70代における大腸がん:症状から治療の選択肢まで
大腸がんは、70代の高齢者に多く見られる深刻な健康問題であり、日本では高齢化に伴いその発症率が増加傾向にあります。
大腸がんは年間約15万人が新たに診断されており、特に70代では進行性の症例が多く、早期発見と適切な治療が極めて重要です。
70代の患者様では、加齢に伴う体力低下や併存疾患(心疾患、糖尿病など)が治療の選択に影響を与えるため、個別化された治療計画が求められます。
以下では、70代の大腸がんの症状、診断方法、標準治療、および標準治療以外の選択肢として特にステージⅣに対して有効性が期待される光免疫療法について詳しく解説します。
70代の大腸がんの症状の特徴
70代の大腸がん患者様では、がんの進行度や部位(結腸または直腸)によって症状が異なりますが、以下のような特徴的な症状が現れることが一般的です。
●消化器症状:便秘や下痢の持続、便の形状変化(細い便)、便に血が混じる(血便や黒色便)、腹痛、腹部膨満感。
●全身症状:原因不明の体重減少、疲労感、食欲不振、貧血(特に右側結腸がんの場合)。
●進行性の症状:ステージⅣでは、肝転移による黄疸、腹膜播種による腹水、肺転移による呼吸困難、骨転移による疼痛などが現れることがあります。
高齢者ではこれらの症状が加齢に伴う変化や他の疾患(過敏性腸症候群、痔など)と誤解されやすく、発見が遅れるケースも少なくありません。
そのため、持続的な症状がある場合は、速やかに医療機関を受診し、専門的な検査を受けることが推奨されます。
診断方法
70代の大腸がんの診断には、以下の方法が用いられ、がんの存在、進行度、転移の有無を評価します。
●大腸内視鏡検査:大腸の内部を直接観察し、腫瘍の位置、大きさ、形態を確認。生検により組織を採取し、病理診断を行う。70代では全身状態を考慮し、鎮静剤を使用した負担の少ない検査が選択される場合がある。
●画像診断:CT、MRI、PET-CTを用いて、がんの局所進行度や遠隔転移(肝臓、肺、腹膜、リンパ節など)の有無を評価。
●血液検査:腫瘍マーカー(CEA、CA19-9)の測定で、がんの進行や治療効果のモニタリングを行う。貧血や肝機能異常も診断の手がかりとなる。
●便潜血検査:スクリーニングとして有用だが、陽性の場合には内視鏡検査で確定診断が必要。
高齢者では併存疾患や体力に応じて、侵襲性の低い検査から段階的に進めることが一般的となります。
標準治療の選択肢
70代の大腸がんの治療は、がんのステージ(Ⅰ~Ⅳ)、患者様の全身状態(PS)、併存疾患を考慮して決定されます。
ステージⅣでは遠隔転移や高度な局所浸潤を伴うため、治療はがんの進行抑制、症状緩和、QOL(生活の質)の維持を目的とします。
主な標準治療は以下の通りです。
●外科療法:ステージⅣでも、原発巣や限定的な転移巣(肝臓や肺)の切除が可能な場合に行われる。70代では手術のリスクを評価し、低侵襲な内視鏡手術や腹腔鏡手術が優先される場合がある。腸閉塞や出血の緩和を目的とした姑息的手術も検討される。
●全身化学療法:
・FOLFOX(オキサリプラチン+5-FU+ロイコボリン):ステージⅣの標準治療として広く使用。末梢神経障害や骨髄抑制が主な副作用。
・FOLFIRI(イリノテカン+5-FU+ロイコボリン):オキサリプラチン耐性の場合に選択。
・カペシタビン:経口化学療法で、高齢者に負担が少ない選択肢。手足症候群に注意。
●分子標的薬:
・ベバシズマブ:VEGF阻害剤で、化学療法と併用し血管新生を抑制。
・セツキシマブまたはパニツムマブ:EGFR阻害剤で、RAS野生型の症例に有効。皮膚発疹が主な副作用。
●免疫チェックポイント阻害剤:ペムブロリズマブまたはニボルマブ:マイクロサテライト不安定性(MSI-H)や高腫瘍変異負荷(TMB-H)の症例に有効。特にリンチ症候群関連大腸がんに効果が期待される。
●放射線療法:直腸がんや骨転移による疼痛緩和に使用。強度変調放射線療法(IMRT)が適用される場合がある。
●緩和ケア:腹痛、腸閉塞、栄養不良への対応が重要。ステント留置、栄養チューブ、疼痛管理によりQOL向上が期待される。
70代の患者様では、副作用や体力への影響を考慮し、治療の強度を調整することが一般的です。
光免疫療法とは
光免疫療法は、光感受性物質(薬剤)を点滴で体内に投与した後、特定の波長のレーザー光をがん細胞に照射することで、がん細胞を選択的に破壊する治療法です。
この治療法は、正常細胞へのダメージを最小限に抑えつつ、がん細胞を効果的に攻撃する点で優れており、70代の高齢者にも適応可能な場合があります。
特に、ステージⅣの大腸がんにおける腹膜播種、表在性転移巣、局所進行がんに対して有効性が期待される治療法です。
光免疫療法の仕組み
1.標的薬剤の投与:光感受性を持つ薬剤を点滴投与。EPR効果(増強された透過性および保持効果)により、薬剤ががん細胞に集中的に集積。
2.光照射:体表面や内視鏡を用いて特定の波長のレーザーを照射。薬剤が集積したがん細胞で活性酸素が発生し、がん細胞を破壊。
3.免疫活性化:破壊されたがん細胞が免疫系を刺激し、全身的な抗腫瘍免疫応答を誘発する可能性。
光免疫療法の利点
・高い選択性:正常な大腸組織や周辺組織への影響が少なく、副作用が軽減される。
・適応範囲:ステージⅣの腹膜播種、肝転移の一部、表在性転移巣に有効。
・QOLの向上:化学療法や放射線療法に比べ、身体的負担が少なく、70代の患者様に適している。
・免疫効果:遠隔転移に対する追加的な抗腫瘍効果が期待される。
・標準治療との併用:化学療法や分子標的薬と組み合わせることで、相乗効果が期待できる。
当院の光免疫療法に関する詳細な情報は、以下よりご確認いただけます。
まとめ
70代の大腸がんは、進行性の症例が多く、便秘、下痢、血便、体重減少、疲労感などの症状が特徴的です。
早期発見には大腸内視鏡検査や画像診断が有効であり、治療は手術、化学療法、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害剤、放射線療法、緩和ケアを組み合わせた個別化されたアプローチが求められます。
特にステージⅣの大腸がんでは、光免疫療法が選択性の高さと副作用の少なさから、QOLを重視する70代の患者様にとって有望な選択肢となります。
この治療法は、腹膜播種や表在性転移巣に対して特に有効であり、標準治療と併用することでさらなる効果が期待できる可能性があります。
大腸がんの早期発見と適切な治療選択が重要ですので、当院の光免疫療法の適用可否についてはお気軽にご相談ください。

【当該記事監修者】院長 小林賢次
がん治療をご検討されている、患者様またその近親者の方々へがん情報を掲載しております。ご参考頂けますと幸いです。