末期肺がんの定義と進行の概要
末期の肺がんとは、一般的にステージⅣの非小細胞肺がん(NSCLC)または小細胞肺がん(SCLC)を指し、がんが肺を超えて遠隔臓器(脳、肝臓、骨、副腎など)やリンパ節に転移した状態となります。
ステージⅣは、さらにM1a(対側肺や胸水・心嚢液への播種)、M1b(単発転移)、M1c(多発転移)に細分化されます。
この段階では、治療による根治(完治)が困難な場合が多いため、治療の主な目標は生存期間の延長、症状の緩和、QOL(生活の質)の維持・向上となる傾向にあります。
肺機能の低下や転移臓器の障害により、全身状態(PS)が悪化しやすく、患者様の体調管理が複雑になります。
また、非小細胞肺がんステージⅣの5年生存率は約5~10%、小細胞肺がんは約1~2%と予後が非常に厳しいですが、分子標的薬や免疫療法の進歩により、生存期間が延びつつあります。
末期肺がん患者様が経験する主な症状
末期の肺がん(ステージⅣ)では、原発巣や転移巣、治療副作用、全身悪液質により多様な症状が現れます。
以下に、患者様がよく経験する症状を詳細に解説します。
進行する呼吸困難
肺組織の破壊、気道閉塞、胸水・心嚢液の貯留、肺転移による肺容量減少が呼吸困難を引き起こします。
患者様は「息が吸えない」・「胸が重い」と訴え、安静時でも呼吸苦を感じる場合があります。
酸素飽和度が90%未満に低下すると、在宅酸素療法や非侵襲的陽圧換気の導入が検討されます。
呼吸困難は睡眠障害、不安増悪、日常活動の制限を招いてしまい、結果的にQOLを大きく低下させます。
緩和ケアでは、モルヒネ(低用量)やベンゾジアゼピンで症状を軽減し、呼吸リハビリテーションも有効となります。
持続的な疼痛
腫瘍が胸膜、肋骨、神経に浸潤、または骨転移(脊椎、肋骨)が発生すると、胸部・背部・肩の持続的または間欠的疼痛が生じます。
痛みは「締め付けられる」・「刺すような」と表現され、咳や深呼吸で悪化すします。
疼痛管理では、非オピオイド、弱オピオイド、強オピオイドを段階的に使用します。
骨転移には、ビスホスホネートやデノスマブが骨痛軽減と骨折予防に有効であり、神経障害性疼痛にはプレガバリンやデュロキセチンが併用されます。
適切な疼痛管理は睡眠改善と活動性向上に寄与します。
極度の倦怠感
がん性悪液質、貧血、低栄養、化学療法・免疫療法の副作用(倦怠感、筋肉量減少)が慢性的な疲労感を引き起こします。
倦怠感・疲労感によって、階段昇降や家事などの軽い活動も困難となります。
また、倦怠感は食欲低下や抑うつを悪化させ、悪循環を形成してしまいます。
適度な運動、栄養摂取、メチルフェニデートによる管理が必要となります。
心理的サポートも疲労感軽減に有効です。
栄養状態の悪化と体重減少
食欲不振、消化吸収障害(膵酵素不足、腸閉塞)が栄養不良と体重減少を招きます。
悪液質は筋肉量減少を加速し、免疫力低下、創傷治癒遅延、治療耐性低下を引き起こします。
栄養管理では、少量頻回の食事、経腸栄養(経鼻チューブ)、静脈栄養を状況に応じて導入します。
精神的な影響
末期肺がんの診断は、患者様と家族に深刻な精神的負担を与えます。
不安障害、うつ症状、孤独感が多くの患者様で現れます。
心理的ケアには、臨床心理士などによるカウンセリング、認知行動療法、マインドフルネスが有効となります。
また、抗うつ薬や抗不安薬は症状に応じて使用が検討されます。
末期肺がんの余命の展望
末期肺がん(ステージⅣ)の余命は、がんのサブタイプ(NSCLC、SCLC)、遺伝子変異、転移の範囲、治療応答性、全身状態(PS)、併存疾患などに依存します。
以下は余命の目安と影響因子となります。
●非小細胞肺がんステージⅣ:
・平均生存期間:未治療で4~6ヶ月、化学療法で8~12ヶ月、分子標的薬で24~48ヶ月、免疫療法で12~24ヶ月。
・5年生存率:全体で約5~10%。EGFR/ALK変異陽性で20~30%、PD-L1高発現(TPS≥50%)で15~20%。
●小細胞肺がんステージⅣ(広範期):
・平均生存期間:未治療で2~4ヶ月、化学療法で9~12ヶ月、免疫療法で12~15ヶ月。
・5年生存率:約1~2%。長期生存はまれ。
●影響因子:
・遺伝子変異:EGFR、ALK、ROS1変異は分子標的薬で予後良好。KRAS(30%)やTP53変異は予後不良。
・全身状態:PS 0~1は治療耐性が高く、平均生存期間が長い。PS 3~4は緩和ケア中心で平均生存期間は1~3ヶ月。
・転移部位:脳転移(20~40%)は神経症状や予後悪化を招く。単発転移は放射線療法で予後改善。
光免疫療法の概要
光免疫療法は、薬剤をがん細胞へ選択的に集積しさせ、活性酸素を利用して細胞を破壊する治療方法です。
様々ながん種に対応でき、患者様の状態に応じて末期がんにも対応できる可能性があります。
詳細は、以下よりご確認いただけます。
まとめ
末期の肺がん(ステージⅣ)は、遠隔転移により予後が厳しい疾患ですが、分子標的薬、免疫療法などの進歩によって生存期間が延びつつあります。
呼吸困難、疼痛、倦怠感、栄養不良、精神的負担はQOLを大きく損ない、緩和ケアの早期導入が重要となります。
当院の光免疫療法は、豊富な実績を活かし、標準治療が適用できない場合や、副作用軽減を求める患者様に新たな希望を提供します。
患者様は、遺伝子検査、臨床試験の検討、専門医との密な相談を通じて、個別化された治療計画を構築することが重要となります。
現在、末期の肺がんの治療方法にお悩みの方や、標準治療を受けられている方でもお気軽にご相談ください。
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【当該記事監修者】院長 小林賢次
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