肝臓がんの再発転移についての詳細解説
肝臓がんは、肝臓の細胞が異常に増殖することで発生する悪性腫瘍です。
原発性肝臓がん(主に肝細胞がん:HCC)および転移性肝臓がんに分けられ、初期段階では自覚症状が乏しいため、進行した状態で発見されることが多い疾患です。
治療後の再発(同一臓器内での再発)や転移(他の臓器への広がり)は、予後や治療の成功を大きく左右します。
特に、肝臓がんの再発転移は、治療後のフォローアップで厳密な監視が必要となります。
再発転移のメカニズム
肝臓がんの再発転移は、以下のようなメカニズムで発生します。
●残存がん細胞:手術や局所治療(ラジオ波焼灼療法:RFA、経カテーテル動脈化学塞栓療法:TACEなど)で、微小ながん細胞が完全に除去できなかった場合、残存細胞が増殖して再発する。
●血行性・リンパ性転移:がん細胞が門脈、肝静脈、リンパ管を介して他の臓器やリンパ節に移動し、増殖する。
●免疫回避:免疫システムががん細胞を十分に排除できず、微小病巣が潜伏・増殖する。
●がんの生物学的特性:高悪性度のがん(例:低分化型HCCや血管浸潤を伴う症例)は、再発転移のリスクが高い。
●肝臓の背景疾患:肝硬変や慢性肝炎(B型・C型肝炎など)が存在する場合、新たな原発性がん(多中心性発生)が発生しやすい。
再発転移しやすい部位
肝臓がんは、以下の部位に再発・転移しやすいという特徴があります。
●肝内再発:同一肝臓内での再発が最も頻度が高い(再発の60-80%)。門脈内のがん細胞拡散や多中心性発生が原因。
●肺:血行性転移の主要部位。咳、呼吸困難、胸痛などの症状が現れる場合がある。
●リンパ節:腹腔内(門脈周囲、腹膜後)や縦隔リンパ節への転移。リンパ節腫大や圧迫症状を伴うことがある。
●骨:脊椎、肋骨、骨盤などに転移し、骨痛や病的骨折を引き起こす。
●副腎:血行性転移により副腎腫瘤を形成。腹痛やホルモン異常がまれに発生。
●腹膜:腹膜播種により腹水や腹部膨満感を呈する。
●脳:稀だが、頭痛、めまい、意識障害を引き起こす。
転移部位はがんの進行度や治療歴により異なり、遠隔転移は予後を悪化させる要因となります。
再発転移のリスク要因
再発転移のリスクは、主に以下の要因に影響されます。
●腫瘍の特性:腫瘍の大きさ(5cm以上)、多発性、血管浸潤、低分化型はリスクを高める。
●肝機能:肝硬変や門脈圧亢進症がある場合、再発リスクが増加。
●治療関連:非根治的治療や不完全切除は再発を誘発しやすい。
●生活習慣:過度なアルコール摂取、肥満(非アルコール性脂肪肝疾患)、糖尿病は再発リスクを高める。
●ウイルス性肝炎:B型肝炎(HBV)やC型肝炎(HCV)の持続感染は、肝内再発や多中心性発生のリスクを増大。
●遺伝的要因:特定の遺伝子変異が再発に関与する可能性が研究中。
定期的な画像検査(CT、MRI、超音波)や腫瘍マーカーのモニタリング、健康的な生活習慣(禁酒、バランスの取れた食事、適度な運動)が再発予防に重要となります。
治療選択肢とその効果
再発転移の治療は、がんの部位、数、肝機能、患者様の全身状態を考慮して選択されます。
主な治療法は以下の通りとなります。
●手術:
・適応:肝内再発で単発かつ肝機能が保たれている場合、または切除可能な遠隔転移(例:肺転移)。
・効果:根治的切除で長期生存が期待できる(5年生存率20-40%)。
・限界:多発性再発や肝硬変進行例では適応外。
●局所療法:
・ラジオ波焼灼療法(RFA):小径(3cm以下)の肝内再発に有効。局所制御率は80-90%。
・経カテーテル動脈化学塞栓療法(TACE):多発性肝内再発に使用。腫瘍縮小や進行抑制効果。
・効果:QOLを維持しつつ、進行を遅延。
・限界:遠隔転移や血管浸潤例では効果が限定的。
●放射線療法:
・定位放射線療法(SBRT):肝内再発や骨転移、肺転移に適用。局所制御率は70-90%。
・陽子線・重粒子線:高精度な照射で正常組織への影響を軽減。臨床試験で有望。
・効果:症状緩和(骨痛など)や腫瘍縮小。
・限界:広範な転移には不向き。
●薬物療法:
・分子標的薬:ソラフェニブ、レンバチニブ、 regorafenib、カボザンチニブは進行性HCCや遠隔転移に使用。VEGFやMET経路を阻害し、無増悪生存期間(PFS)を延長。
・免疫チェックポイント阻害剤:アテゾリズマブ+ベバシズマブやニボルマブは、免疫を活性化し、20-30%の奏功率。長期寛解例も報告。
・効果:腫瘍縮小、進行抑制、症状緩和。
・副作用:高血圧、皮膚症状、免疫関連副作用(肝炎、肺炎など)。
●光免疫療法:
・概要:抗体に光感受性物質(例:IR700)を結合させ、がん細胞に選択的に結合後、近赤外光を照射して破壊する治療法。
・適応:肝臓がんでは臨床試験段階だが、局所再発や浅い転移病巣(例:リンパ節転移)に有望。頭頸部がんでは日本(アキャルックス)や米国で承認済み。
・効果:腫瘍縮小、症状緩和(圧迫症状や疼痛の軽減)。臨床試験で50%以上の奏功率。
・利点:正常細胞へのダメージが少なく、QOLを維持。他の治療との併用が可能。
●緩和ケア:
・疼痛管理(オピオイドなど)、栄養支援、心理的サポートでQOLを向上。末期転移例では早期導入が推奨。
・光免疫療法は、治療と緩和ケアの両立が可能な点で注目される。
光免疫療法とは
この治療法は、特定の波長の光を利用してがん細胞を攻撃するもので、薬剤と組み合わせることで、がん細胞の増殖を抑制する効果が期待されています。
光免疫療法は副作用が少ないという利点がありますが、適応や治療の効果には個人差があるため、専門医との相談が必要です。
また、この治療法は、がん細胞に選択的に作用するため、健常な細胞へのダメージが少ないという特徴があります。
以下より当院の光免疫療法の詳細をご確認頂けます。
まとめ
肝臓がんの再発転移は、肝内再発や肺、リンパ節、骨などへの転移が特徴で、予後や治療成功に大きな影響を与えます。
再発予防には、定期的な画像検査(CT、MRI)、腫瘍マーカー測定、健康的な生活習慣(禁酒、肥満解消、肝炎管理)が不可欠となります。
そして、治療選択肢には手術、局所療法、放射線、薬物療法、光免疫療法があり、患者の状態に応じて組み合わせが検討されます。
光免疫療法は、局所再発や症状緩和に有望な新治療として期待されており、今後の進展が注目されます。
肝臓がんの再発転移に対する光免疫療法の適応については、当院までお気軽にご相談ください。

【当該記事監修者】院長 小林賢次
がん治療をご検討されている、患者様またその近親者の方々へがん情報を掲載しております。ご参考頂けますと幸いです。