前立腺について
About the prostate
日本では近年前立腺がんの患者が増加傾向にあります。
厚生労働省の2019年1月17日付けで発表された「全国がん登録の全数調査結果」には、2016年に全国でがんと新たに診断された患者数は約99.5万人と報告されています。
新たに約9万人が前立腺がんと診断され、男性のがんによる患者数は現状第2位となっています。前立腺がんは70代男性においては最も患者数が多く、50代から患者数が増え始める傾向にあります。
また、日本においては2013年を境に、前立腺がんで毎年1.1万人以上の方が亡くなられています。
前立腺がんとは
What is prostate cancer?
前立腺というのは男性特有の生殖器(精液の一部を産生する部分)で、膀胱の出口付近に位置し、その中心部を尿道が通っています。
「前立腺肥大症」という言葉を聞く方も多いと思いますが、これは尿道周囲にある前立腺(内腺)が大きくなり、尿道を塞いでしまう事で生じるものです。
これに対し、前立腺がんは内腺の外側にある部分(外腺)から発生する事が多いものです。
男性の場合、中年以降になるとがんになる可能性があり、50歳以降になると年とともに階段状に増加していきます。
その中でも前立腺がんは高齢者で見つかる典型的ながんと言えます。
前立腺がんは、前立腺肥大症と同様に、中年の男性は特に警戒しておくべき前立腺の病気です。
発生起因には男性ホルモンが関与しており、体内のホルモンバランスが変化することによって前立腺がんの発生率が高くなると考えられています。
前立腺がんの特徴は、早期発見できれば完治することが可能ながんと言え、他のがんと比べて進行速度が緩やかという点があります。
骨やリンパ節に転移する以外にも、稀に前立腺や肝臓にも転移することがありますので注意が必要です。
更に詳細に説明すると、以前までは、前立腺がんは症状が現れにくく、早期の発見が困難であると考えられていましたが、簡易的な「PSA検査」という血液検査にて発見出来るようになっており、早期発見が可能となり、適切な治療が可能なものとなっております。
高齢化や生活環境または食生活が欧米化にて、今後PSA検査の普及により、前立腺がんの早期発見、適切な治療の割合は増加傾向になると考えられます。
前立腺がんにおける日本人の死亡数も年々増加し、この20年間で約2.4倍に増加(2016年では1万1,807人)しています。(国立がん研究センターがん対策情報センターより)
前立腺がんの主な種類
前立腺がんの分類方法は、「高分化型腺がん」「低分化型腺がん」「中分化型腺がん」の3種類(WHOの提唱)に分けられます。
「高分化型腺がん」は、正常な状態の前立腺細胞付近の、おとなしいタイプのものを指します。
「中分化型腺がん」は、悪性度が中程度の前立腺がんを指します。
「低分化型腺がん」は、最も悪性度が高く、正常細胞とは大きく異なるがんです。
また、前立腺がんの進行期は4つのステージ(病期)に分類されています。以下ご参考ください。
病期 | 説明 |
---|---|
病期A | 良性病変の診断(多くは前立腺肥大症)または前立腺内のごく小さながんで、他の手術で摘出された前立腺組織の中に偶然にも発見されたがんの事を言い、手術や放射線療法で完治する(根治的治療)事が高い段階です。 標準治療の詳細はこちら |
病期B | 癌が前立腺の中に限局し存在している状態で、直腸診で診断出来る事もあります。 この時期は症状はないことも多く、病期A同様にこの時期でも治療を行う事が可能な時期となっています。 がん検診の詳細はこちら |
病期C | 癌は前立腺の外側に拡大しているが、転移は未だしていない状態です。 しかし近接する精嚢や膀胱に浸潤している可能性はあります。自覚症状としては血尿や排尿困難などを伴う事があります。 |
病期D | 癌がリンパ節や肝臓、前立腺そして骨といった前立腺から離れた臓器にも拡大している状態です。 自覚症状としては転移部の痛み、排尿困難、体重減少または倦怠感などが認められることが多い段階です。 末期がんの詳細はこちら |
前立腺がんの原因
ここでは、前立腺がんの危険因子について解説していきます。
実際のところ前立腺がんの発がん要因について、決定的な要因は明らかになっていません。
しかし、前立腺がんの発がん因子として考えられているものとしては、加齢や人種(アジア人は比較的低い傾向)、食生活、肥満などが挙げられます。
高齢化が進行している日本では、前立腺がんの発生数が増加していることは明らかですが、遺伝や食生活については「発生に関連している」という程度の因果関係しかみられていません。
ただし、近親者に前立腺がんに罹患している人がいる場合は、発がんリスクが高まることがいわれています。
前立腺がんの症状や注意点
前立腺がんの初期にみられる症状と進行期にみられる症状、更に転移の際等にみられる症状について解説していきます。
(1)初期の症状
前立腺がんは、一般的にその多く尿道から離れた辺縁域(外腺と呼ばれる前立腺の外側部分)から生じるため、早期の場合には無症状のことが多く、患者様自身で自覚できるような特徴的な症状がほとんどありません。
しかし近年では、PSA(prostate specific antigen、前立腺特異抗原)検査と呼ばれる前立腺がんの血液腫瘍マーカー検査の普及によって、前立腺がんを発見出来る症例が増えました。
(2)進行期の症状
前立腺がんが進行した際にみられる症状は、排尿困難や残尿感、排尿時痛更には血尿といった排尿障害がみられますが、これは併存する前立腺肥大症(BPH)の症状である場合が多いです。
つまり、前立腺がんは前立腺肥大症という病気と症状が非常に似ているため、区別することは難しいでしょう。
因みに前立腺がん前立腺肥大症より前立腺を併発する可能性もあります。
尿の回数が増えたり、尿の出が悪い、残尿感がある、といった排尿に関する症状を感じる方は、前立腺肥大症の可能性も考えておきましょう。
(3)転移時の症状
前立腺がんでは、骨転移するケースが多く、転移部の骨痛や病的骨折が症状としてみられます。
更に全身に骨転移した際には、貧血や播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation、DIC)がみられます。
また、圧迫による脊髄麻痺もみられます。
痛みを伴う症状が現れた際には、がんが進行しているケースが多いため、いかに早期発見出来るかが重要になってきます。
上記の症状が一つでもみられる場合、そしてそれが長期間続いている場合には、早期に医療機関を受診するようにしてください。
特に尿をする際に、痛みが発生する場合、また血尿が見られる場合はすぐに受診しましょう。
前立腺がん情報記事監修者
Article supervisor
当該前立腺がんに関するページは院長 小林賢次監修にて作成しております。
氏名:小林賢次
経歴
- 1991年3月 京都大学法学部卒業
- 2000年3月 富山医科薬科大学医学部医学科卒業
- 2000年5月 同愛記念病院 臨床検査科
- 2002年5月 NTT東日本関東病院病理診断部
- 2011年6月 新八重洲クリニック 院長
- 2019年1月~ 東京がんクリニック開院
出身大学
- 京都大学法学部卒業
- 富山医科薬科大学医学部医学科卒業
当院へのご相談の流れ
Consultation process for our clinic
ご予約
当院は完全予約制を採用しておりますので、前立腺がんに関するお悩みで初めてご来院される場合は、お電話またはメールにて予約をお願いします。
メールでのご予約の際は、予約状況を確認した後、担当者よりお返事をさせて頂きます。
※出来るだけ早めのご予約を頂けますとスムーズに日程調整が可能です。
ご来院
当日は、予約時間の5分前を目安にご来院をお願い致します。
当院の場所が分からない場合には、近くまでご来院頂いた際に、お電話頂ければ当院スタッフがご案内させて頂きます。
また、診療情報提供書や血液検査データなどをお持ちの場合には、持参して頂くようお願いします。
受付
初診時には、問診票を記入して頂きます。
前立腺がんに関するお悩みや治療状況など、些細なことでもご記入ください。
例
・排尿困難
・頻尿
・腰痛
・残尿感など
インフォームドコンセント
問診票を参考にしながら、医師と医療スタッフが患者様のお悩みや現在の状況をお伺いします。
正確な判断を行うためにも、質問には分かる範囲で正しい情報をお答え頂くようお願いします。
また、当院で行っている前立腺がんの治療法についても、メリット・デメリットを含めて説明致しますので、ご不明な点などありましたらご質問ください。
当クリニックの説明だけでは不安を感じる患者様は、他の病院・クリニックに意見を求める「セカンドオピニオン」もご検討頂けます。
同意書の記入
当院での治療内容や効果、リスクなどをご理解して頂いた上で、当院で前立腺がん治療を受診される場合には、同意書にご記入をして頂きます。
また、治療に必要な費用についても事前に明瞭にご説明させて頂きます。
今後の前立腺がん治療計画について
当院では、一人ひとりの症状に合わせて、患者様に最も効果の期待できる治療法・日程にて前立腺がん治療を進めていきます。
そのため、患者様の生活スタイルに沿ったご来院スケジュールなどをご提案しますので、無理なく前立腺がん治療を継続して頂くことが可能です。
前立腺がん治療のお問合せはこちら
【当該記事監修者】院長 小林賢次
がん治療をご検討されている、患者様またその近親者の方々へがん情報を掲載しております。ご参考頂けますと幸いです。