大腸がん(ステージⅣ)腹膜播種とは
大腸がんステージⅣは、がんが原発部位(大腸)を超えて遠隔転移を起こした状態を指します。
この中でも「腹膜播種(ふくまくはしゅ)」とは、がん細胞が腹膜(腹腔を覆う薄い膜)に広がり、腹腔内で複数の小さな腫瘍結節を形成する進行性の病態です。
腹膜は胃、腸、肝臓などの消化器官を包んでおり、播種したがん細胞は腹膜表面に付着し、増殖を続けます。
この状態は腹水の貯留や臓器機能の障害を引き起こすことが多く、治療が困難なケースが少なくありません。
この記事では、大腸がん(ステージⅣ)の腹膜播種の特徴や光免疫療法を含めた治療の選択肢を解説します。
腹膜播種の特徴と症状
腹膜播種は、がん細胞が腹腔内に散在するため、外科的手術による完全切除が難しいことが特徴です。
そのため、標準治療の選択肢が限られ、症状の管理が重要となります。
主な症状とそのメカニズムは以下になります。
症状 | 説明 |
---|---|
腹部の膨満感 | 腹膜播種により腹水(がん性腹水)が貯留しやすくなり、腹部が膨らんだ感覚を引き起こします。腹水はがん細胞が腹膜を刺激し、滲出液が過剰に分泌されることで発生します。 |
腹痛や消化不良 | がん結節が腸管や腹膜を圧迫し、消化機能が障害されることで、食欲不振、吐き気、腹部不快感が生じます。腸の蠕動運動が妨げられることも原因の一つです。 |
腸閉塞(イレウス) | がんが腸管を物理的に閉塞したり、癒着を引き起こしたりすることで便通が悪化します。完全閉塞の場合は嘔吐や激しい腹痛を伴い、緊急手術が必要になることもあります。 |
体重減少・倦怠感 | がんの進行により栄養吸収が阻害され、エネルギー消費が増加することで、体重が減少します。また、全身性の炎症反応により強い疲労感や倦怠感が現れます。 |
治療の選択肢
腹膜播種を伴う大腸がん治療は、患者の全身状態、がんの広がり、合併症の有無に応じて個別に決定されます。
以下に主な治療法を示します。
治療法 | 説明 |
---|---|
化学療法(抗がん剤) | 標準治療として、フルオロウラシル(5-FU)を基盤に、オキサリプラチン(FOLFOX)やイリノテカン(FOLFIRI)を組み合わせたレジメンが使用されます。さらに、分子標的薬(ベバシズマブ:血管新生阻害、セツキシマブ:EGFR阻害など)が加わることで生存期間の延長が期待されます。 |
腹腔内化学療法 | 腹膜播種に特化した治療で、カテーテルを用いて腹腔内に抗がん剤(例:パクリタキセル、シスプラチン)を直接投与します。全身投与に比べ局所的高濃度を維持でき、副作用(骨髄抑制など)を軽減しつつ効果を高めることが可能です。 |
HIPEC(温熱腹腔内化学療法) | 手術で可能な限り腫瘍を摘出した後、加温した抗がん剤(マイトマイシンCなど)を腹腔内に循環させる治療法です。温熱効果ががん細胞の薬剤感受性を高め、残存腫瘍の縮小を目指します。しかし、適応は限定的で、全身状態が良好な場合に検討されます。 |
緩和ケア | 根治が困難な場合、腹水穿刺による除去、鎮痛剤(オピオイドなど)の投与、栄養サポートを通じて症状を緩和し、生活の質(QOL)を維持します。心理的サポートも重要な要素です。 |
光免疫療法 | 光免疫療法とは、光感受性薬剤をがん細胞に選択的に集積させ、レーザー光を照射することでがん細胞を破壊する治療法です。標準治療が難しい患者様にとって、有効な選択肢の一つとなる可能性があります。 |
大腸がんの腹膜播種に対する光免疫療法
大腸がん(ステージⅣ)の腹膜播種に対して、光免疫療法が新たな治療選択肢として検討される場合があります。
この治療は、がん細胞に特異的に結合する抗体と光感受性薬剤を静脈投与し、腹腔内にレーザー光を照射することで、がん細胞を選択的に破壊します。
活性酸素種の生成により腫瘍細胞が壊死し、正常組織へのダメージを最小限に抑えられる点が特徴です。
光免疫療法は、特に腹膜播種のように広範囲に散在するがんに対して、従来の局所療法(手術や放射線)では困難な症例に適応可能性があります。
また、抗がん剤や腹腔内化学療法との併用により、相乗効果も期待されます。
そして、QOL(生活の質)を維持しながら治療を継続できる点も利点となります。
以下より当院の光免疫療法に関してご確認頂けます。
まとめ
大腸がん(ステージⅣ)の腹膜播種は、外科的切除が困難で標準治療の効果が限られる場合が多く、進行性の病態となります。
しかし、全身化学療法、腹腔内化学療法、HIPEC、光免疫療法などの多様な治療法を患者の状態に合わせて選択することで、生存期間の延長やQOLの維持が可能です。
治療方針を決定する際は、がん専門医や緩和ケアチームと十分に相談し、最新のエビデンスに基づいた個別化治療を進めることが重要です。
現在、大腸がん治療中の患者様でも、当院の光免疫療法の適用可能な場合がありますので、お気軽にご相談ください。
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【当該記事監修者】院長 小林賢次
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