舌がんと腹水の関係
舌がんは口腔がんの中でも発生頻度が高く、初期段階では痛みやしこりが主な症状ですが、進行すると周囲のリンパ節や臓器へ転移します。
ステージ4ではがんが広範囲に及び、遠隔転移や腹膜播種が認められることがあります。
腹水とは腹腔内に液体がたまる状態で、がんが原因の場合は「悪性腹水」と呼ばれます。
これは腹膜にがん細胞が広がり、炎症やリンパ流の停滞によって液体が過剰に分泌されることで起こります。
舌がん単体で腹水が生じることはまれですが、がんが腹部に転移している場合や、全身状態の悪化によって併発することがあります。
腹水による主な症状
腹水がたまると、次のような症状が現れます。
| 症状 | 説明 |
|---|---|
| 腹部膨満感 | お腹が張ったように感じ、見た目にもふくらみが出る。 |
| 食欲不振 | 胃が圧迫され、少量しか食べられない。 |
| 呼吸困難 | 腹水が横隔膜を圧迫し、息がしづらくなる。 |
| むくみ | 血流やリンパの流れが悪くなり、足や顔がむくむ。 |
| 倦怠感 | 全身の体力が落ち、動くことがつらくなる。 |
標準治療が難しい理由
ステージ4の舌がんでは、がんが全身に及ぶため、外科手術は現実的ではないケースが多くなります。
放射線治療や化学療法も、腹水の存在によって臓器機能が低下している場合には適用が難しくなります。
さらに、腹水が多いと投薬による副作用のリスクも高く、治療が制限されることがあります。
そのため、がんの縮小を目的とした治療から、症状の緩和を目的とした治療へと方針が変わることがあります。
緩和ケアの選択肢
緩和ケアは、がんの進行によるつらい症状を和らげ、生活の質を保つことを目的とした医療です。
腹水に対しては、必要に応じて腹腔穿刺を行い、腹水を抜くことで呼吸や食事のしやすさを改善します。
また、利尿薬や水分制限などの内科的管理を行うこともあります。
舌がん特有の痛みや嚥下困難については、鎮痛薬や栄養サポートとの連携によって対応します。
患者様とご家族が納得した上で治療方針を決めることが、緩和ケアの基本です。
光免疫療法の可能性
標準治療が適応外である場合でも、一部の患者様には光免疫療法という治療法が選択肢となることがあります。
この治療は、がん細胞に選択的に集積する薬剤を用い、近赤外線の光を照射することでがん細胞を破壊する技術です。
体への負担が比較的少なく、局所的ながんへの対応が可能とされています。
ただし、全例に適応できるわけではなく、がんの種類や状態、医療機関の設備によって制限があります。
光免疫療法を希望される場合は、医療機関での詳細な説明と適応判断が必要です。
当院の光免疫療法に関する詳細は以下よりご確認頂けます。
まとめ
舌がんがステージ4に進行し、腹水を伴っている状態では、身体的な負担が大きく、標準的な治療が難しい場面が多くなります。
その中で、緩和ケアや腹水コントロールを中心とした対応が重要になってきます。
また、一部の患者様には光免疫療法という選択肢も存在します。
治療において大切なのは、病気と向き合いながら「どのように過ごしたいか」を医療チームと共に考えることです。
ご本人とご家族の希望を大切にしながら、最善の選択を模索していきましょう。
【当該記事監修者】院長 小林賢次
がん治療をご検討されている、患者様またその近親者の方々へがん情報を掲載しております。ご参考頂けますと幸いです。
