皮膚がんステージⅣにおける代替医療について
日本では、皮膚がんは比較的まれな疾患ですが、年間約25,000人が新たに皮膚がんと診断され、約1,900人が亡くなっています。
皮膚がんステージⅣ(末期がん)は、がんが皮膚を超えて肺、肝臓、骨、脳、リンパ節などの遠隔部位に転移した進行性の状態を指します。
この段階では、皮膚の潰瘍や腫瘤、痛み、かゆみ、リンパ節腫脹、体重減少、倦怠感、転移による臓器症状などが顕著で、治療はがんの進行抑制、症状の緩和、QOL(生活の質)の向上を目指します。
皮膚がんの主な原因は、紫外線(UV)曝露、遺伝的要因、免疫抑制状態、化学物質への曝露、慢性皮膚炎症などです。
当ページでは、皮膚がんステージⅣの特徴、標準治療の概要、そして代替医療、特に光免疫療法を中心とした治療選択肢について詳しく解説します。
代替医療とは
代替医療とは、標準的な西洋医学(手術、放射線療法、化学療法、分子標的薬、免疫療法など)に代わる、またはそれらを補完する治療法を指します。
代替医療には、科学的エビデンスが確立されていないものから、臨床試験で効果が検証されつつあるものまで幅広く含まれます。
目的は、がんの進行抑制、症状の緩和、QOLの向上、免疫力の強化などです。
特にステージⅣの皮膚がんでは、標準治療の副作用が強い場合や効果が限定的な場合に、代替医療が注目されます。
代替医療の例には、光免疫療法、漢方、サプリメント、鍼灸、食事療法、心理療法などがありますが、今回は特に光免疫療法に焦点を当てて解説します。
ステージⅣ皮膚がんの特徴と原因
ステージⅣの皮膚がんは、TNM分類でM1(遠隔転移)に分類され、肺、肝臓、骨、脳、遠隔リンパ節への転移が一般的です。
皮膚がんは主に以下のサブタイプに分類されます:
基底細胞がん(約70%、進行は遅いが転移は稀)、扁平上皮がん(約20%、転移リスク高い)、悪性黒色腫(約5%、非常に悪性度が高い)、メルケル細胞がん(稀、進行性)。
各サブタイプで転移パターンや治療応答性が異なり、以下のような症状が現れます。
●局所症状:皮膚の潰瘍、腫瘤、結節、出血、かゆみ、疼痛、悪臭、リンパ節腫脹による圧迫感や痛み。
●全身症状:体重減少、倦怠感、発熱、貧血、栄養不良。
●転移関連症状:肺転移による呼吸困難や咳、骨転移による骨痛や病的骨折、肝転移による黄疸や腹部膨満、脳転移による頭痛や神経症状、リンパ節転移による浮腫。
発症の原因としては以下が挙げられます。
●紫外線(UV)曝露:長期間の紫外線A(UVA)およびB(UVB)曝露が主なリスク因子。特に基底細胞がん、扁平上皮がん、悪性黒色腫に関連。日焼けサロンや日光浴もリスクを高める。
●遺伝的要因:悪性黒色腫ではBRAF遺伝子変異やCDKN2A変異が関与。家族性黒色腫や遺伝性がん症候群(例:色素性乾皮症)もリスク因子。
●免疫抑制状態:臓器移植後やHIV感染、免疫抑制薬の使用により、扁平上皮がんやメルケル細胞がんのリスクが増加。
●化学物質・放射線:ヒ素、ピッチ、タール、放射線被曝が基底細胞がんや扁平上皮がんのリスクを高める。
●慢性皮膚炎症:慢性の傷、潰瘍(例:マルジョリン潰瘍)、瘢痕が扁平上皮がんの原因となる。
●その他の要因:高齢、白色人種、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染、定期検診の未受診。
標準治療の概要
ステージⅣの皮膚がんに対する標準治療は、がんの進行抑制、症状緩和、QOL維持を目的とします。
以下に主な治療法の概要を説明します。
●手術:原発巣やリンパ節転移の切除が試みられるが、ステージⅣでは遠隔転移により根治手術が困難な場合が多い。腫瘍減量手術や症状緩和のための手術が行われることも。
●化学療法:ダカルバジンやテモゾロミド(悪性黒色腫)、シスプラチン+5-FU(扁平上皮がん)が使用されるが、効果は限定的。
●分子標的薬:悪性黒色腫ではBRAF阻害剤(ベムラフェニブ、ダブラフェニブ)やMEK阻害剤(トラメチニブ)が有効。メルケル細胞がんにはアベルマブが使用される場合も。
●免疫チェックポイント阻害剤:ペンブロリズマブやニボリズマブ(PD-1阻害剤)、イピリムマブ(CTLA-4阻害剤)が悪性黒色腫やメルケル細胞がんに有効。扁平上皮がんではセツキシマブ(EGFR阻害剤)が選択肢。
●放射線療法:強度変調放射線療法(IMRT)や定位放射線療法(SBRT)が骨転移や脳転移の症状緩和、局所制御に使用。化学放射線療法(CCRT)も選択肢。
●緩和ケア:皮膚潰瘍の疼痛、感染、悪臭、精神的ストレスの管理に重点。創傷ケア、鎮痛剤、心理的ケアでQOLを向上。
代替医療:光免疫療法
標準治療は効果的である一方、副作用が強く、ステージⅣの皮膚がんでは治療効果が限定的な場合があります。
そこで、代替医療として注目されるのが光免疫療法です。
この治療法は、科学的エビデンスが蓄積されつつあり、特にステージⅣの皮膚がんにおける新たな治療の可能性として期待されています。
光免疫療法とは
光免疫療法は、光感受性物質(薬剤)を投与し、特定の波長のレーザー光をがん細胞に照射することで、がん細胞を選択的に破壊する治療法です。
この治療法は、正常細胞へのダメージを最小限に抑えつつ、がん細胞を効果的に攻撃する点で優れており、ステージⅣの皮膚がんにおける局所再発、皮膚・軟部組織転移、リンパ節転移などに適用可能な場合があります。
特に、皮膚がんは体表面に近いため、レーザー光の照射が容易な場合が多いです。
光免疫療法の仕組み
1.標的薬剤の投与:光感受性を持つ薬剤を点滴で投与。EPR効果(増強された透過性・滞留効果)により、薬剤ががん細胞に集中的に集積。
2.光照射:近赤外線レーザーを体表面に照射。薬剤が集積したがん細胞で活性酸素が発生し、がん細胞を破壊。
3.免疫活性化:破壊されたがん細胞が免疫系を刺激し、全身的な抗腫瘍免疫応答を誘発する可能性。
光免疫療法の利点
●高い選択性:正常な皮膚組織や周辺構造への影響が少なく、副作用が軽減される。
●適応範囲:局所再発、皮膚・軟部組織転移、リンパ節転移などに有効な可能性。
●QOLの向上:化学療法や放射線療法に比べ、皮膚の外観や機能への影響が少なく、高齢者や体力の低下した患者様にも適応可能。
●免疫効果:遠隔転移に対する追加的な抗腫瘍効果が期待される。
●標準治療との併用:免疫チェックポイント阻害剤(ペンブロリズマブなど)や分子標的薬と組み合わせることで、相乗効果が期待できる。
当院の光免疫療法に関する詳細な情報は、以下よりご確認いただけます。
その他の代替医療
光免疫療法以外にも、ステージⅣ皮膚がんに対して以下の代替医療が検討される場合があります。
これらは科学的エビデンスの程度が異なり、標準治療を補完する形で使用されることが多いです。
●漢方療法:十全大補湯や半夏瀉心湯など、倦怠感の軽減や免疫力向上を目的に使用。科学的エビデンスは限定的だが、QOL向上に寄与する場合がある。
●サプリメント・食事療法:ビタミンC、ビタミンD、クルクミン、セレン、オメガ3脂肪酸などが抗炎症や免疫強化を目的に研究されている。ただし、皮膚潰瘍や感染がある場合、摂取方法に注意が必要。
●鍼灸:皮膚の疼痛、化学療法による副作用(悪心・嘔吐)の緩和に役立つ可能性。ストレス軽減やQOL向上に寄与するが、がん進行抑制の効果は未確立。
●心理療法・マインドフルネス:がん患者様の精神的ストレスや不安を軽減し、QOLを向上させる。皮膚の外観変化や潰瘍による心理的負担を軽減するカウンセリングが有用。
●臨床試験における代替医療:がんワクチン、CAR-T細胞療法、オンコリティックウイルス療法などが臨床試験で検討中。これらは免疫療法の枠組みに近く、将来的に標準治療に組み込まれる可能性がある。
まとめ
皮膚がんステージⅣは、遠隔転移を伴う進行性の疾患であり、紫外線曝露、遺伝的要因、免疫抑制状態、慢性皮膚炎症などが発症に関与します。
標準治療(手術、化学療法、分子標的薬、免疫療法、放射線療法、緩和ケア)は有効ですが、副作用や効果の限界から代替医療も注目されています。
特に光免疫療法は、選択性の高さと副作用の少なさから、ステージⅣの皮膚がん患者のQOLを重視する有望な選択肢といえます。
この治療法は、局所再発、皮膚・軟部組織転移、リンパ節転移に対して有効であり、標準治療との併用で相乗効果が期待できる可能性があります。
代替医療の選択には、科学的根拠やリスクの評価が重要です。
当院の光免疫療法の適用可否については、お気軽にご相談ください。

【当該記事監修者】院長 小林賢次
がん治療をご検討されている、患者様またその近親者の方々へがん情報を掲載しております。ご参考頂けますと幸いです。