目次
1. 甲状腺がん(ステージⅣ)の概要
甲状腺がんは甲状腺に発生する悪性腫瘍で、進行度に応じてステージⅠからⅣに分類されます。
ステージⅣとは、がんが甲状腺を超えてリンパ節、肺、肝臓、骨などの遠隔臓器に転移した最も進行した状態です。
特に骨転移は、疼痛、骨折リスクの増加、運動機能の低下などを引き起こし、日常生活や生活の質(QOL)に大きな影響を及ぼします。
2. 骨転移のリスクが高い甲状腺がんの種類
甲状腺がんにはいくつかの種類があり、それぞれ転移の傾向や骨転移のリスクが異なります。
甲状腺がんの種類 | 特徴 | 転移しやすい部位 | 骨転移のリスク |
---|---|---|---|
乳頭がん | 最も一般的で、進行が比較的遅い。予後が良好な場合が多い。 | リンパ節、肺 | 低い |
濾胞がん | 血行性転移が多く、遠隔転移を起こしやすい。 | 骨、肺、肝臓 | 中程度 |
髄様がん | 遺伝性の場合があり、リンパ節や遠隔臓器への転移が多い。 | リンパ節、肝臓、骨 | 中~高 |
未分化がん | 悪性度が非常に高く、急速に進行する。予後不良。 | 骨、肺、肝臓、脳 | 非常に高い |
特に濾胞がんと髄様がんは骨転移のリスクが高く、未分化がんではさらに顕著です。
3. 骨転移の症状と影響
骨転移による症状は、患者様のQOLに大きな影響を与えます。
主な症状は以下の通りです。
症状 | 説明 |
---|---|
骨の痛み | 腰、背中、骨盤などの転移部位に持続的な痛みが生じる。 |
病的骨折 | 骨の強度低下により、軽微な衝撃で骨折するリスクが高まる。 |
脊髄圧迫 | 脊椎への転移が神経を圧迫し、しびれ、麻痺、歩行困難を引き起こす。 |
高カルシウム血症 | 骨吸収の亢進により血中カルシウム濃度が上昇し、倦怠感、吐き気、意識障害などが発生する。 |
これらの症状は進行すると寝たきりや重度の機能障害につながる可能性があり、早期の管理が重要となります。
4. 甲状腺がん(ステージⅣ)骨転移の標準治療
ステージⅣの甲状腺がんでは、病勢の抑制と症状の緩和を目的とした治療が行われます。
骨転移がある場合、以下のような治療が選択されます。
治療法 | 説明 |
---|---|
放射性ヨウ素(RAI)治療 | 乳頭がんや濾胞がんでヨウ素を取り込むがん細胞に有効。髄様がんや未分化がんには効果が期待できない。 |
外部照射放射線治療 | 骨転移による疼痛緩和や骨折リスク軽減を目的に局所的に照射される。 |
分子標的治療 | レンバチニブやソラフェニブなどの薬剤が進行がんの治療に使用される。 |
骨修飾薬 | ゾレドロン酸やデノスマブを用いて骨吸収を抑制し、骨折や高カルシウム血症のリスクを軽減する。 |
疼痛管理 | オピオイド(モルヒネ、フェンタニルなど)や非ステロイド性抗炎症薬を用いて骨転移による痛みを管理する。 |
これらの治療は、がんの種類や患者様の全身状態に応じて組み合わせて行われます。
5. 光免疫療法について
光免疫療法は、標準治療が困難な場合や補助的な治療として検討される可能性がある新しい治療法です。
項目 | 説明 |
---|---|
光免疫療法の概要 | 特定の光感受性薬剤を静脈投与し、がん細胞に集積した後、近赤外線レーザーを照射することでがん細胞を破壊する治療法。 |
正常組織への影響が少ない | 光が照射された部位でのみ作用するため、副作用が抑えられる可能性がある。 |
繰り返しの治療が可能 | 従来の放射線治療と異なり、何度でも治療を行える。 |
免疫系の活性化 | がん細胞の破壊により免疫反応が活性化され、転移部位への効果が期待される場合がある。 |
適応について | 甲状腺がん(ステーⅣ)の骨転移に対して適応があるかどうかは症例ごとに異なるため、専門の医師と相談することが重要。 |
6. 緩和ケアと生活の質の向上
骨転移を伴う甲状腺がんでは、がん治療と並行して緩和ケアが重要です。
以下はQOL向上のための主なアプローチです。
項目 | 内容 |
---|---|
疼痛管理 |
|
骨の健康維持 |
|
食事と栄養管理 |
|
7. まとめ
甲状腺がん(ステージⅣ)で骨転移がある場合、放射性ヨウ素治療、分子標的治療、骨修飾薬、疼痛管理などの標準治療が中心となります。
光免疫療法は新たな治療の選択肢として可能性を秘めていますが、適応は症例ごとに慎重に判断する必要があります。
治療方針を決定する際は、専門医と十分に相談し、最新のエビデンスに基づいた情報をもとに選択することが重要です。
当院の光免疫療法は、標準治療と併用可能なため、甲状腺がん治療中の方でもお気軽にご相談ください。
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【当該記事監修者】院長 小林賢次
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