浸潤性乳管がんの詳細な概要
浸潤性乳管がんは、がん細胞が乳管や小葉の内部に留まらず、基底膜を破って外へ出たものをいいます。
浸潤がんは、リンパ管や血管を通じて乳房の外に出て転移する可能性があります。
このタイプの乳がんは、乳がんの中で最も一般的に診断されるタイプであり、乳がんの全体の約80%を占めています。
浸潤がんであったとしても、初期段階では自覚症状が現れにくいため、定期検診によって発見されることも多いです。
乳がんの早期発見は、治療の成功率を大幅に向上させる鍵となりますので、定期検診やセルフチェックが重要となります。
浸潤性乳管がんの分類
浸潤性乳管がんは以下の3つに分類されます。
①乳頭腺管がん
乳がん全体の約20%が乳頭腺管がんであり、キノコ上に発育するという特徴があります。
リンパ節や他の臓器へ転移する確率も低く、最も予後の良いタイプといわれています。
②充実腺管がん
乳がん全体の約20%が充実腺管がんであり、小さな腺管の中身を押し広げるように増殖し、しこり(腫瘍)を形成します。
乳頭腺管がんと比較すると、予後はそれほど良くないタイプです。
③硬がん
乳がん全体の約40%が硬がんであり、乳管の外側にパラパラと散ったように発育するという特徴があります。
また、皮膚のひきつれや、乳房の縮小化など、乳房に変形を生じることが多いです。
3つのタイプの中で、最も悪性とがんとなります。
浸潤性乳管がん以外に、「粘液がん」、「炎症性乳がん」などの特殊型もありますが、発症頻度は低いです。
浸潤性乳管がんの発生要因
浸潤性乳管がんの明確な発生要因は、現時点では完全には解明されていません。
しかし、遺伝的な背景や女性ホルモン(エストロゲン)の影響、生活習慣などが関連している可能性が指摘されています。
具体的には、次のような要素がリスク要因として挙げられることがあります。
項目 | 内容 |
---|---|
発生要因 | 明確な原因はまだ解明されていませんが、遺伝的背景や女性ホルモンの影響、生活習慣などが関与している可能性があるとされています。 |
主なリスク要因 |
・家族歴(血縁者に乳がん患者がいる) ・初潮が早い、閉経が遅い ・初産年齢が高い、出産経験がない ・喫煙 ・過度の飲酒 ・糖尿病などの代謝異常 |
発症しやすい年齢層 |
30代から徐々に増加し、40〜50代の女性に多いとされます。 高齢になるとやや減少する傾向がありますが、近年は閉経後に発症する例も増えています。 |
検査・診断方法
検査項目 | 内容 |
---|---|
視診・触診 | 医師が乳房の形状や皮膚の状態、しこりの有無などを確認します。定期的な診察で変化に気づける場合もあります。 |
マンモグラフィー |
X線を用いた画像検査で、乳がんの早期発見に役立つとされています。 特に40歳以上の女性には、2年に1回の受診が推奨されることがあります。 |
超音波(エコー)検査 | 乳腺の状態やしこりの性状を調べるために用いられます。乳腺が発達している若い世代にも適しているとされています。 |
細胞診・組織診 |
乳がんが疑われる場合に、がん細胞の有無や性質を確認するために行われる検査です。 病理診断により治療方針の検討が可能になります。 |
MRI・CT検査 |
がんの広がりや他臓器への転移の可能性を調べる際に追加されることがあります。 必要に応じて行われる画像診断のひとつです。 |
治療方法
治療対象 | 内容 |
---|---|
治療方針の検討 | 浸潤性乳管がんの治療は、がんのステージ(病期)、性質、悪性度、患者様の全身状態などを総合的に考慮して決定されます。 |
ステージⅠ~ⅢA |
手術による治療が検討されます。乳房温存術または乳房切除術が行われることが多く、 がんが比較的小さい場合には温存術が可能とされます。 温存術を選択した場合、再発予防のために放射線療法が追加されることがあります。 状況に応じて、術前または術後に薬物療法(化学療法やホルモン療法など)を併用することもあります。 |
ステージⅢB~Ⅳ |
主に薬物療法が中心となることが多く、ⅢB期やⅢC期では、薬物療法に加えて手術や放射線療法を併用するケースもあります。 Ⅳ期では、遠隔転移が認められるため、転移先の臓器への対応も含めた全身的な治療が行われることがあります。 |
光免疫療法について
光免疫療法は、特定の薬剤と光を組み合わせてがん細胞を攻撃する治療法です。
薬剤はがん細胞に集まり、その後特定の波長の光を照射することで、がん細胞を破壊します。
光免疫療法は、副作用が少なく、治療後の生活の質を維持することができるという利点があります。
以下より当院の光免疫療法の詳細をご確認頂けます。
まとめ
浸潤性乳管がんは、乳がんの中でもよく見られるタイプのひとつです。
ステージⅠやⅡの段階で見つかり、治療が行われた場合には、5年生存率が90%を超えることもあります。
早い段階で気づくためには、定期検診やセルフチェックを意識しておくことが大切です。
また、治療法のひとつとして光免疫療法が検討されることもあり、今後の医療の進展とともに、選択肢が広がっていく可能性があります。

【当該記事監修者】院長 小林賢次
がん治療をご検討されている、患者様またその近親者の方々へがん情報を掲載しております。ご参考頂けますと幸いです。