1. 大腸がんのステージⅣとは
大腸がんは、大腸(結腸・直腸)の粘膜上皮に発生する悪性腫瘍で、進行に伴い腸壁を越えてリンパ節や遠隔臓器に広がります。
がんの進行度は、TNM分類に基づくステージ(病期)で評価され、ステージⅣは最も進行した状態となります。
この段階では、肝臓、肺、骨、腹膜などの遠隔臓器に転移が認められ、治療による根治が困難な状況となります。
日本では年間約15万人が大腸がんと診断され、ステージⅣは診断時の約20~25%を占めます(日本癌学会2023)。
治療は、腫瘍縮小、症状緩和、生活の質(QOL)向上を主な目的として、個別化されたアプローチが求められます。
2. 骨転移の特徴と症状
骨転移とは、大腸がんのステージⅣで、がん細胞が骨にまで到達し増殖する状態となります。
大腸がんの遠隔転移は肝臓(60~70%)、肺(20~30%)が主ですが、骨転移は5~10%で発生し、進行例で増加します。
骨転移は、骨構造の破壊や神経圧迫を引き起こし、QOLを著しく損ないます。
以下に、骨転移の特徴と症状を解説します。
症状 | 説明 |
---|---|
骨の痛み | 持続的または夜間増悪する痛み、特に脊椎、骨盤、肋骨に多い。疼痛は初発症状で現れやすい。 |
病的骨折 | 骨が脆弱化し、軽微な外力で骨折する。 |
運動機能低下 | 骨損傷や筋力低下による歩行困難、関節可動域制限あり。 |
高カルシウム血症 | 骨吸収亢進による血中カルシウム上昇。倦怠感、悪心、意識障害、腎障害を誘発することがある。 |
神経症状 | 脊髄圧迫による手足のしびれ、感覚異常、麻痺、膀胱直腸障害。緊急治療が必要。 |
これらの症状はQOLを低下させるため、早期診断と適切な管理が不可欠といえます。
3. 骨転移の診断方法
骨転移の診断は、症状評価と画像診断、血液検査を組み合わせて行い、転移の位置、範囲、活動性を正確に評価します。
以下に、主要な診断方法を表でまとめます。
診断方法 | 説明 |
---|---|
骨シンチグラフィ | 放射性トレーサーを用いた核医学検査。骨転移の早期発見に高感度である。 |
CT・MRI | CTは骨破壊の詳細、MRIは軟部組織や脊髄圧迫を評価する。転移部位の構造的変化を視覚化。 |
PET-CT | がん細胞の代謝活性を評価する。骨転移に加え、肝臓・肺転移の同時検索に有用である。 |
血液検査 | 腫瘍マーカー(CEA、CA19-9)、骨代謝マーカー(ALP、骨型ALP)、カルシウム値を測定する。 |
上記の検査を組み合わせ、骨転移の有無、進行度、併存転移(肝臓、肺)を評価し、治療計画を立案します。
4. 骨転移に対する標準的な治療法
大腸がんの骨転移は根治が困難となりますが、疼痛緩和、骨折予防、QOL維持、生存期間延長を目的とした治療が行われます。
以下に、標準的な治療法を解説します。
治療方法 | 説明 |
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薬物療法 |
化学療法:FOLFOX(5-FU+レボホリナート+オキサリプラチン)、FOLFIRI(5-FU+レボホリナート+イリノテカン)が標準。骨転移の直接効果は限定的である。 分子標的薬:ベバシズマブ(VEGF阻害薬)は腫瘍血管新生を抑制、無増悪生存期間を3~4ヶ月延長する。セツキシマブ(EGFR阻害薬)はKRAS/NRAS野生型に適応する。 骨吸収抑制薬:ゾレドロン酸(ビスホスホネート)やデノスマブ(RANKL阻害薬)は骨破壊を抑制、骨関連事象(骨折、疼痛)を低減する。高カルシウム血症の予防にも有効。 |
放射線療法 | 外部照射(IMRT)や定位放射線(SBRT)で局所骨転移の疼痛を70~80%緩和し、骨折リスクを低減する。 |
整形外科的治療 | 骨折リスクが高い場合や脊髄圧迫症候群に、骨セメント充填術(椎体形成術)、内固定術、脊椎固定術を実施することがある。 |
緩和ケア | オピオイド(モルヒネ、オキシコドン)やNSAIDsで疼痛管理、理学療法で運動機能維持、心理ケアによるQOL向上。 |
光免疫療法の選択肢
光免疫療法は、がん治療の選択肢としてなり得る治療法の一つです。
大腸がんの骨転移に対して標準治療が難しい場合、補助的な治療として考えられます。
項目 | 説明 |
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光免疫療法の仕組み | 光免疫療法は、がん細胞に選択的に集積する光感受性物質(薬剤)を投与し、その後、特定の波長の光を照射することで、がん細胞を破壊する治療法です。正常な細胞への影響が少なく、比較的副作用が少ないことが特徴とされています。 |
骨転移への応用 | 骨転移がある場合、直接光を照射することが難しいケースもありますが、近赤外光を用いた治療や、腫瘍部位への適応を工夫することで、治療の可能性が広がります。 |
メリット |
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注意点 |
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医療機関への相談 | 光免疫療法に関して詳しく知りたい方は、医療機関に相談することをおすすめします。 |
まとめ
大腸がんステージⅣの骨転移は、5~10%で発生し、骨痛、病的骨折、高カルシウム血症、神経症状を引き起こし、QOLを大きく損ないます。
診断は、骨シンチグラフィ、CT/MRI、PET-CT、血液検査(CEA、ALP)で確定し、早期発見が重要となります。
標準治療は化学療法、分子標的薬、骨吸収抑制薬、放射線療法、整形外科的治療、緩和ケアなどを組み合わせ、疼痛緩和と生存期間の延長を目指します。
また、光免疫療法は、標準治療が難しい場合に選択肢の一つとなる可能性がありますが、適用は慎重に検討する必要があります。
標準治療と併用可能な治療法のため、現在、大腸がんステージⅣの治療中の方でも一度ご相談ください。
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【当該記事監修者】院長 小林賢次
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