(再照射が可能な場合もある)
・光免疫療法
┗ 再照射が困難な場合でも、正常組織への影響を抑えつつ局所のがん細胞を攻撃する選択肢となる可能性がある
⑤ 体力が低下している場合 ・緩和ケア(痛みのコントロールや生活の質の維持)
・低用量の抗がん剤やホルモン療法
・在宅医療やホスピスでのケア
・光免疫療法
┗ 副作用が少ない治療として、体力が低下している患者でも適応できる可能性がある

3. まとめ

状況 代替策
全身転移の場合 全身療法(抗がん剤・免疫療法)・光免疫療法
重要臓器への影響が大きい場合 陽子線治療・手術・分子標的療法・光免疫療法
放射線耐性のがん 免疫療法・分子標的薬・光免疫療法
過去に放射線を受けている場合 手術・陽子線治療・光免疫療法
体力が低下している場合 緩和ケア・低負担の治療・光免疫療法

放射線治療が適用できないケースでも、光免疫療法を含めた適切な代替策を検討することで治療の選択肢を広げることが可能です。
患者一人ひとりに合った治療法を見つけるために、主治医と相談しながら進めることが重要です。

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