甲状腺がんとは
What is thyroid cancer?
甲状腺がんとは、甲状腺を形成する細胞に悪性のがん細胞が形成されるというがんの事を言います。
甲状腺がんの発生は、全がんの中でも1%程度とされており、更に頭頸部がんの中では比較的多いがんに分類されます。
甲状腺がんは、病理組織診断から大きく『乳頭がん』,『濾胞がん』,『髄様がん』,『低分化がん』,『未分化がん』の5種類(組織型)に分類されます。
また乳頭がんと濾胞がんを合わせてこれらを分化がんと総称します。分化型のがんは、がん化した細胞が成熟しており、がん細胞の増加速度が遅く、尚且つ予後が良いとされています。
悪性度の低い乳頭がんが日本で多い一方で、欧米では遠隔・転移しやすい濾胞がんが多いとされています。
言い換えれば、現状日本では、甲状腺がんはほぼ根治できるがんと言っても過言ではありません。
甲状腺がんの種類
Types of thyroid cancer
乳頭がん
日本のような海藻類をよく食べるヨード摂取国では、甲状腺がん全体の約90%は乳頭がんが占めています。
10代から高齢者までと幅広く発症する可能性があり、その中でも特に女性に多くみられ、年間で女性10万人中約8人が乳頭がんに罹ると言われているのに対し、男性は約1/5~1/8程度と言われています。
乳頭がんは特徴的な乳頭状とよばれる顕微鏡的な構造により命名され、超音波検査と穿刺吸引細胞診によって大方容易に診断可能です。
また乳頭がんはリンパ節転移を生じやすい事が知られており、甲状腺周囲の反回神経や気管、食道などの声帯を動かす臓器に浸潤する可能性もありますが、成長に関しては遅い種類の腫瘍で、根治する確率はおおよそ90%以上です。
乳頭がんは、若者の方が予後良好で、リンパ節への転移は予後をあまり左右しない傾向にあります。
また、ごく一部で再発を繰り返して、生命を脅かす「高危険度がん」と呼ばれるタイプの乳頭がんがあります。
濾胞がん
日本では全体の約5%が甲状腺がんを占め、30代から高齢者と幅広くに見受けられます。
良性の「濾胞腺腫」である甲状腺腫瘍等との区別が困難で、濾胞がんと濾胞腺腫をまとめて『濾胞性腫瘍』と総称する事があります。
乳頭がんと比較してリンパ節転移や局所浸潤等が問題となる可能性は低いですが、甲状腺や骨へ血行性の遠隔転移しやすい性質があり、遠隔転移を起こった場合は問題であります。
転移が他の臓器に確認出来なければ、予後は良好とされており、甲状腺切除手術によって甲状腺と甲状腺のまわりのリンパ節を取り除く事により治ります。
髄様がん
髄様がんとはカルシウムの量を調節するカルシトニンと呼ばれるホルモンを分泌する傍濾胞細胞が、がん化したものを指します。
甲状腺がんは全体の約1~2%で、多くは30代以降から見受けられます。
髄様がんでは血液中のCEAとカルシトニンの測定値が上昇する傾向にあります。CEAとカルシトニンは、治療後の経過を観察するための腫瘍マーカーとしても有効です。
髄様癌には遺伝的に生じるケースと、遺伝とは無関係で、散発型髄様がんと呼ばれる突発的に生じるタイプがあり、両者の比率は大体、五分です。
乳頭がんとは違い、予後因子としてリンパ節転移が重要となります。リンパ節転移が数多く起こっているものの予後は良好ではありません。例えば肝臓に遠隔転移したり、縦隔のリンパ節などに転移を起こす可能性があり、そうなると治療は困難となります。
未分化がん
未分化がんは、甲状腺がん全体の約1~2%でかつ非常に予後の悪いがんで、急速に進行してしまうため注意が費用です。
未分化がんは、一般的に40代以降から高齢者が多数であり、男性の頻度も比較的多いとされている癌です。
未分化がんの多くは、もともと甲状腺内にあった分化がん長い経過の中で乳頭がんや濾胞がんが未分化転化して発生するものと考えられています。治療には放射線や手術の外照射治療、または抗がん剤による化学療法の3者を組み合わせて行われますが、延命率は高いとされていません。
悪性リンパ腫
悪性リンパ腫は、未分化がんと同じく頻度が少ない甲状腺内のリンパ球由来の悪性腫瘍で、甲状腺がん全体の約1~5%を占めており、40代以降に多くみられます。 悪性リンパ腫は、血液・リンパの癌が、甲状腺に生じたものです。
多くは長期間、橋本病(慢性甲状腺炎)にかかっている患者さんに多くみられる傾向があります。
悪性リンパ腫は、急速に成長しますが、化学療法や放射線治療が効くことも多いとされています。
甲状腺がんの原因と症状
Causes and symptoms of thyroid cancer
甲状腺がんの原因
ここでは、甲状腺がんの危険因子について解説していきます。
甲状腺がんの危険因子について、現状では原因不明とされています。
ただし一部の甲状腺がんの危険因子については判明しているものもあります。
まず一つは、若い頃に放射線被曝していると、甲状腺乳頭がんの発がんリスクが高まることが知られています。
また、甲状腺髄様がんの約4割は遺伝に関係しているといわれています。
甲状腺がんの症状
甲状腺がんの症状は、がんの組織型によって症状が分かれることが特徴的です。
ここでは、甲状腺がんの組織型ごとに分けて、各がんにおける症状について解説していきます。
(1)分化がん(乳頭がん、濾胞がん)
甲状腺がんにおける分化がんは、自覚症状に乏しく、症状としても喉仏付近のしこり(結節)以外に自覚症状がみられない傾向にあります。
がんが進行してくると、嗄声や血痰、嚥下時の痛みといった症状がみられます。
(2)未分化がん
甲状腺がんにおける未分化がんは、他の甲状腺がんの症状と比べても症状が非常にはっきりしています。
初期症状としては、甲状腺の腫れや痛み、発熱などの症状がみられます。
更に特徴的な症状として、短期間(数週間週単位)で急速に増大する結節がみられることです。
そうしたがんにより発生に関係する神経(反回神経)に浸潤することで、嗄声(声のかすれ)やしこりの部分の痛みが出現することがあります。
他にも、嚥下障害や浸潤の強さによって呼吸困難が起こることもあります。
更にがんの進行によっては、甲状腺中毒症(甲状腺ホルモン過剰症状)や甲状腺機能低下症が起こることもあります。
(3)髄様がん
甲状腺がんにおける髄様がんは、分化がん同様に自覚症状に乏しく、主な症状は頸部腫瘤であり、腫瘍が小さい時期はほとんど無症状です。
また、喉の違和感や嚥下障害、息苦しさがみられることもあります。
上記の症状が一つでもみられる場合は勿論、各症状が長期間続いていると感じる場合には、早期に耳鼻咽喉科の医療機関を受診するようにしてください。
その他、甲状腺がんに関する記事をまとめています。ご参考ください。
甲状腺がん情報記事監修者
Article supervisor
当該甲状腺がんに関するページは院長 小林賢次監修にて作成しております。
氏名:小林賢次
経歴
- 1991年3月 京都大学法学部卒業
- 2000年3月 富山医科薬科大学医学部医学科卒業
- 2000年5月 同愛記念病院 臨床検査科
- 2002年5月 NTT東日本関東病院病理診断部
- 2011年6月 新八重洲クリニック 院長
- 2019年1月~ 東京がんクリニック開院
出身大学
- 京都大学法学部卒業
- 富山医科薬科大学医学部医学科卒業
当院へのご相談の流れ
Consultation process for our clinic
ご予約
TGC東京がんクリニックでは患者様のプライバシーに拝領し、完全予約制とさせていただいております。
甲状腺がん、もしくはその疑いのある方は、事前に電話かメールにてご予約をお願い致します。
お急ぎの場合は、お電話にてご予約頂ければスムーズにご対応可能です。
メールにてご予約頂いた場合は、ご予約状況を確認させて頂いた後、担当者よりお返事させて頂きます。
ご来院
ご来院日に関しましては、時間に余裕を持って(5分前を目安に)ご来院頂くようにお願い致します。
当院に場所が分からない場合は、お電話を頂けましたら、ご対応させていただきますので、お気軽にお問い合わせください。
また、診療情報提供書や血液検査データなどの資料をお持ちの場合には、持参して頂くようお願いします。
受付
諸来院時には問診票の記入を行って頂き、甲状腺がんに関する現在の状況を記入して頂きます。
問診票はどのような事でも、また些細な事でもご記入ください。
例
・喉仏付近のしこり(結節)
・声のかすれ(嗄声)
・しこりの部分の痛み(圧痛)
など
インフォームドコンセント
ご記入頂いた問診票を元に、医師及び医療スタッフにより患者様または近親者様に状況をお聞き致します。
今後の治療方法を選定する上でも、なるべく詳細にお答え頂くよう宜しくお願い致します。
当院では甲状腺がん治療のメリットだけではなくデメリットに関しても詳しくご説明させていただきますので、その際不安な事はお気軽にご質問ください。
強引な勧誘などは一切行いません。最終的には患者様の判断に当院は委ねております。
当院の説明だけでは不安な場合は「セカンドオピニオン」もご検討頂けます。
同意書の記入
インフォームド・コンセントにより治療方法、それに伴うメリット、リスクにご納得頂けましたら、同意書にサインをして頂きます。
また治療に必要な費用に関しましても、明瞭にお伝えさせて頂きます。
御不明な点などございましたら、その都度ご質問頂ければと思います。
今後の甲状腺がん治療計画について
当院では患者様のスケジュールと当院が推奨する治療期間で最適と考えられる内容で甲状腺がん治療行程の調整を行って行きたく思います。
そのため、QOL(生活の質)を低下させることなく甲状腺がん治療を行うことが可能です。
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【当該記事監修者】院長 小林賢次
がん治療をご検討されている、患者様またその近親者の方々へがん情報を掲載しております。ご参考頂けますと幸いです。