乳がん(ステージⅣ)の特徴
乳がんステージⅣは、がんが乳房や所属リンパ節を超えて遠隔臓器に転移した状態を指し、治療による根治が困難な場合が多い進行期となります。
転移の主な部位には、骨(約70%)、肺、肝臓、脳、腹膜が含まれ、皮膚や卵巣に転移することもあります。
腹膜播種は、特に乳がんの浸潤性小葉がんで報告されており、腹腔内にがん細胞が拡散し、複雑な症状を引き起こします。
ステージⅣの治療は、がんの進行抑制、症状緩和、生活の質(QOL)向上を主な目的とし、がんの特性(ホルモン受容体、HER2発現、トリプルネガティブなど)に基づく個別化が求められます。
この記事では、乳がん(ステージⅣ)の腹膜播種の特徴や光免疫療法を含めた治療法を解説します。
腹膜播種とは
腹膜播種とは、がん細胞が腹膜(腹腔を覆う薄い膜)に拡散し、点状または結節状に増殖する病態です。
乳がんでは比較的稀ですが、進行すると腹水貯留や腸管圧迫を招き、QOLを著しく低下させます。
腹膜播種によって、以下のような症状が現れることがあります。
症状 | 詳細 |
---|---|
腹水の貯留 | がん細胞が腹膜を刺激し、滲出液が過剰に分泌されることで腹水が溜まる。腹部膨満感、圧迫感、呼吸困難を引き起こします。 |
消化器症状 | 腫瘍結節や腹水が胃腸を圧迫し、食欲不振、悪心、嘔吐、便秘、下痢、腸閉塞を引き起こすことがあります。栄養吸収障害も進行します。 |
腹痛 | 腹膜の炎症、癒着、腫瘍の神経圧迫により、持続的または間欠的な腹痛が発生します。進行すると強い痛みになります。 |
体重減少・倦怠感 | がんによる代謝亢進、栄養不良、全身性炎症によって体重減少や極度の疲労感が引き起こされます。 |
腹膜播種の診断
腹膜播種の診断は、画像診断と細胞学的検査が組み合わせて行われます。
主な検査方法は以下の通りです。
検査名 | 説明 |
---|---|
CT・MRI検査 | 高解像度画像で腹膜結節、腹水、腸管異常、転移の範囲を評価。造影剤を用いて腫瘍の血流や境界を詳細に確認します。 |
超音波検査 | 腹水の量、腹膜結節、臓器圧迫を評価します。腹水採取や生検も可能。 |
PET-CT | がん細胞の代謝活性を可視化します。微小転移や腹膜播種の全体像を把握し、他の転移との鑑別に有用。 |
腹水細胞診 | 腹水を穿刺で採取し、顕微鏡でがん細胞の有無を判定します。 |
腹腔鏡検査 | 直接腹腔内を観察し、播種結節の分布や性状を確認します。生検を併用して組織診断を確定する場合もあります。 |
乳がん(ステージⅣ)腹膜播種の治療
腹膜播種を伴う乳がんは、広範囲の転移により標準治療が困難な場合が多いため、全身状態やがんの特性に応じた多角的アプローチが求められます。
主な治療法は以下の通りです。
治療法 | 説明 |
---|---|
化学療法(抗がん剤治療) | 乳がんの進行を抑えるために、ホルモン療法や分子標的薬、化学療法が選択されます。特に、ホルモン受容体陽性の場合はホルモン療法、HER2陽性の場合はHER2を標的とした薬剤が用いられます。 |
腹水の管理 |
腹水が大量に溜まると、呼吸困難や食欲不振を引き起こすため、以下の対策が取られます。 ・腹水穿刺(せんし):針で腹水を抜去し、膨満感や呼吸困難を軽減。 ・腹水濾過濃縮再静注法(CART):腹水を濾過し、栄養成分を濃縮して再静注。栄養状態の改善と穿刺頻度低減に寄与します。 ・利尿剤の使用:体液排出を促進し、腹水再貯留を抑制します。 ・腹腔内化学療法:腹腔内に投与し、局所的高濃度でがん細胞を攻撃します。 |
放射線療法 | 骨転移や脳転移など、特定の転移巣による疼痛や神経症状の緩和を目的に使用します。腹膜播種への効果は限定的ですが、併存する局所病変に適用される場合もあります。 |
緩和ケア | 進行がんの場合、がんの進行を完全に止めることが難しいため、症状の緩和を目的とした治療が重視されます。痛みや食欲不振に対する対策、精神的なサポートも重要になります。 |
臨床試験・先進医療の検討 | 標準治療が効果不十分な場合、新規薬剤(PARP阻害剤、ADCなど)や免疫療法の臨床試験に参加可能です。 |
光免疫療法 | がん細胞に特異的な抗体と光感受性薬剤を投与し、近赤外光を照射して選択的に壊死させる先進治療です。正常細胞へのダメージが少なく、QOLを維持しながら腫瘍縮小や症状緩和を目指します。 |
光免疫療法について
光免疫療法は、乳がんステージⅣの腹膜播種に対する新たな治療法で、標準治療の限界を補う可能性があります。
この治療法は、がん細胞に特異的に結合する抗体と光感受性薬剤を投与し、レーザー光を照射してがん細胞を選択的に壊死させる方法です。
以下に光免疫療法の特徴を詳述します。
特徴 | 説明 |
---|---|
正常細胞への影響が少ない | 標的のがん細胞だけを攻撃するため、副作用が少ないとされています。化学療法に比べ副作用(骨髄抑制、脱毛)が軽度の場合が多いです。 |
繰り返し治療が可能 | 放射線療法のような累積毒性がないため、病状に応じて複数回施行可能です。当院では、患者様の状態に合わせた柔軟なスケジュールを策定します。 |
痛みが少ない | 非侵襲的で、治療中の疼痛がほとんどありません。腹膜播種では光ファイバーを用いた腹腔内照射で、身体的負担を軽減します。 |
免疫活性化 | 遠隔転移や微小結節への全身性免疫応答を誘発し、再発抑制に寄与します。 |
腹膜播種への適応 | 腹腔内の散在性結節を標的とし、腹水減少、消化器症状の緩和、QOL向上に効果が期待されます。 |
TGC東京がんクリニックでは、乳がんの特性や腹膜播種の分布に応じた個別化治療を提供致します。
化学療法や緩和ケアとの併用によって相乗効果も期待できるため、患者様の希望を尊重した治療計画を立案します。
当院の光免疫療法の詳細は以下をご確認ください。
まとめ
乳がん(ステージⅣ)の腹膜播種は、広範囲の転移により標準治療が困難な病態で、化学療法、腹水管理、緩和ケアを組み合わせた個別化治療が求められます。
当院の光免疫療法は、低侵襲で選択性の高い治療法として、腫瘍縮小、症状緩和、QOL向上に新たな可能性を与えます。
現在、乳がんの標準治療を受けられている方でも光免疫療法を適用可能な場合がありますので、一度ご相談ください。
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【当該記事監修者】院長 小林賢次
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