がん治療におけるサイコオンコロジーとは
サイコオンコロジー(Psycho-Oncology)は、
・「こころ」の研究する分野:心理学(サイコロジー=Psychology)
(一番身近なところでは、臨床心理学が医療分野に直結しています。)
・「がん」の研究をする分野:腫瘍学(オンコロジー=Oncology)
(日本におけるオンコロジーは、がん腫と肉腫のがん全般および、治療や診断などがんに関わる分野を指しています。)
をミックスさせた造語で、「精神腫瘍学」と訳され、1980年代に確立された新しい学問です。
サイコオンコロジーでは、患者様とそのご家族の心理・社会・行動的側面等、幅広い領域での研究・臨床実践・教育を行っています。
サイコオンコロジーの先駆者としては、ニューヨーク州にあるメモリアルスロンケタリングがんセンター病院精神科の医師Jimmy.C.Holland氏が挙げられます。
がん治療におけるサイコオンコロジーの特徴
サイコオンコロジーは、患者様とそのご家族のQOL(生活の質)の維持・向上がありますが、特に精神・心理に重きをおいた臨床的側面が強いことが特徴です。
また、サイコオンコロジーは心の状態(ストレス)や行動ががんに与える影響についても研究しています。
がんになってからの病気との向き合い方や、精神療法・グループ療法を行うことで寿命が延びるかどうかを科学的に分析します。
もしこれらの心理社会的要因が、がんの罹患や罹患後の生存期間(5年生存率等)に影響を与えるならば、患者様のQOLの向上だけでなく化学治療などの主ながん治療に加えてプラスアルファの治療法として提供できる可能性が上がってきます。
つまり、『患者様の精神面や行動様式が、がんの予防や延命にも役立てられるのではないか。』ということも研究しています。
サイコオンコロジーはよく緩和ケアにおける精神的な部分を担っているというイメージがありますが、実際にサイコオンコロジーはもっと広い対象を扱っています。
患者様やその家族だけでなく、がんを克服した方への精神的ケアも行っています。
がん治療でサイコオンコロジーを担ってくれる人は?
サイコオンコロジーでは、主に精神科医や心療内科医、心理士、看護師、ソーシャルワーカー等の『専門家』と患者様の主治医が、「チーム」体制でがん患者様とそのご家族の支援にあたっていきます。
主にドクターは薬の治療を専門とし、心理士がカウンセリングや心理療法を担当します。また看護師もカウンセリングや様々な心の問題について専門的なアドバイスを行います。またソーシャルワーカーもカウンセリングや経済的なおけに対する専門的なアドバイスを提供します。
特にこの中で、精神腫瘍医と呼ばれる精神科医、心療内科医は、精神医学全般の知識、技能、経験を有し、その上でがん治療全般と緩和医療にも精通し、がん患者さんが抱える心の悩みにも応じることができます。
これが、チーム医療として機能しています。
【当該記事監修者】院長 小林賢次
がん治療をご検討されている、患者様またその近親者の方々へがん情報を掲載しております。ご参考頂けますと幸いです。