前立腺がんステージⅣとは
前立腺がんステージⅣは、がんが前立腺を超えて周辺組織や遠隔臓器に広がった進行段階で、TNM分類に基づきT4(近隣臓器侵襲)、N1(リンパ節転移)、またはM1(遠隔転移)として定義されます。
特に骨転移は前立腺がんの特徴であり、約80~90%のステージⅣ患者で確認され、骨盤、脊椎、肋骨、大腿骨に好発します。
がん細胞は、血流やリンパ流を介して骨に浸潤し、骨吸収や異常骨形成を引き起こします。
前立腺がんは、男性ホルモン(アンドロゲン)に依存して増殖する傾向があり、PSA(前立腺特異抗原)値の上昇が診断や進行の指標となります。
ステージⅣでは、根治が困難であり、治療は進行の抑制、症状緩和、QOL(生活の質)向上を主な目的とすることが多いです。
診断には骨シンチグラフィ、PET-CT、MRI、生検が用いられ、分子特性も評価されます。
この記事では、前立腺がんの骨転移の特徴や余命、治療の選択肢などを解説します。
骨転移の症状と影響
骨転移はステージⅣ前立腺がんの主要な合併症で、患者のQOLに深刻な影響を及ぼします。
主な症状とそのメカニズムは以下の通りです。
症状 | 説明 |
---|---|
骨の痛み | 骨転移による炎症や骨膜刺激が、腰椎、骨盤、大腿骨で持続的または夜間増悪する疼痛を誘発します。 70~80%で発生し、オピオイドや放射線で管理します。 |
骨折のリスク | がん細胞が骨吸収を促進し、骨密度が低下します。病的骨折が脊椎などで発生し、歩行困難や寝たきりのリスクを高めます。 |
神経圧迫症状 | 脊椎転移が脊髄や神経根を圧迫すると、背部痛、感覚異常、四肢のしびれ・麻痺、膀胱直腸障害(尿失禁)が発生することがあります。 |
高カルシウム血症 | 骨破壊により血中カルシウム濃度が上昇することがあります。倦怠感、口渇、悪心、便秘、意識障害、心不全を誘発し、重症化すると生命を脅かします。 |
これらの症状は、患者の日常生活(歩行、睡眠、食事)を制限し、精神的負担(不安、抑うつ)を増大させます。
TGC東京がんクリニックでは、症状管理を緩和ケアと統合し、QOL維持を重視します。
ステージⅣ前立腺がんの標準治療
骨転移を伴うステージⅣ前立腺がんの治療は、進行抑制、症状緩和、生存期間延長を目的とし、患者様の全身状態、PSA値、分子特性に基づいて選択されます。
主な治療法は以下の通りです。
治療法 | 説明 |
---|---|
ホルモン療法(アンドロゲン遮断療法:ADT) |
アンドロゲンの産生や作用を抑制し、がんの増殖を抑制します(奏功率80~90%)。 LH-RHアゴニスト(ゴセレリン)、アンタゴニスト(デガレリクス)、抗アンドロゲン薬(ビカルタミド)を使用。 初期PSA低下率90%以上だが、2~3年で去勢抵抗性前立腺がんに進行する患者が50~70%。 副作用:性機能障害、骨量減少、倦怠感。 |
抗がん剤(ドセタキセル、カバジタキセル) |
去勢抵抗性前立腺がんに適用され、生存期間を4~6ヶ月延長します。 副作用:白血球減少(20~30%)、倦怠感、脱毛、末梢神経障害。 |
放射線療法 |
骨転移による疼痛緩和(70~90%有効)や病的骨折予防を目的に外部照射します。 脊髄圧迫や限局性転移に定位放射線を適用。 全身進行抑制は限定的であり、副作用(皮膚炎、骨髄抑制)は軽度。 |
放射性医薬品(ラジウム-223) |
骨転移特異的治療であり、骨に集積しアルファ線でがん細胞を攻撃。 2ヶ月に1回静注します。 副作用:下痢、血小板減少。軟部組織転移には不適応。 |
新規ホルモン療法(アビラテロン、エンザルタミド) |
去勢抵抗性前立腺がんに対して、アンドロゲン合成または受容体結合を抑制します。 生存期間を延長(奏功率50~70%)。 副作用:高血圧、肝機能障害、低カリウム血症。 |
光免疫療法の可能性
光免疫療法は、標準治療が不適応または副作用で継続困難な患者様に、当院で提供される先進的な自由診療です。
骨転移や局所進行前立腺がんに適用可能であり、以下の特徴があります。
特徴 | 説明 |
---|---|
がん細胞を特異的に攻撃 | 光感受性物質(薬剤)をがん細胞に集積させ、特定の波長の光を照射することでがん細胞を破壊 |
副作用が少ない | 正常な細胞への影響が抑えられるため、従来の抗がん剤や放射線治療と比べて負担が少ない |
局所治療の選択肢として有効 | 転移が限局的である場合や、痛みの軽減を目的として適応されることがある |
当院での光免疫療法の適応
当院では、ステージⅣ前立腺がん、特に骨転移で標準治療が困難な患者様に対し、光免疫療法を提供しています。
また、ホルモン療法や放射線療法と併用することで、腫瘍縮小、疼痛軽減、QOL向上を実現します。
治療を希望される方は、専門医による個別相談を受け付けております。
当院の光免疫療法の詳細についてはこちらをご覧ください。
余命予測と影響要因
ステージⅣ前立腺がんの余命は、骨転移の範囲、全身状態、治療反応性により大きく異なります。
平均生存期間は未治療で6~12ヶ月、標準治療で2~5年となります。
骨転移が多い場合や高カルシウム血症、脊髄圧迫を伴う場合は、予後が短縮(1~2年)されます。
当院の光免疫療法は、緩和目的で疼痛や腫瘍負荷を軽減し、QOL向上により間接的に予後改善が期待されます。
緩和ケア(栄養管理、心理支援)と統合することで、患者様と家族の生活を支えます。
よく見られてる記事一覧 |
---|
前立腺がん(ステージ4)の「胸水の特徴と治療の選択肢」 |
前立腺がん(ステージ4)の「腹膜播種の特徴と治療の選択肢」 |
前立腺がん(ステージ4)の「腹水の特徴と治療の選択肢」 |
前立腺がんの原因や症状そして治療法 |

【当該記事監修者】院長 小林賢次
がん治療をご検討されている、患者様またその近親者の方々へがん情報を掲載しております。ご参考頂けますと幸いです。