1. 肝がん(ステージ4)の特徴
肝がん(肝細胞がん)は、肝臓に発生する悪性腫瘍の一種であり、進行度によってステージ分類されます。
ステージ4は最も進行した状態を指し、遠隔転移(肺や骨など他の臓器への転移)が認められる場合や、腫瘍が広範囲に広がり肝機能が著しく低下している状態を指します。
この段階では、以下のような症状が現れることが多いです。
症状 | 説明 |
---|---|
腹水の貯留 | 門脈圧亢進や低アルブミン血症により、腹腔内に水分が溜まり、お腹の膨満感や圧迫感を引き起こす。 |
黄疸(皮膚や白目が黄色くなる) | 胆汁の流れが悪くなり、血中のビリルビン濃度が上昇することで皮膚や眼球が黄色く変色する。 |
全身の倦怠感や食欲不振 | 肝機能の低下によりエネルギー代謝が悪化し、疲労感や食欲減退が生じる。 |
体重減少 | がんの進行に伴う栄養吸収障害や代謝異常により、筋肉や脂肪の減少が進む。 |
意識障害(肝性脳症の可能性) | 肝機能の低下により、アンモニアなどの有害物質が脳に蓄積し、意識混濁や異常行動を引き起こす。 |
ステージ4の肝がんでは、肝機能の低下が進み、標準的な治療である外科的切除やラジオ波焼灼療法(RFA)が適応外となることが多くなります。また、肝動脈化学塞栓療法(TACE)や分子標的薬も、肝機能が著しく低下している場合には実施が困難です。
2. 腹水が発生する理由
肝がんが進行すると、腹水が貯留することがよくあります。
これは、門脈圧亢進症や低アルブミン血症によって、血液の流れや水分バランスが崩れるために発生します。
原因 | 説明 |
---|---|
門脈圧亢進症 | 肝硬変やがんの進行により、肝臓の門脈(消化管からの血液が通る静脈)の圧力が上昇し、血液がうっ滞します。その結果、血液中の水分が腹腔内に漏れ出し、腹水が貯留します。 |
低アルブミン血症 | 肝機能が低下すると、血液中のアルブミン(血液中の水分を保持する働きを持つタンパク質)の生成が減少します。アルブミンが減ると、血管内の水分が血管外に漏れやすくなり、腹水として貯留します。 |
また、腹水には細菌感染(腹膜炎)のリスクもあり、定期的な管理が必要です。
3. 腹水に対する治療
腹水が多量に貯留し、症状が強くなる場合には、以下のような治療が検討されます。
治療法 | 説明 |
---|---|
利尿剤の使用 | フロセミドやスピロノラクトンなどの利尿剤を用いることで、体内の余分な水分を排出し、腹水の量を減らすことを目指します。ただし、肝機能が極端に低下している場合には、腎機能への影響を考慮する必要があります。 |
腹水穿刺(パラセンテシス) | 腹水を直接抜く処置です。短期間で症状を緩和できますが、頻繁に行うと低アルブミン血症が進行し、体調悪化を招くこともあります。そのため、アルブミン製剤の補充が併用されることがあります。 |
腹水濾過濃縮再静注法(CART) | 採取した腹水を特殊な装置で濾過し、栄養成分を濃縮したうえで再び体内に戻す方法です。栄養を維持しながら腹水を減らすことが可能ですが、医療機関によって対応が異なります。 |
静脈シャント手術(TIPS) | 門脈と静脈の間に人工的なシャントを作成し、門脈圧を下げる方法ですが、肝機能が極端に低下している患者様には適応が限られます。 |
腹水の管理は、患者様の体調や病態に応じて慎重に行う必要があります。
4. 肝がん(ステージ4)への治療選択肢
標準治療(手術・TACE・薬物療法)が適用できないケースでは、次のような治療が考えられます。
治療法 | 説明 |
---|---|
分子標的薬(レンバチニブ、ソラフェニブ) | がん細胞の増殖や血管新生を抑制する薬剤。進行肝がんに対して使用され、一定の延命効果が期待できるが、副作用として高血圧や手足のしびれが生じることがある。 |
免疫チェックポイント阻害剤(アテゾリズマブ+ベバシズマブ) | 免疫細胞の働きを活性化し、がん細胞を攻撃する治療法。特に進行肝がんに対して有効性が示されており、QOL(生活の質)の維持にも寄与する可能性がある。 |
放射線治療(定位放射線治療や粒子線治療) | がん細胞を高精度で狙い撃ちし、局所的に制御する治療法。特に転移が限局している場合に適用されることがある。 |
支持療法(疼痛管理・栄養管理) | 進行がんの症状を緩和し、患者様の生活の質を向上させるための治療。痛みを抑えるための鎮痛薬や、栄養補助を行いながら全身状態を維持する。 |
しかし、肝機能が低下している場合には、副作用のリスクが高まり、治療の選択肢が限られることがあります。
5. 光免疫療法について
光免疫療法は、がん細胞に選択的に集積する光感受性薬剤を投与し、特定の波長の光を照射することで、がん細胞を破壊する治療法です。
特徴 | 説明 |
---|---|
標準治療が難しい進行がんにも適用が検討される | 手術や抗がん剤治療が適応できない進行がんに対して、治療選択肢となり得る可能性がある。 |
正常細胞へのダメージが少なく、副作用が抑えられる可能性がある | 特定の光感受性薬剤をがん細胞に集積させ、選択的に光を照射することで、周囲の正常組織への影響を抑えながら治療が可能。 |
がん細胞を選択的に狙う治療であり、QOL(生活の質)を維持しやすい | 標的となるがん細胞のみに作用し、副作用が少ないため、治療後の生活の質を保ちやすいと考えられる。 |
ステージ4の肝がんで腹水がある方の中には、標準治療が難しい場合もあります。
しかし、対処法や治療の選択肢は存在します。
当院では、患者様一人ひとりの状態に合わせた治療をご提案致します。光免疫療法を含め、適した治療法について医師と相談しませんか?まずはご相談ください。
以下より当院の光免疫療法に関してご確認頂けます。
6. まとめ
ポイント | 説明 |
---|---|
肝がん(ステージ4)の特徴 | 遠隔転移や肝機能の低下が進行し、標準治療(手術やTACEなど)が適応できないことが多い。 |
腹水の原因 | 門脈圧亢進や低アルブミン血症によって生じ、適切な管理が必要。 |
腹水の治療 | 利尿剤、腹水穿刺(パラセンテシス)、CART、TIPSなどの選択肢があるが、慎重な判断が求められる。 |
進行がんの治療選択肢 | 分子標的薬(レンバチニブ、ソラフェニブ)、免疫療法(アテゾリズマブ+ベバシズマブ)に加え、支持療法(疼痛管理・栄養管理)を組み合わせたアプローチが重要。 |
光免疫療法の可能性 | がん細胞を選択的に狙う治療法であり、適応を検討できる可能性があるが、患者様の状態に応じた判断が必要。 |
病状や治療の詳細については、医師に相談しながら適切な選択を行うことが重要です。

【当該記事監修者】院長 小林賢次
がん治療をご検討されている、患者様またその近親者の方々へがん情報を掲載しております。ご参考頂けますと幸いです。