前立腺がんステージⅣにおける代替医療について
日本では、前立腺がんは男性のがん罹患率の上位を占める重大な疾患であり、年間約95,000人が新たに前立腺がんと診断され、約13,000人が亡くなっています。
前立腺がんステージⅣは、がんが前立腺や周辺リンパ節を超えて、骨、肺、肝臓、脳などの遠隔部位に転移した進行性の状態を指します。
この段階では、骨痛、排尿障害、血尿、倦怠感、転移による神経症状や体重減少などが顕著で、治療はがんの進行抑制、症状の緩和、QOL（生活の質）の向上を目指します。
前立腺がんの原因には、遺伝的要因（BRCA1/2変異など）、ホルモン関連因子（テストステロン）、生活習慣（肥満、高脂肪食）、環境要因が関与します。
当ページでは、前立腺がんステージⅣの特徴、標準治療の概要、そして代替医療、特に光免疫療法を中心とした治療選択肢について詳しく解説します。
代替医療とは
代替医療とは、標準的な西洋医学（手術、ホルモン療法、化学療法、放射線療法など）に代わる、またはそれらを補完する治療法を指します。
代替医療には、科学的エビデンスが確立されていないものから、臨床試験で効果が検証されつつあるものまで幅広く含まれます。
目的は、がんの進行抑制、症状の緩和、QOLの向上、免疫力の強化などです。
特にステージⅣの前立腺がんでは、標準治療の副作用が強い場合や効果が限定的な場合に、代替医療が注目されます。
代替医療の例には、光免疫療法、漢方、サプリメント、鍼灸、食事療法、心理療法などがありますが、今回は特に光免疫療法に焦点を当てて解説します。
ステージⅣ前立腺がんの特徴と原因
ステージⅣの前立腺がんは、TNM分類でM1（遠隔転移）に分類され、骨（特に脊椎や骨盤）、肺、肝臓、脳への転移が一般的です。
前立腺がんは主に以下の特徴を持つサブタイプに分類されます：
ホルモン感受性前立腺がん（HSPC）、去勢抵抗性前立腺がん（CRPC）。
各サブタイプで転移パターンや治療応答性が異なります。
そして、以下のような症状が現れます。
●局所症状：排尿困難、頻尿、血尿、骨盤痛、勃起不全。
●全身症状：体重減少、倦怠感、発熱、食欲不振、貧血。
●転移関連症状：骨転移による骨痛や病的骨折、肺転移による呼吸困難、肝転移による黄疸や腹部膨満、脳転移による頭痛、めまい、意識障害。
発症の原因としては以下が挙げられます。
●遺伝的要素：BRCA1/2、HOXB13、ATM変異、家族性前立腺がんのリスク。
●ホルモン関連因子：テストステロンやジヒドロテストステロン（DHT）の高レベル、ホルモン代謝異常。
●生活習慣：肥満、高脂肪食（特に動物性脂肪）、運動不足、喫煙がリスクを上昇。
●環境・その他の要因：農薬や化学物質への曝露、ビタミンD欠乏、炎症性腸疾患、腸内細菌叢の乱れ。
標準治療の概要
ステージⅣの前立腺がんに対する標準治療は、がんの進行抑制、症状緩和、QOL維持を目的とします。
以下に主な治療法の概要を説明します。
●ホルモン療法（アンドロゲン除去療法、ADT）：ホルモン感受性前立腺がんに対して、LHRHアナログ（リュープロレリンなど）、アンドロゲン受容体阻害剤が使用される。
●化学療法：去勢抵抗性前立腺がん（CRPC）では、ドセタキセルやカバジタキセルが使用され、転移巣の縮小や進行抑制を目指す。
●分子標的薬：PARP阻害剤（オラパニブ）はBRCA1/2変異のあるCRPCに有効。PSMA標的療法（ルテシウム-177 PSMA）はPSMA陽性症例に適応。
●免疫チェックポイント阻害剤：ペムブロリズマブはMSI-H（マイクロサテライト不安定性高値）やTMB-H（腫瘍変異負荷高値）の症例に適応。
●放射線療法：骨転移による疼痛緩和や局所制御を目的に使用。ラジウム-223は骨転移を有するCRPCに有効。定位放射線療法（SBRT）が局所進行例で検討されることもあり。
●手術：ステージⅣでは根治手術は困難だが、尿路閉塞や疼痛管理のための姑息的手術（経尿道的前立腺切除術など）が行われる場合がある。
●緩和ケア：骨痛、排尿障害、栄養不良の管理に重点を置き、鎮痛剤、ビスホスホネート、ゾレドロン酸、栄養サポートでQOLを向上。
代替医療：光免疫療法
標準治療は効果的である一方、副作用が強く、ステージⅣの前立腺がんでは治療効果が限定的な場合があります。
そこで、代替医療として注目されるのが光免疫療法です。
この治療法は、科学的エビデンスが蓄積されつつあり、特にステージⅣの前立腺がんにおける新たな治療の可能性として期待されています。
光免疫療法とは
光免疫療法は、光感受性物質（薬剤）を点滴で投与し、特定の波長のレーザー光をがん細胞に照射することで、がん細胞を選択的に破壊する治療法です。
この治療法は、正常細胞へのダメージを最小限に抑えつつ、がん細胞を効果的に攻撃する点で優れており、ステージⅣの前立腺がんにおける局所再発、骨盤リンパ節転移、表在性転移などに適用可能な場合があります。
光免疫療法の仕組み
１．標的薬剤の投与：光感受性を持つ薬剤を点滴で投与。EPR効果（増強された透過性および保持効果）により、薬剤ががん細胞に集中的に集積。
２．光照射：経皮的または内視鏡を用いて特定の波長のレーザーを照射。薬剤が集積したがん細胞で活性酸素が発生し、がん細胞を破壊。
３．免疫活性化：破壊されたがん細胞が免疫系を刺激し、全身的な抗腫瘍免疫応答を誘発する可能性。
光免疫療法の利点
●高い選択性：正常な前立腺組織や周辺臓器への影響が少なく、副作用が軽減される。
●適応範囲：局所再発、骨盤リンパ節転移、表在性転移などに有効な可能性。
●QOLの向上：化学療法や放射線療法に比べ、身体的負担が少なく、高齢者や体力の低下した患者様にも適応可能。
●免疫効果：遠隔転移に対する追加的な抗腫瘍効果が期待される。
●標準治療との併用：ホルモン療法、分子標的薬、化学療法と組み合わせることで、相乗効果が期待できる。
当院の光免疫療法に関する詳細な情報は、以下よりご確認いただけます。
その他の代替医療
光免疫療法以外にも、ステージⅣ前立腺がんに対して以下の代替医療が検討される場合があります。
これらは科学的エビデンスの程度が異なり、標準治療を補完する形で使用されることが多いです。
●漢方療法：八味地黄丸や十全大補湯など、倦怠感の軽減や免疫力向上を目的に使用。科学的エビデンスは限定的だが、QOL向上に寄与する場合がある。
●サプリメント・食事療法：リコピン（トマト由来）、ビタミンD、クルクミン、オメガ3脂肪酸、ザクロエキスなどが炎症抑制や前立腺がん進行抑制を目的に研究されている。ただし、過剰摂取やホルモン感受性への影響に注意が必要。
●鍼灸：骨痛、排尿障害、ホルモン療法によるホットフラッシュの緩和に役立つ可能性。ストレス軽減やQOL向上に寄与するが、がん進行抑制の効果は未確立。
●心理療法・マインドフルネス：がん患者様の精神的ストレスや不安を軽減し、QOLを向上させる。瞑想やカウンセリングが含まれ、緩和ケアの一環として有用。
●臨床試験における代替医療：がんワクチン（シプレウセル-T）、CAR-T細胞療法、オンコリティックウイルス療法、バイスペシフィック抗体などが臨床試験で検討中。これらは分子標的療法や免疫療法の枠組みに近く、将来的に標準治療に組み込まれる可能性がある。
まとめ
前立腺がんステージⅣは、遠隔転移を伴う進行性の疾患であり、遺伝的要素（BRCA1/2変異など）、ホルモン関連因子、生活習慣、環境要因が発症に関与します。
標準治療（ホルモン療法、化学療法、分子標的薬、免疫療法、放射線療法、緩和ケア）は有効ですが、副作用や効果の限界から代替医療も注目されています。
特に光免疫療法は、選択性の高さと副作用の少なさから、ステージⅣの前立腺がん患者様のQOLを重視する有望な選択肢といえます。
この治療法は、局所再発や骨盤リンパ節転移、表在性転移に対して有効であり、標準治療との併用で相乗効果が期待できる可能性があります。
代替医療の選択には、科学的根拠やリスクの評価が重要となります。
当院の光免疫療法の適用可否については、お気軽にご相談ください。
【当該記事監修者】院長 小林賢次
がん治療をご検討されている、患者様またその近親者の方々へがん情報を掲載しております。ご参考頂けますと幸いです。
